印象派だけではなくて
私は印象派が嫌いだと言ったが、真実を言えば、嫌いなわけではないのだ。
ただ、印象派が、日本では異様にもてはやされているという事実に少しばかり異議を申し立てたい、
という気分なのである。世の中の絵画は印象派ばかりではない。もっとすてきですばらしい絵画がいくらでもある。
確かに印象派の絵は、明るく、分かりやすいかもしれない。
美術館へ行って、ひとめでも印象派の絵に触れたら、その筆のタッチに心躍りがするであろう。
だが、ほかの絵をひとつも見ないで、あるいは知らないで印象派、印象派と騒ぐのはいかがなものか。
ルネサンス期の、もう500年も前に描かれた絵なのに、
今描かれたとしか思われないみずみずしさを湛えたさまを見たら、あるいは、ベラスケスの筆の魔法を目の当たりにしたら、きっと、絵画は印象派ばかりではない、
ということに気づくはずだ。