Temple

大覚寺

京都市右京区嵯峨大沢町

06/6/21


旧嵯峨御所大覚寺門跡

 

大覚寺と聞いて私が知っていることといえば、でかい池があって秋にはそこで観月の夕べがあること、時代劇の撮影で良く使われる、ということくらいだ。

大覚寺についての知識はそのくらいであるが、寺宝展をやっているというので出かけて行った。

 

大覚寺は嵯峨野にあり、清涼寺と同じバス(市バスなら28番、京都バスなら71番)に乗り、終点まで行くと、そこがバス停大覚寺だ。バス料金は清涼寺と同じく250円。

途中で風光明媚な観光地、嵐山を通る。だから、嵐山観光の帰りに寄っても良い。

嵯峨野であるから、近くに化野念仏寺とか、常寂光寺、祇王寺、落柿舎など女性好みの場所が沢山ある。


庭。見えるのは唐門

大覚寺に着くと、旧嵯峨御所と書いてある。これでイカリがむくむくともたげて来る。

ちっ、ここも旧御所かよ。どこもかしこももと御所だの、門跡寺院だの、いい御身分だぜ。
どいつもこいつも、引退したら別荘を建てて悠々自適かい。
どうせなら誰かひとりが作ったのに住むことにすればええやんけ。天皇ごとに新しく作って、どやねん。ひとつでええやんけ、ひとつで。

いきなリやさぐれてしまった。

とにかく旧御所が多い。多すぎる。そんなにあちこち旧御所を作ってどうするのだと言いたくなるのだ。しかもそれは風光明媚な環境のいい場所にこぞって建っている。


大沢の池。
右端にほんの少し見えるのは、バルコニーの下にある船着場のようなもので、池にせり出している

受け付けでお金(500円)を払って宸殿などの間取りを見ながら本堂へ行くと、すぐに大沢の池が見える。さすがにきれいだ。大覚寺は、この大沢の池の眺めがウリである。

春には桜、秋には紅葉が咲き乱れ、さぞ美しい光景だろう。

本堂から舞台がせり出していて、池を眺めるように出来ている。

もちろん、かつてテンノーが、月見のためにそのような装置を作ったのだ。つくづくブルジョワである。
そのテンノーとは、嵯峨天皇だという。うむ、そのままの名前だ。嵯峨天皇の名前から、この一帯が嵯峨野と名づけられたのかもしれない。いつの時代か知らないのだが。

その後、鎌倉時代に亀山法皇や後宇多天皇が院政を行なったために嵯峨御所と呼ばれたという。
代々法親王が住職となった門跡寺院でもあるとかや。


このように大きなバルコニーが張り出している 観月台と言うそうだ。

庭もブルジョワ臭がぷんぷんする。仁和寺と同じく、枯山水庭園プラス池泉回遊式庭園で1ヶ所で全部楽しめる贅沢な作り。

ここにおれば桜も紅葉もお月様も楽しめて、もうどこにも出向いて行く必要なし。欲しいもの何でもあり。のブルジョワ空間である。

こういう旧御所というやつは、お寺と名前がついてはいるが、本当は別荘だ。ちっ、いい気なもんだぜ。
あっ、いけない。またやさぐれた。

 

観月台のあるお堂は五大堂と言い、本尊の五大明王がまつられている。

大覚寺は真言宗のお寺であったのだ。そして心経写経の根本道場で、いけばな嵯峨御流の総司所でもあると(意味分からず)。

そこで、五大堂の五大明王だが、5人ともお厨子に入っておられ、小さい。しかしこれはいずれもお前立ちで、収蔵庫に本物が置かれている。

お堂とお堂(宸殿のほか、御影堂、五大堂、御霊殿などいろいろある)の間は、すべて回廊で繋がっており、受付玄関で靴を脱いでから、まわってゆく。

私はこのお寺の回廊がとても好きで、これだけはブルジョワであろうとプロレタリアートであろうと許せるのだ。

回廊には当然ながら屋根がついていて、廊下の柱と、欄干とのコントラストに美を感じる。時にはうぐいす張りでキシキシと音がする。日の光の影になったり日向になったりするのも、趣きがある。
何より回廊を巡ることによって、ゆるゆると変化してゆく情景と時間が何とも言えない。回廊を歩いている時間が好きなのだ。


愛らしいうさぎの意匠 失礼して写真を撮った

嵯峨天皇の皇女、正子内親王が大覚寺に改め…と、パンフレットに書かれているが、その方はまだ子供だったらしく、ここに住んだ彼女を喜ばせるために、大覚寺の装飾には可愛らしいうさぎがあしらわれているのだという。

この障子の下に描かれたうさぎはまだ新しく、本物(?)は収蔵庫に収められている。
と思ったが、いくつかが収蔵庫にあり、いくつかが本堂に飾られているようだ。

リアリズムのうさぎだが、可愛らしさも表現されていて大人気、幼い内親王が目線に描かれたうさぎを見て飽きなかっただろうことが想像出来る。

 

というわけで、回廊を通って収蔵庫へなだれ込む。

収蔵庫は例によって春と秋に特別公開される。入るのに300円。本堂とは別に金を取られるのだ。イカリが…(以下略)

大覚寺は、先に言ったように真言宗で、五大明王が本尊だそうだ。

収蔵庫の本尊も5人ともお厨子入りで、全長70センチくらい、あまり大きくはない(平安時代、明円作)。木造で真っ黒け、小さいので恐さはあまりない。
というか、明王が厨子に入って大事にされているというのが何となくアンバランスでおかしい。
(厨子の中の大威徳の牛は首を少し左側にかしげているのが特徴)

この重文の厨子入り明王のほかに、東寺の明王とほぼ同じくらいのサイズの巨大な明王もおられる(鎌倉時代)。
ここでは大威徳明王だけが飾られており、他の4人は京都国立博物館に寄託、と書いてあった。でも博物館で見たことがないのだが…

ひとり寂しくおられる大威徳明王は大きく、迫力があるが、相変わらず乗りものの牛さんがのんびりした顔をしている。そのギャップがおかしい。

 

日本の五大明王は、すべて東寺のものが基本だと思う。

大覚寺のものも東寺のを基本として写されたものだろう。東寺のような迫力とか恐さはなく、手や足や、体の造形がすべてマイルドなのだ。まんまるっこいというか(顔は恐いのだが)。
東寺の明王像が、塗料がハゲハゲなのでそれで迫力があるように見えるのかもしれないが。

収蔵庫には、仏像のほかにも先ほどのうさぎさんを描いた障子、狩野派の襖絵などが沢山展示されていた。

保存状態が良く、傷がない。障子など、私が子供の頃だったら必ずいたずらして、うさぎの横に落書きを書いていたと思うが、天皇のお子様は行儀が良かったらしい。

 

ちなみに、大沢の池にも入れるが、ここで志納金がいくばくか要る(200円か300円ほど)。イカリが(略)…のため入らなかった。

また、時代劇の撮影が行なわれるのは、近くに映画の撮影所があるからで、日本の時代劇の背景は全部同じだ、と言われているらしいが、映画会社が近場でロケを済ませるかららしい。

清涼寺


大覚寺のホームページ大覚寺の名宝

参考 大覚寺パンフレット 学研ムック「不動明王」

交通 京都駅から 市バス 京都バス 大覚寺前下車すぐ

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