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淡交社 /新撰 京の魅力

新撰 京の魅力
京都モダン建築の発見

淡交社

2002年

中川理

04/10/20

あまり知られていないが、京都は近代建築の宝庫である。と、この著者が書いている。

確かに、京都のそこここにある煉瓦建築は、モダンというか、ハイカラ、という呼称がぴったりで、キュートで素敵で、私も大好きだ。私は煉瓦フェチなのだ。

というわけで、京都にあるモダン・ハイカラ建築を網羅した本がこれ。美しいカラー写真で、京都の代表的なモダン建築がずらりと紹介されている。

あんなところにこんなきれいな建物が?と思うものもあり、あああれ、という京都のランドマーク的な建物もあり、市民におなじみの憩いの場もある。

この本では、建築を使われ方によって分類していて(教会、学校、レストランなど)分かりやすい。
市内だけでなく、京都府全域をカバーしている(でもほとんどは市内だ)。
モダン建築って、本当にステキ。私の必携本だ。

私がとくに気に入ったのは、ロマネスク様式のカトリック教会で、畳敷きというもの。宮津なので市内ではないが、畳に座る教会なんて、日本に馴染んだ教会という感じですてきだ。

***

京都になぜこのように沢山のハイカラ建築が残されているのか。

それは、明治維新で天皇が東京に行幸され、行ったきり帰って来られなかった。
京都市民のショックと落胆はすごかったという。

明治時代の京都市民は、首都というステータスを東京に奪われ、プライドがズタズタにされた。
そうして、そのショックから立ち直り、京都を近代都市として再生させるために、市民は必死になった。
琵琶湖疎水しかり、市電敷設しかり、番組小学校しかり。

明治期に日本初、が京都に多いのは、この、「天皇を東京に取られた」という、京都人の深い恨みが怨念となって、東京に負けてたまるか、というすさまじいエネルギーを生み出したからであろう。

そのエネルギーがモダン建築にも注がれた。

三条通は、当時、京都のメインストリートだった。*

三条大橋が東海道の終点だったので、自然と三条通が栄えたのだろう。
そういうわけで、三条通に次々とハイカラモダンなデザインの銀行や郵便局が建設された。
三条通に、傑作建築が数多く残っているのは、そのせいである。

 

*あとで知ったが、三条通は、明治時代にメインストリートとして整備されたそうだ。

 

京都は古い寺社だけでなく、このように近代、明治の時代の歴史を刻んだ建築も残されている。雑多というか、ごちゃごちゃである。

平安時代から室町、安土桃山、江戸、明治大正。
狭苦しいこの都市に、あらゆる時代の建築がごちゃっと詰まっている。
その中でも、清風のような煉瓦建築が町に溶け込んで何気なく建っているさまは、私の最も好きな都市の風景だ。

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