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Gustav Klimt

グスタフ・クリムト 1862-1918

 


「接吻」 The Kiss 1907 国立オーストリア美術館

 

クリムトは、どのように見ても、その著名度にも関わらず、やはりB級の画家だということに変わりはないであろう。

どの作品を照らし合わせて考えてみても、そこに貫かれている表現はイラストであり、

装飾であり、それ以上のものではないと思う。 

絵画としては弟子筋にあたるシーレの方が、人間の本質に迫る表現を獲得していたと思う。

でも、イラストだからこそ、部屋を飾るのには最適で、私も、我が部屋にジグソーパズルの「海蛇」を飾っているのである。

クリムトは壁画作品も多いが、なるほどと納得できる。デザイン力に秀でていたという事だ。

で、この「接吻」は、トイレに飾っていたりする。クリムト先生ごめんよ。

けれども二人の足元から流れ出るような草むらの描写などのデザイン感覚は冴えわたっている。

 


 

 
ユディットTJudith1  1901 オーストリア美術館       ユディットUJudithU1909 ヴェネツィア近代美術館

額までがゴージャス

世紀末ウィーンに蘇ったユディット

ユディットはルネサンス期からしきりに描かれて来た悪女のテーマ

国を守るためホロフェルネスを誘惑し、その寝首をかいた旧約外典の、昔の絵によく描かれた、官能的な絵のテーマ

左のユディット、わずかに描かれた男の首から女が何をしたかが分かるが、
傲然と下を見下ろし、むしろ悦楽的な、この陶酔している感じがすごい

首を掴む女の指先の表現

そして彼女を飾るふんだんな黄金の装飾

きらびやかな装飾で女を飾る画面にしている。

*

左側のユディットU、細長い画面下に髪を掴まれている男の首がわずかに見えるが、
それも、縦長の狭い装飾で飾られた画面に効果的にレイアウトされ、生首がデザインの一部のようである。

そして乳房をむき出しにして、本能のままに欲望むき出しの中年の黒髪の女、その痙攣的な指先



二つの絵とも、ポスターのようにグラフィックなデザイン感覚。額縁までが作品の一部として黄金色が効果的に使われている。

 


 

   






左 希望THoffnungT1903カナダ国立美術館


妊婦の裸身を描いたことで、大スキャンダルになったようだ。

縦長の背景の装飾的画面、不可思議な人物たちのカリカチュアライズ
された表現に対して、赤毛の美しくリアルな妊婦がこちらをじっと見つめる。

あまりにもリアルな女体の表現、
突き出たお腹の妊婦の陰毛まで描いているが、
クリムトの女性に対する思いが込められているようだ。

妊娠は希望であり、女性は子を産む希望の存在なのだろう。



右 金魚Goldfische 1901-2

女三人がさまざまな肢体で水の中を浮遊する。

泡が黄金の華麗な金粉となって黒い背景の中、彼女たちを彩る

特に一番下の赤い毛を乱れさせた女の、
尻を大きく見せた肢体が目に入る

身体をくねらせた曲線の官能が蠱惑的だ

   



  水蛇TWasserschlangenT1904-07 オーストリア美術館


様式化され、デザイン化された縦長の画面に女二人が抱き合う水蛇

背景の装飾的紋様に同化したように人魚の身体をし、身をくねらせた女二人の官能的な秘密の世界

陶酔的な女の顔が装飾画面に映える

右下にわずかに水蛇が顔を見せ、水の中を泳ぎ、
そして彼女らを取り巻くように鱗を二人に巻き付ける。

だがデカダンなテーマよりもデザイン化された装飾の方がむしろ目を引く

 
水蛇UWater SnakesU 1904-07

横長の画面に描かれた水蛇U。4人の女が顔を見せ、官能的な肢体をくねらせて横たえる

リアルな女の表情とリアルな身体が装飾紋様の中を密やかに泳ぐ

 


アデーレ・ブロッホバウアーの肖像 Adele Bloch-BauerT 1907 個人蔵

(2006年、オークションによって個人蔵になったようだ)

 

目も眩むような背景の金の装飾。その中で女性の顔と手だけをリアルに描き出す

女性の胸部の部分だけに装飾が施され、リアルな表情と憎いばかりの対比

女の衣装は背景の金の中に溶け込みながら、うねるような曲線を描いて、まるで水の流れのよう。

 

やっぱりこれにやられてしまう…

彼女の衣服らしいものに無数の目のような模様。

そしてところどころ日本の金箔が貼られたような模様。憎いばかり。

 


 


ダナエDanae 1907 個人蔵

この絵もジグソーパズルで持っていたりする

クリムトはルネサンス期にさんざん描かれたダナエも、新たなデザイン感覚で世紀末に蘇らせた。

ひどくエロチックな絵だが、真四角のカンバスに狭苦しく閉じ込めて、これもまたデザイン性を際立たせている。

女の足の間に降り注ぐ黄金の雨と、それを受けた彼女の陶酔的な忘我の表情…

恍惚がその指先の描写に表現され…

昔のダナエの約束事をきっちりと使いながら、クリムト風のデザインに。

女が好きでないと描けないだろう、絵だ…

 


 


パラス・アテナPallas Athene 1898 ウィーン市立歴史美術館

 

そして、このギリシャ神話の女神アテナを描いた目も眩むばかりの肖像

真四角の画面に、額縁までが作品のよう。額縁はクリムトの弟の手作りだそうだ。

黄金の兜が煌めき、黄金の鱗を無数に貼り付けた鎧が鮮烈に目に飛び込んでくる。

 

そしてそこだけリアルに描かれた顔と手、

右手に持つのは勝利神ニケの像だそうだが、やけにリアルな裸像になっているのがクリムトらしい

左手に持った右端の槍は金色に輝き、装飾的効果を上げていながら、
どんと地についていて、おそろしいくらいに戦う女の強さを強調している。

威圧するような女性の風格と威厳、揺るがない、まるで人を脅すような激しい視線を見ている者に送る。

これは人を圧する女の力。 

クリムトはまるで女性を信仰していたかのようだ。

 

いつかに続く


参考 新潮美術文庫37 クリムト 昭和52年 

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