Memorable One

Music Making Angel
Melozzo da Forli

04/3/13記

奏楽の天使
メロッツォ・ダ・フォルリ

一枚ではなく、二枚だが…。

これはバチカン美術館展の時に見たものだから、バチカン美術館蔵なのであろう。

確か京都市美術館に、バチカン美術館展と称する展覧会を見に行ったことがあった。この時買った小ポスターに1989年とあるから、もう十年以上前のことだ。
その時にこの絵も飾られていた。

これはもともと壁画で、さまざまな天使が楽器を持って奏楽しているさまを描いた、フレスコ画であったはずだ。もしかしたら主題は、イエスの誕生とか、マリア昇天とか、そのような題材だっただろうと思う。
通常、壁画に天使だけを主人公として描くことはないからだ。

そして、この絵は壁に描かれたフレスコ画から(破損、または破損するかもしれないなどの理由のため)外され、キャンバスに移しかえられ、小さいサイズで美術館に飾られていたらしい。
京都に来る時、この天使図が対のような形でそのまま来たことはとても嬉しいことだった。

この絵の出自からすれば対ではなく、複数の天使がいたのだろうけれど、ほぼ同じサイズで楽器を持った天使が、右側と左側を向いているこの2枚を見れば、もと壁画だったとは言え、対だというに相応しいような画題ではないか。まったく、この絵を生で見られたことは、僥倖と言うにまさに値する。

私はフレスコ画というものが好きだ。
でも、それは現地(イタリア)に行かなければ滅多に見ることは出来ない。(ルネサンス時代の)フレスコ画は壁画だからだ。
壁に描かれたフレスコ画を、礼拝堂や、教会から外して京都に持って来るのは、かなり勇気のいる行為だ。無理というべきだろう。

でも、このような「バチカン美術館展」とか、「ルネサンス展」とかでは、それを見ることが出来るのだ。
イタリアでは古くなったフレスコ画は、この天使の絵のように、壁画からキャンバスに移し変えたりして、保存しているらしいのだ。
ずっと前に見に行った「ルネサンス展」(正式なタイトルは忘れた)では、そのようにして、キャンバスに移し変えられたらしい、多分ポントルモだったと思う、画家のかなり大きな絵が展示されていて、感激した。

私はこのずっと昔に見た、ルネサンス展で実物のフレスコ画(を保存した作品)を見たことで、フレスコ画が好きになったようだ。

なぜかといえば、フレスコ画の色彩はとてもビビッドで鮮やかで、美しいからだ。

本当に、実物を見たら、その絵が描かれた瞬間の、その時の画家の息吹が今、まさに伝わって来るかのように、生々しいくらいに感じられる。
何というか、今その絵が描かれたばかり、のような気さえして来るのだ。
それくらい、フレスコ画の色彩は目もあやで、そして、喜びに満ちている。
描く、ということが喜びというしかない画家の息遣いが、聞こえて来るのである。

この、メロッツォ・ダ・フォルリの「奏楽天使」もまさに、そういう、フレスコ画の色の鮮やかさが、絵を描く喜びを今に伝えているという、そのもののような絵だ。

この画家は、ルネサンスの時代の画家といっても有名ではないし、私もこの天使の絵以外はその作品を知らない。
1400年代中期に活躍した画家のようで、レオナルドよりはちょっぴり前になるようだ。

有名な画家ではないが、この「奏楽天使」だけで今に残ると言ってもよい。それほどにこの天使像は、明るく美しい色彩で、ルネサンス時代の、喜びに満ちた生命の息吹きを伝えていると言えないだろうか。

2枚あるうち、金髪の天使の方が正面向きということもあって、人気が高いようだ。
しかし私は、何となくメランコリックな右側の、茶色の髪の天使がお気に入りである。今も、部屋にポスターを飾っている。

 

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