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Alfons Mucha 2

ミュシャ 油彩作品


マドンナ・オブ・リリー 百合の聖母 1905
Madonna of the Lilies


おそらくミュシャの油彩作品の中で最も有名なもの

聖母の純潔の象徴である百合の花に囲まれた聖母

左側には民族衣装を着けた少女が物憂げにこちらを見ている

百合が画面全体を覆うように配され、油彩でも装飾豊かだが、
赤毛の少女の表情が気になる

若い聖母は彼女を見守るように布を広げ、浮遊して聖性を現わしている


ヤロスラヴァ Jaroslava

ヤロスラヴァはミュシャの娘だという。

スラブの民族衣装を身につけ、一輪のカーネーションを持ちながら、
きっとした視線を向ける意志の強い女性を描いている。

デッサン力の確かさと力強いリアリズムが感じられる

ミュシャにはこのような、こちら側をきっと見据えた油彩の女性の絵が
まだほかにも多くある。


ポートレイト・オブ・ジリ
Portrait of Jiri

ミュシャは「スラブ叙事詩」の資金集めのためにアメリカに渡り、
富裕層の肖像を描いて援助を求めようとしたらしいが、
その時の作品かもしれない。

上流の上品な少年の肖像。
小公子のような衣服。

美少年に描かれている。
少し赤く染まった頬が美しい。

手に絵筆を持っているので、絵を習っていたのかもしれない。




クリスマス・イン・アメリカ 1919
Christmas in America


アメリカへ渡った時の作品だろう。

油彩でもミュシャらしい女性像で、頭に装飾のついた布を被り、
ミュシャらしい装飾性が出ている。

やはり女性はカメラ目線のようにこちらを見つめ続けている

     
ミュシャの自画像

ここでも民族衣装をつけている
彼のこだわりだったのだろう

ミュシャがイラストやデザインの世界からアートの(油彩の)世界に
踏み込んだのはなぜだったのだろう。

デッサン力はやはり群を抜いている。

誰でもイラストレーターはイラストだけでは満足出来ず、
油彩を試してみたいと思うようになるのだろうか。

そしてミュシャは祖国へ帰り、スラブの歴史大作と向き合うことになる…

 

スラブ叙事詩より(カンバスにテンペラ)


原故郷のスラブ民族

 


ロシア農奴解放の日

 


スラブ民族の神格化

 

非常に大きいそうなので、実物を見ないとその迫力が分からないだろう。

小さい画像で見る限り、やはり構図などは装飾的で、色彩も意外に豊かで、
ミュシャのデザイン性が際立って見えるが、
抑圧された民族の嘆きと誇りとが壮大な画面に表現されているのだろう。

人物のデッサン力、描写、そして画面構成はやはり卓越している。

だが、確かなデッサンによる徹底した写実主義で、それは当世の時代の流れとは逆行したもの
だっただろう。

この絵はひっそりとあまり人の目にも触れず現在まで来たのではないか。

しかし時代によって絵の評価も変わる。

これから再評価がされる流れになってゆくのかもしれない。

忘れられた画家、若冲がそうだったように。

 

*****

 

常に大国に侵略されづけ、支配され続けて来た国の者の宿命として、だからこそ祖国を思い、
祖国に愛を注ぐのは当然のことだっただろう。

スラブ民族は宗教的にも様々な変遷があったようだ。

カトリック、宗教改革、プロテスタント、正教…、
そこに住むスラブ民によって属するキリスト教も違ったのだろう。

「スラブ叙事詩」には、スラブ民がキリスト教の宗派のどこに属していいのかの
戸惑いも描かれているような気がする。

ロシアにもスラブ民がおり、そこは正教だった。南スラブ人も正教信仰だったらしい。

 

が、根本的には、熱い信仰によって、スラブ民族としての団結と独立と自由を勝ち取ることが
スラブ民の痛切な願いだったのだろう。

ミュシャはスラブ民族を代表するつもりでこのスラブ民族の迫害の事実と自由への願いを
壮大な画布という形で具体化したかったのかもしれない。

そして最後はキリストがスラブ民を祝福するのだ。

 

しかし、ヒトラーの台頭によって、チェコスロバキアは再び大国の支配を受けることになる…

 

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