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パピヨン

Papillon '74米 150mins. フランクリン・J・シャフナー

2018/11/26

 


脚本 ダルトン・トランボ
   ロレンツォ・センプル
音楽 ジェリー・ゴールドスミス
原作 アンリ・シャリエール

スティーブ・マックイーン
ダスティン・ホフマン
ビクター・ジョリー




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脚本がすべてであると思った。

ラストシーンをまだよく覚えている。

海原に揺られながらマックイーンが「まだ生きてるぞ」と叫ぶ。

I'm still alive! その叫びが映画のすべてだった。


言ってみれば冒険物語だ。
ストーリー、筋自体が面白い。

シナリオはこの脱獄物語を、自由を求める人間の、根源的な生ととらえた。

原作者シャリエールは自分は無実だった、と言っている。

しかし映画ではそれはどうでも良いという。



パピヨンが幻覚を見る場面がある。

パピヨンをとらえた者たちがお前は有罪だと言う。

パピヨンはその時悟る。


じっさいに有罪か無罪かはどうでもいい。
有罪だと烙印を押された。

そのことだけが事実なのだと。

このことを悟った時、パピヨンは、刑務所でのうのうと服役することは罪を認めることになってしまうのだと思う。

事実だけが彼の人間を決定するのだ。


だから彼は自分の人間の尊厳をかけて脱獄しようと決心する。

脱獄は単なる脱獄ではない。

パピヨンにとっては自分の尊厳をかけた戦いなのだ。


脱獄という行為が、もはや彼にとってはアイデンティティの証しとなっているのだ。
そこがすごい。

脚本はダルトン・トランボ。

ハリウッドで赤狩りにあい、追放された。

そして「ジョニーは銃を取った」という伝説的な反戦小説を書いた人である。
だから芯が通った。



独房で、ムカデやゴ〇〇リ(おえっ)などを食べてさえ生き延びようとする執念。

その自由への希求のはげしさはいっそ感動的でさえある。

生き延びること。自由であること。

この最も単純な人間の権利を求めてパピヨンは戦う。

単純なことだからこそ、パピヨンの戦いが神聖になってゆく。

「まだ生きてるぞ」。

それは決して戦いをやめなかった人間の人間としての叫びだ。

この叫びに励まされて、私たちも人間である権利をやめずに戦いつづけたいものだ。


娯楽映画にこれだけの芯をとおしたことに驚き感心した。

娯楽映画だからこそ一直線になったのかもしれない。



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脚本家トランボは、変名で「ローマの休日」の共同脚本も書いた。

2015年、「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」として生涯が映画化。


マックイーンのラストシーンは、ゴムボートを浮かせるスタントマンがそのまま映っていると話題になったが、
野暮は言わないことにしよう。


絶海の孤島で知り合うのはダスティン・ホフマン。

彼は孤島から脱出するのをあきらめきって、そこで人生を終えようとする生き方を変えることが出来ない。

あくまで脱出方法を考えるマックイーンとの対比が、鮮烈だった。

 

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