[TOP | Book of Art | Book Maniacs | HOME]

小学館

ショトルミュージアム

システィーナのミケランジェロ

青木昭

1995年

小学館

04/5/22

バチカンの中にあるシスティーナ礼拝堂の、名高いミケランジェロの壁画の修復が終わったのは1994年、足掛け13年に及ぶ作業だった。
この修復作業にはどういうわけか日本の日本テレビが出資しており、その代わりというか見かえりに、修復作業のすべてをドキュメンタリーとして撮影し、独占放映する権利を貰ったようだ。

当時、毎年文化の日あたりに、天井画の修復の様子を日本テレビが放映していたのを覚えている人もいるだろう。私もそのドキュメンタリーを、出来る限り毎年ビデオに撮っていた。

この本は、修復が完成し、鮮やかな色を取り戻した天井画・壁画の様子を収録したもの。合わせて、修復の様子、ドキュメンタリー撮影に携わった人の報告、そして新しく蘇った壁画の解説など、「新しい」システィーナを語る、定本といえるだろう。
修復前、修復後の両方を載せて、その違いを明らかにしていたり、そのほかミケランジェロの彫刻作品などにも触れていたり、ローマ案内も入っていたり、至れり尽せりの内容である。
発行は1995年、修復を終えた翌年だった。

 

長い修復期間の間に手塚治虫が訪れ、修復のための足場に登り、天井を間近で見た、と報告していたこともあった。
私の母も、父と一緒にシスティーナの天井を仰向けになって眺めた経験がある(私は見たことがない)。
ともあれ美術ファン…だけでなく、人類にとって、システィーナはひとつの巨大な遺産なのだろう。

システィーナに描かれたミケランジェロの絵は天井画と壁画、ふたつがあり、天井画の方は「天地創造」、そして奥の壁画が「最後の審判」である。
「天地創造」が描かれた23年後に、「最後の審判」が描かれた。
今回はそのふたつ共に修復が行なわれた。

「最後の審判」の修復の時、「ふんどし」をどうするか、でもめたことがニュースになったりしたことも、記憶に新しい。
美術ファンでなくとも、この修復が画期的な、注目に値する作業だったことが察せられる。

 

ゲーテが、その著「イタリア紀行」の中で、システィーナの天井画を見ないでは、一人の人間が、何をなすことが出来るかを知ることが出来ないだろう(大意)、と言ったのも有名な話だ。
この壁画を間近に見、修復に当たった人々は幸運だ。
修復という、根気のよさと高度な技術を持つ人のみが、その幸運に浴することが出来る。当たり前のことだが。

ともあれ、この本は修復作業と、ミケランジェロの魅力を余す所なく伝える本だと言える。

[TOP | Book of Art | Book Maniacs | HOME]

  inserted by FC2 system