[Art Essay | ART TOP | HOME]

ノイシュバンシュタイン城

2022年10月16日

 

NHK Eテレの「地球ドラマチック」という番組で、
ドイツのノイシュバンシュタイン城の特集をしていた。


「ノイシュヴァンシュタイン城 
~未完の名城 建設秘話~」
https://www.nhk.jp/p/dramatic/ts/QJ6V6KJ3VZ/episode/te/L1NWW1W5YJ/


ノイシュヴァンシュタイン城。
“白鳥の城”として知られる名城だが、実は未完成だ。
設計された200の部屋のうち15しか作られず建設を終えた。
知られざる歴史に迫る。




世界で一番有名なお城、と言われている。
白鳥城ともいわれ、外観の美しさで観光に訪れる人も多いはず。
ドイツのババリア地方の観光の目玉になっている。

ババリアの狂王と言われたルートヴィヒⅡ世が建てた城である。




写真
オスモマガジン
https://osmo-edel.jp/column/1775-2/


ノイシュバンシュタイン城、ロマンチストな城主の何とも悲しい物語
より



ノイシュバンシュタイン城といえば、すぐに思い浮かぶのが
ルキノ・ヴィスコンティ監督の「ルートヴィヒ/神々の黄昏」。

完璧主義のヴィスコンティらしく、現地でふんだんにロケしていて、
内部の様子が詳細に分かる作品でもあった。

「ルートヴィヒ」は私の見た映画のオールタイムベストワンなのだ。
狂王・ルートヴィヒの孤独と苦悩を描いて、
若き日の王の美貌、そして老いてからの醜悪、
残酷なまでに容赦のない冷徹な描写が鮮烈だった。





<世界の城 [ アマナイメージズ ]

ノイシュバンシュタイン城にはもともと思い入れがあった。
ヴィスコンティが映画にする前から、
ルートヴィヒのことは澁澤龍彦の著書で知っており、
興味を持つようになったからだ。


山の上にそびえたつ童話に出て来るような美しい外観で、
ディズニーのお城のモデルにもなった。


が、建設されたのは19世紀、1860年代。
防御というお城としての機能はないに等しい。

ルートヴィヒが建てたいから建てた。
ただそれだけのお城なのだ。
政治的には無能と言われたルートヴィヒは、
城作りに情熱を傾けた。
その集大成がノイシュバンシュタイン城だと思う。

ルートヴィヒはノイシュバンシュタインの他にも、
リンダーホフ城、
ベルサイユ宮殿を模したヘレンキムゼー城も建てている。
お城造りに情熱を燃やした王であったのだ。




「地球ドラマチック」の番組では、
ノイシュバンシュタイン城がどのようにして山の頂きに建てられたか、
その工法をCGなどで解明してゆくという構成になっていた。

山の急峻な上に昔の城の跡が残っており、
そこに建てることになった。
旧城をもとにすることなく、それを破壊し、
城のスペースを確保するため、山を何度も爆発させた。
平らになるまで山を爆発させた。

そこに麓から石を運び、木材で足場が組まれた。
山の上なので労働は過酷を極め、死者も出たという。

 





3年で建設される予定だったが、予定は大幅に遅れ、
20年以上かかったという。
それはルートヴィヒ本人が建設に関わり、
彼のこだわりを実現させるため、
建設中に城のデザインを頻繁に変えてしまったからだという。

ルートヴィヒは出来たものに満足できなければ、
新たにやり直しをさせたという。
一からやり直すことも少なくなかった。

中世の城のデザインが基本だが、それだけではなく、
さまざまな様式を取り入れられていて、折衷式になっている。

要するに、ルートヴィヒの気に入りのものばかりを取り入れた、
ごちゃまぜの、いつの時代ともつかない、子供じみた、
悪趣味とも取れる城なのである。
そういう意味では唯一と言ってもいいのかもしれない。





城は当時の最先端の技術を取り入れられており、
電話や水道、電気が導入され、水洗式のトイレも作られた。
暖房もついていた。
材料は大理石や鉄なども用いられた。

しかし建設費は爆発的に増大し、国庫を脅かした。
建設費は2倍に膨れ上がり、それでも完成しない。
王は借金もした。
そのことが国民の反感を買い、王は孤独を深めてゆく。
そしてさらに王の欲望を満たすための城を完成させることに執着した。

城は未完のまま、王は住み始める。
内装は王が傾倒していたワグナーの世界を表現していた。
ワグナーの舞台美術を手掛けた人物が城の設計をした。


番組は、城の建設技術を紹介していた。
当時の最先端の技術を取り入れていたこと、
王の求めに従い、様々な工夫を凝らしていたことなど。

有名な洞窟は、城の真ん中にあるという。
執務室の隣だというから、驚きである…。




城は、王が1886年、謎の死を遂げたため、未完に終わった…。
変更に変更を重ねたため、なかなか完成に至らなかったのだ。
それでも外観は中世の時代の城を彷彿させ、
世界的な人気になった。

ルートヴィヒの死後、一般に公開され、
その入場料収入で負債が解消されたという。


それにしても現在、
ノイシュバンシュタイン城は観光のメッカになっているが、
映像では山の険しい頂にある。
工事のため、整備された道路が
観光客向けのものになっているのだろうか。


ノイシュバンシュタイン城はルートヴィヒの情熱の全てを傾けて
建てられた城であったという。
城自体がまさにルートヴィヒそのもの。
外観も内装も様々な趣向も含め、
ルートヴィヒの内面さえ伝わって来るような造り。
自分の望むすべてを具現化したものが、
この城だったのだろう。

未完のままというのも、ルートヴィヒらしい。。

 

 

 

[Art Essay | ART TOP | HOME]

inserted by FC2 system