Movie Maniacs

 

針の眼
Eye of the Needle

1981年 英=米

監督 リチャード・マーカンド

出演

ドナルド・サザーランド 

ケイト・ネリガン

10/05

非常に地味で、映画的にはあまり知名度のない作品だけれども、原作はイギリスのスパイ小説、ケン・フォレットの同名の有名なベストセラー。

ノルマンディ上陸作戦を巡り、ドイツ人のスパイが、果してドイツ軍にこの極秘情報を伝えることが出来るか、というとても良く出来たサスペンス小説だ。

当時、「ジャッカルの日」とか「鷲は舞い降りた」といった事実をもとにしたサスペンス小説が流行し、その影響を受けて書かれたと思えるが、いずれも、結末は絶対に成功しないと分かっているのに、最後までぐいぐいと引っ張っていく骨太の手法がこの作品にも良く生かされていて、ケン・フォレットの面目躍如たるものがある。

他の作品と違い、特徴的なのはロマンスが絡められていることで、映画では主役に選ばれたドナルド・サザーランド(私のごひいき。「鷲は舞い降りた」にも出演していた)と、新人ケイト・ネリガンの色っぽい描写にドキドキし、痺れまくったものだ。

 

ニードル(針)と言うコードネームのドイツ人スパイはイギリス在住の滞在型スパイで、変名で何食わぬ顔でイギリスで暮し、定期的に祖国ドイツへ情報を発信している。

周囲に正体がばれそうになれば、容赦なく殺人も犯し、また別の土地へ行く。

そのニードルに連合軍のヨーロッパへの上陸作戦を探る命令が来て、彼は上陸地がノルマンディであることを付きとめる。

その情報を携えてイングランドの北方の島からドイツの潜水艦と落ち合おうとした時、嵐に巻き込まれ、船は難破。

 

ここまではスパイ、ニードルの淡々とした情報活動と、それとは関係なく(のちに関係して来る)ヒロインの描写が交互に挟まれる。

船が難破して、北イギリスの孤島、ストームアイランド島に不時着するあたりから、話がロマンスへと展開してゆく。

ニードルは、島に暮らす若夫婦に素性を隠したまま、助けられる。

この夫婦は訳ありで、夫はスピットファイアの名飛行士だったが自動車事故で両足を切断、車椅子の生活を強いられる。

夫はそれを羞じて、人に隠れるようにして人里離れた北方の島に隠遁生活。
その島に住んでいるのは他に灯台守が一人だけ。

夫婦生活を拒否する夫のせいで、若妻は欲求不満を抱えていた。

(このあたり、チャタレイ夫人を連想させる)

 

夫が不在の時、ニードルは浴室で妻の裸体を偶然見たりし、二人は何となく接近してゆく。

次の潜水艦が彼を拾うまで、ニードルは素性を隠して二人の世話になることにした。

ある夜、灯台守のところに夫が出かけた夜、若妻が夫への不満をニードルにそれとなく打ち明け急接近、二人はその夜、結ばれる。

久しぶりの男の抱擁に歓喜する人妻。

ニードルにとっても久しぶりに抱く女性、彼女の火照りを感じ、彼女を心ゆくまで喜ばすのだった。

が、車椅子の夫が明くる日、ニードルの素性に疑問を抱く。そして…。

 

この時、ドナルド・サザーランドは「カサノバ」を撮り終えており、"怪優"などと呼ばれるようになっていたが、私は彼をむしろ"ベッドシーンの達人"と呼びたい。

とにかく、ラブシーンが上手なのだ。

久々のベッドでお互いが静かに燃え上がるさま、そして疑惑を抱きながらもニードルにあえて抱かれる人妻のエロチシズム…。

スパイ・サスペンスとは思えないエロチックシーンがあって、サザーランドのベッドシーンのファンとしてはウハウハしたものだった。

 

最後、人妻が反撃に出て恐ろしいことが起きるが、サザーランドのスパイはあくまで紳士的で、「騙すつもりはなかった」なんていう風に言い訳じみたことをいうのも原作とは違い、素敵だった。

原作よりも女に情をかけているのだ。
でも、ドナルド・サザーランドになら騙されてもいいと思った当時。

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