TOPHOME

Book of Art

とんぼの本

国宝

芸術新潮編集部編

平成1年

新潮社

05/3/30

この本はつい最近改訂された。平成の新しい国宝も含めてリニューアルされたのだが、私の持っているのは、改訂される前のいっとう始めに出た、古いバージョン。

改訂版は、平成になってから国宝に指定されたものが追加されている。
雪舟の絵や、運慶など慶派の彫刻。三千院の如来と脇侍も平成になってから国宝になったようだ。

 

ところで国宝をひとつも持っていない都道府県がある。北海道だ。歴史が浅いから、国宝を持ちようがないのだろう。
意外と多いのは滋賀県である。
滋賀県は良い寺が沢山あり、史跡も多い。過小評価されすぎている県だと言えるだろう。

日本でもっとも沢山国宝を所有するのは京都だが、では2番目はどこだか分かるだろうか。
奈良県ではない。もっと多い所があるのだ。
それは東京都だ。

 

実は東京は、京都についで国宝が多い所なのだ。

その理由のひとつは、刀剣を多く持つからだと私は思う。

国宝の分類を見てみると、刀剣の数が異様に多いのに驚かされる。
多分、国宝を初めて定めた明治時代、刀剣が海外へ流出しそうな危機があったのではないだろうか。
そのため、やたらに刀剣を国宝に指定して、流出しないようにした。

そんなふうに勘ぐるのだが。
それ以外に何であんなものが国宝になっているのかの訳が分からない。
と言いたくなるのも、それに比べて茶碗など陶磁器の国宝の数が極端に少ないからだ。

それと、東京が国宝を沢山持っている理由のもうひとつは、各県が持っていた国宝を、東京が横取りしたからだと思う。
京都から流出して東京へ行ってしまったものも沢山あるはずだ。

なぜなら、歴史の浅い、たかが400年ほどの東京に、あれだけの数の国宝が元からあるはずがないからだ。
東京の国宝で、他県から分捕って来た宝物を差し引いたら、間違いなく奈良が2番目に国宝の多い県になるだろう。奈良から東京へ行ったものも、当然あるだろう。

しかも奈良のものは、京都より質がいい。
京都では、書が多い。国宝に指定されているものでは、書がもっとも多いのだ。
奈良は建物とか、彫刻が殆どだ。

 

京都、東京、奈良、この3つが3桁の国宝を所有していて(それぞれ200以上持つ)突出しており、あとの県は2桁になる。

奈良の次に多いのが大阪(60強)そして滋賀(同)となる。

それにしても、大阪も国宝を多く有するし、兵庫もそこそこある。そして予想通り和歌山県も結構ある。
京都を中心に、奈良、滋賀、大阪、兵庫、和歌山、それだけで国宝の殆どを占める。
近畿は国宝密集地なのだった。かの地でこそ日本の文明が興ったのだから当然といえば当然だろう。

 

博物館へ行って見る宝物より、その土地へ行ってその寺、その街で見る宝物の方が味わいがあるであろう。
そういうわけで、旅をするなら近畿が一番である。

Book of Art

TOP : HOME

  inserted by FC2 system