Art Maniacs

上賀茂神社
と社家

賀茂別雷神社
(かもわけいかづちじんじゃ)

京都市北区上賀茂

05/5/27

上賀茂神社へは、深泥池行き市バス4番が京都駅から出ていて「上賀茂神社前」というバス停で止まる。

正式には賀茂別雷神社(かもわけいかづちじんじゃ)と言い、下鴨にある下鴨神社と対になる兄弟神社(?)だ。祭神は別雷神(わけいかづちのかみ)。

上賀茂神社はとても古い神社で、平安京が出来る以前からあった。
この地に住んでいた賀茂氏の氏神としてまつられたのが最初だという。この辺一帯の上賀茂という名前ももちろん、賀茂氏から来ているし、鴨川(賀茂川)の名前もそうだろう。
最初に社殿が造営されたのは678年だという。京都でも最も古い神社のひとつだ。

ちなみに、下鴨神社と上賀茂神社で「かも」の字が違うのは、鴨川が、出町柳の分岐点から、賀茂川と高野川に分かれ、下流の鴨川と字を違えて書くところから、神社の名前も分けて書くようになったらしい。


ぐえっ… ひどい写真

大田神社から上賀茂神社へ行くまでの間に、社家町を通る。

社家(しゃけ)というのは、上賀茂神社に仕える神官たちが住んだ住居(屋敷)あとで、現在も神官が住む家として続いているようだ。

実は、この社家の町並みを見るのも、今回の目的だった。上賀茂といえば、必ずこの社家の町並みが紹介される。憧れの風景だったのだ。

京都の主なほかの観光地と同じように、重要伝統的建造物群保存地区に選定されている。

前を流れるのは明神川、そこに家ごとに小さな橋をかけ、それらが独特の景観を形作っている。
その素晴らしい景観が、写真では少しも写っていない!何という写真の下手さだ!

が、写真はうまく撮れなかったが、この景観を見ながら歩くのは気持ちがよいものだ。

各社家は、明神川の水を家の庭の池に引き入れ、そして川に戻す。自然と共存しているのだ。社家は、30軒ほどあるという。

美観地区ではあるけれど、観光地というほど世俗化していない。だが、田舎ではない。

京都中心部からすると田舎と言えるかもしれないが、町並みとその景観は洗練され、非常に知的な雰囲気がある。

自然を壊して物を造形するのではなく、自然を生かしながら、自然とともに、自然の中に人間の構築物を配し、それらを合わせて全体の景観を美しいものに作り上げている。
とても高度で知的な生産という気がする。

見事、と言うほかない。

中心部の、何の計画性もなくビルを乱立させている風景に何の美も知性も感じられないのに比べ、むかしの人の建築の、何という高貴さよ。

この上賀茂一帯は、京都ではない。どこかほかの土地だと思う。上賀茂、という土地だというほかはない。


一ノ鳥居

というわけで、やっと上賀茂神社にやって来た。広い。とにかく広い。

こんなに広い神社は鶴岡八幡宮以来ではないだろうか(よく分からないが昔行った時、広かったという記憶がある)。

一の鳥居をくぐると、ずーとはるか向こうにニの鳥居が見え、そこまでは白い砂利道を中央に両側に芝生、そして古そうな桧皮葺の社殿が点在している。

散歩している人もおり、ベンチに座ってのんびりと休んでいる人もいる。しかし、それでも私は、一の鳥居をくぐった途端、何かただならぬ空気を感じた。

うっ。ここは、違う。雰囲気が特別だ。

私は前にも言ったとおり、もともと神社が苦手で、伏見稲荷と八坂神社くらいしかお参りに行ったことがない。かしわ手を打つのがきらいなのだ。
最近になってこそ、歴史的な謂れに興味が出て来て覗いてみたりするものの、神社にあまりいいイメージを持っていない。

京都の中心部にあるせせこましい神社のイメージがあるからか、神社というものは、おおむね、学業成就とか、家内安全とか、商売繁盛とか、きわめて日常的な願いを叶えてもらうシステムだと思っていた。

けれども、この上賀茂神社の鳥居をくぐった途端、ああ、ここになら本当に神がいるかもしれない、と思ってしまった。

そこは、まさに特別な領域だった。他の神社と全然違う。神聖で、おごそかな雰囲気が漂っている。オーラがある。

我々の下界とはまったく異なった、もうひとつの別の世界。俗世界とかけ離れた、神様が住んでいる世界だ。


ぐええっ… 最低の写真だ…。でも、楢の小川の写真はこれだけ

神社には、御物忌川、御手洗川が流れ、賀茂川に注ぐ。二つの川が合流する下流をなら(楢)の小川と呼ぶようだ。

風そよぐ ならの小川のゆふぐれは みそぎぞ夏のしるしなりける(藤原家隆)

川は、みそぎを行う神聖な場なのだろう。

楢の小川は、とてもしょぼい川だ。ええっ?こんな川を歌に詠むか?なんて思った。

だけど、違うのだ。その川は静かで澄んでいる。せせらぎは穢れを浄化してくれる。しょぼかろうが、小さかろうが、関係ないのだ。(と思う)


幾何学的でアバンギャルドな立砂 4時間かけて作るとかいう

有名な立砂である。陰陽道に関係があるらしいが、ますます神聖な雰囲気が宿っている。

いきなりこれだけ見たら、何これ?で終わりかもしれないが、この神の領域の神聖な雰囲気の中で見ると、ちょっとたじろく。

いにしえのみやこびとも、ここ、上賀茂の神様なら疫病や、災いを鎮め、五穀豊穣を必ず約束してくれるはず。そう思ったに違いない。
そのようにして、宮中から上下賀茂社へ勅使を送り、賀茂祭(葵祭)が始まったのだろう。

 

神社の中には古い桧皮葺の社殿が立ち並び、34棟が重要文化財に指定されているそうだ。本殿は国宝。でも、恐れ多くて写していない(フィルムが足りないだけ)。

どれもこれも桧皮が破れかけていて、気の毒ながらも、風格がある。

神社の建物は式年遷宮が基本。だから、平安時代の古い建物そのものはないのだが、江戸時代初期頃のものが残っているようだ。

 

社殿から楢の小川を臨んだところ、だがフラッシュが焚かれてしまった。ここで何らかの儀式が執り行われるのではないか。きっとそうだ。そうに違いない。

色が美しい。普通なら神社の赤はけばけばしいと感じるのだが、この、自然の緑の中にある赤は、神々しい。いい具合に古びているのがいいのかもしれない。赤の分量が多すぎないからいいのかもしれない。
社殿の赤、木々の緑、砂の白、自然と構築物の色が一体となって、神の世界を創り出している。

これは、桧皮葺の屋根を修理しているところです。別にどうでもいい写真なんですけど。ただ、労働している若者を撮りたかったという…。すみません。

そんなわけで、私は上賀茂神社をそんなに期待していたわけではなかった。というか、期待も何も、ただ見て来ようと思っていただけだったのだ。
それが、こんなにいいところだとは思わなかった。自分でも、こんなにウケるとは夢にも思っていなかった。もう一度、いや、何度でも行きたいなあ。

ところで私も禊が出来たのかな。お賽銭を払わなかったから無理か。


参考 世界遺産を遊ぶ京都本(エルマガジン) 景観を歩く京都ガイド(岩波書店)
    ポケットガイド京都(るるぶ)

大田神社のかきつばたへ

下鴨神社へ

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