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タイタンの戦い 03/1/13
Clash of the Titans 1981
監督 デスモンド・デービス
主演 ハリー・ハムリン
「スターウォーズ」の公開が既に1977年、新技術による特撮映画がSFXと呼ばれるその新世紀の幕がまさに開こうとしていた時だった。
ローテクによるてづくり技術の最後の煌きとなるのがこの「タイタンの戦い」だった。
公開された頃の評価は決して高くなかったと思う。
ごく普通の映画好きには、子供だましのヘタクソな技術の映画と言われたし、特撮好きのファンには時代遅れのテクを使っているという認識しかされなかったものだ。私が最初に見たのは確かテレビ。
ただ私はその特撮クリーチャーの動きがぎこちないとは思ったものの、ギリシャ神話をもとにした壮大な、夢溢れるお話に惹かれるものを感じた。
だからあとでビデオを借りて見なおし、録画したりしたのだと思う。また、ぎくしゃくした動きではあるものの、この世ならぬ生き物たちがカタカタと動くさまは、見ていて飽きなかった。
髪の毛が蛇のメドゥーサ、尻尾のあるニ足歩行の怪物が、尻尾をのたくって暴れるさま…見たことのない怪物が生きて動くのを見るのは、目を見張るような驚きとファンタジーに満ちていた。その時は、クリーチャーの特撮を担当したのがレイ・ハリーハウゼンだということを知る由もない。
オリンポスの神々の長ゼウスがローレンス・オリビエ、ヘラ(?確か…)がマギー・スミス、お姫様(アンドロメダ)にジュディ・バウカー(「ブラザーサン・シスタームーン」のヒロイン)という、イギリスの一流俳優で固めたキャストが豪華で、ギリシャ神話も好きなほうだから、それでわくわくしながら見た。
特撮はハリーハウゼンのダイナメーションだけではなく、洪水場面とか、彫刻がいきなり目をかっと開き、喋り出すシーンなどは実写との合成を使っていた。
そんな場面にもわくわくした。***
私は学生の頃、こむつかしい芸術映画が好きで、分かりもしないくせにゴダール、アントニオーニ、フェリーニ、パゾリーニなどと言っていた。
彼らの作品に実存的ショックをかなり受けたことは確かだ。ヴィスコンティ死後、喪に服したのち復帰してからしばらくして、映画に対する考えが変わったのか、突然「ひたすら面白い映画」に転向していた。
私が喪に服していた間にビデオが普及し始め、ちょうどその頃からビデオレンタルが盛んになり始めたのだ。
それまでは京都には映画館が少なく、見たい映画がとても自由に見られる環境ではなかった。
それがビデオの普及により、見たい映画が見たい時に、自由に見られるようになったのだ。これが天国と言わずして何と言うか。私は早速、見たい映画のリストを作ってみた。
順番にビデオをレンタルしようと思ったのだ。
そうして出来たリストを見て自分で驚いた。「コナン・ザ・グレート」「ビデオドローム」「デッドゾーン」「ウォーゲーム」「鷲は舞い降りた」「ストリート・オブ・ファイヤー」「カプリコン1」「ブルースブラザース」
etc,etc…芸術映画がひとつもない。
私の見たい映画とは、このような、ひたすらストーリー展開で見せて行くような映画ばかりだったのだ。
私って、こんな映画が好きだったのだ。と私は自己を発見してしまった。
「タイタンの戦い」も、そんな自己発見の証となるような映画だ。
レイ・ハリーハウゼンのこれが最後になる特撮は、こよなく美しい。
だがそれだけではない。まず物語が面白かった。
何よりも、星座で有名な勇者ペルセウスが、アンドロメダ姫を救う冒険の話。およそのストーリーを知っていてもどきどきするストーリー展開。
じかに見てはならないメドゥーサをどのように倒すのか。そんな場面が無条件に楽しかった。少なくとも、「スターウォーズ」よりも夢中になった。
逞しい主人公と美しい姫。
夢見る頃を過ぎても、夢を見るのがこんなにも私は好きだったのだ。