Art Maniacs

桜・疎水分流

左京区下鴨

06/4/12

画像が多い上、多少重いです。すみません。重い画像にはサイズが書いてあります。


44KB

疎水分流とか、第2疎水とか呼ばれている疎水べりに咲いている桜並木を歩く。

疎水分流は、鴨川の上流である高野川に架かる、高野橋のちょっと上(カミ)にある松ヶ崎浄水場から、加茂川までを(多分)流れている。哲学の道を流れている白川疎水から続く、疎水のなれの果て(?)である。

疎水や高瀬川など運河べりには必ず桜が植わっている、という法則通り、この疎水分流の両側にも桜が延々と植わっているのである。

以下、延々とこの疎水べりを歩きながら撮った、桜写真。


40KB

このあたりは左京区下鴨と言い、北大路通と北山通の中間点である。

疎水は東西方向にややカーブを描いて流れており、距離は分からないが、1キロ強ではなかろうか。

桜の名所の多い京都でも、哲学の道に負けない屈指の桜並木である。だが、観光客はまったくいない。

この疎水分流の桜並木こそ、京都庶民の桜見物の最後の砦、密かに浸透している穴場中の穴場である。

観光客が誰一人訪れることのない、奇跡の桜の穴場である。しかもおそらく、今後いくら有名になろうと、観光客が訪れることは、未来永劫ないであろう。

 

このような、美しい桜並木が延々と続くのに、観光客は完全スルー。それはなぜか。

それは、この周辺に観光施設、つまり喫茶店、お休み所、休憩所、レストラン、カフェその他がいっさいないからである。
並木が2キロ弱続くにも関わらず、その間に何もないのである。

なぜならここは単なる住宅街だからである。

疎水の両側には閑静な住宅が並んでいる。しかも下鴨であるから、金持ちの家々である。
門構えが、我々ダウンタウンの庶民の家とは違う。豪華で、広い。見るからに金持ち、という家ばかりが建ち並んでいる。


44KB

このあたりに喫茶店などを開いたらさぞや繁盛するだろうと思うのだが、ここに住んでいる人たちは皆お金持ちなので、そんなせこいことをして儲けなくても全然不都合はないのである。

むしろ、ここに住む金持ちたちは、ここに変な娯楽施設が建って、妙に開けることを怖れているであろう。
どちらかと言うと、ここは誰にも知られず、ひっそりとしておいて欲しい、と望む人々なのだ。
この豪華な桜並木を周辺の金持ちたちだけでひっそりと味わい、愛でていたい。そう思う人ばかりなのだ。


45KB

鴨川のように土手はないから、この桜の下にシートを開いて宴会をすることも出来ない。
桜の下でひと休み、と腰を下ろすことも不可能だ。ベンチなどあるはずもない。

桜が咲いているだけで、実にそっけない。

疎水の両側はいちおう道路で、車も通れる。だが狭い。中型車がぎりぎり通れるくらいの道だ。車が来ると歩行者は轢かれないように車をよけながら歩く。


52KB

疎水のあちこちに架かっている橋には、わき見運転は危ないので徐行するように、という注意書きがされている。

そう、ここは並木がとても長いので、徒歩だと、お休み所がないため非常に疲れる。
だから、車で来る人が多いのだ。

その車が、超のろのろ運転である。運転手も桜を見る。車での桜見である。だから注意書きがなされているのだ。


41KB

浄水場の近くに駐車場があるようなないような感じである。だから車で来る人も、この道を通ったら即座に帰る。
京都人は、このように、いつの間にか疎水分流での花見の仕方、お作法を心得ているのである。

だからこそ、ここは京都人オンリーの花見場、京都人にしか見ることを許されない桜並木なのだ。

下鴨本通から歩き始め、くたびれ果てた頃に高野川に到着する。

高野川に出てもまったく愛想がない。お休み所などないから、息も絶え絶えになりながら川の河川敷に腰を下ろす。向こうに見えるのは比叡山?

向いの川べりにも桜がどどっと咲いている。
が、実は高野川より、鴨川が二手に分かれてすぐの賀茂川の土手の方が素晴らしい桜並木が続いている。
葵橋から眺める賀茂川の桜はいっとう良い。

そのようなことを語りつつ、お尻が冷えて来た頃に立ち上がる。

もういちど、来た道を反対側の道路から引き返す。まあ、2倍の桜が楽しめるというわけだ。ひいひい。

高野橋東詰から市バスに乗るという手もあるがどうよ。

ここの桜の木は大変太い。かなり年数が経っているのだろう。と言っても疎水が通ってからだから、明治時代くらいか。古い木は枝があまりにも伸びすぎたりして、切られてしまい、切り株になっているものもあった。


42KB

私が最初にここに来た頃には、もっと途切れがなく桜があったように思う。久しぶりに来てみたら、かなり放置されているような印象があった。手入れされていないのかもしれない。

はじめに訪れた時には、あまりにも見事な桜のトンネルに開いた口が塞がらず、大変な感動をした。
あたり一面が桜にけむって、空気が薄いピンク色をしていた。

もしかして、ここの桜は朽ちてゆくのだろうか。いっそう儚い思いの募る、春の夕暮れであった。

高瀬川の桜(2005)

間違いを直した…加茂川→賀茂川06/4/17

  inserted by FC2 system