さらば美しき人
'Tis Pity, She's a Whore
イタリア映画 1972年
監督 ジュゼッペ・パトロニ・グリッフィ
主演 シャーロット・ランプリング オリバー・トビアス
14/1/3
わが妹よ-
おん身は余りにも美しい
同じ血が 何故に愛を拒む
その白きうなじにバラの唇に
口づけん想いに気も狂う
この作品は私の最も好きな映画のひとつだ。
原作はシェークスピアと同時代のエリザベス朝演劇作家、ジョン・フォードの「あわれ彼女は娼婦」。
この原作は日本でも時々上演され、1960年代にはルキノ・ヴィスコンティ演出、アラン・ドロン、ロミー・シュナイダー共演(当時恋人同志であった)で劇場上演されたことで話題にもなった。
映画はシャーロット・ランプリングが最も美しい時、オリバー・トビアスと言う無名の俳優の共演でイタリアで映画化された。
近親相姦の悲劇を描いた、衝撃の作品である。
時は中世、長い間勉学のため遠くボローニャの大学に行っていたジョバンニが10年ぶりに北イタリア、マントバの故郷に帰って来た。
そこで自分の妹、アナベラが時を経て美しく成長しているのを見て彼は衝撃を受ける。
それが恋に変るのに時間はかからなかった。
ジョバンニは実の妹への想いに苦しみ、のたうち、肉体へ苦行を課すことでその思いを忘れようとした。
それは無駄だった。想いは募るばかりだった。
彼はついにその想いを妹に打ち明ける。
兄が故郷に帰って以来、自分に冷たく口も聞いてくれないことに胸を痛めていたアナベラは、その命を削った告白を聞いて、愕然とする。
そして、何と兄に、自分も苦しんでいたと訴える。
二人の愛はいっきに燃え上がり、剣にその愛を誓い、それからはあとも先もなく、狂おしい勢いで二人はその情熱のまま燃えさかった。
アナベラが妊娠した。
そのころ、近くの貴族ソランゾがアナベラに求婚していた。
アナベラは妊娠を隠し、貴族との結婚を承諾する。そして結婚。
だが、彼女は新婚の夫と寝室を共にすることを頑強に拒む。
それにも限界が来た。
始めて相手を迎えたその時、アナベラは気を失い、妊娠が発覚する。
彼女は頑強に相手の名を言うことを拒んだが、夫ソランゾはその相手が兄のジョバンニその人であることをつきとめてしまった。
ソランゾはその驚愕の事実にアナベラの一族に復讐を近い、ある宴を催した。復讐の宴である。
ジョバンニは屋敷に閉じ込められているアナベラのもとに行き、最後の抱擁を交したあと、アナベラの心臓を誓いの剣で一突きに貫く。
宴の席へ走るジョバンニ。その剣の先には、アナベラの心臓が突き刺されていた。
そして、ソランゾの一族との血も凍る地獄絵がそこに展開されるのだった…
撮影は名手ヴィットリオ・ストラーロ、音楽は有名なあのエンニオ・モリコーネ。
監督ジュゼッペ・パトロニ・グリッフィははじめて聞く名前だったが、ヴィスコンティよりの監督作をいくつか撮っていたと記憶する。
シャーロット・ランプリングが美しく、おそらくその美しさをもっとも良く生かした作品だっただろう。
実の兄が惑うほどのその美貌、それが彼を苦しめ、のた打ち回らせる。
その果てに、その禁断の恋が成就する時の陶酔、悲しく美しく、切なく、呪われた二人のその罪の姿。
そしてその恋が招く結末は余りにもむごく凄惨だ。
前半の陶酔的な映像が、一転して残虐・非道な描写に転じて行くクライマックス。
それでも私は、初めて見た時この映画に恋をしてしまった。
美しい妹と、理想的な美青年の兄。
血の繋がりさえなければこれほど似合いの二人はいなかろう。
だからこそこの二人の恋の成就に痛々しくも陶酔した。
何と残酷な恋。けれども何と美しい恋だろう。
クライマックスは、イタリアらしい残酷描写のつるべ打ちで、気の弱い人には酷かもしれない。
それでも私はストラーロの陶酔的な画面にどっぷり浸り、そこから抜け出られないほどの恋をしたのだ。
映画の魔力を、この作品は持っていた。
感受性の強い私はそこにのめり込んだ。
遠い日の青春の記憶を、私はこの作品にいまも恋したまま、紡ぎ続けている。
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