Figure Skating Superstars

オリンピック後の世界選手権 02/3/21

 

オリンピックのあとの世界選手権は、そのすぐあと、一月後くらいに開かれる。
インターバルが短く、調整が大変だというので金メダリストは大抵欠場する習わしになっている。

そのわりには2位、3位の選手は出場して来るが、それはオリンピックで金を取れなかった悔しさをはらすためではないかと推察される。

そういう訳で、オリンピック直後の世界選手権はつまらない、というのがフィギュアスケート・ファンの一致した見方である。

オリンピックの金メダリストが出ない、というのは、私は、常々あるまじき、よくない風潮だと思っている。
オリンピックで(金を)取ったから、世界選手権などどうでもいいわという奢った態度がそこにそこはかとなく見て取れるからである。

オリンピックで金を取ってこそ。オリンピックで取ることこそが世界選手権で取るよりずっと価値があるのだ。
と、そこにはオリンピック至上主義のようなものが見え隠れする。

確かに4年に一度という希少価値によって、オリンピックは普段注目されない地道な競技がいちやく脚光を浴びる。
普段フィギュアスケートなど軟弱ななどと思っている人も、オリンピックだからとつい、見る。

であるからオリンピックが選手にとって特別のものであるという事は、否応なく私にも分かるのだ。
しかし、それだからと言って、世界選手権をなおざりにするのはいかがなものか(笑)。

世界選手権といえど、記録に残ってしまう。
どのような年に開催されても記録として、のちのちまで語り継がれるのだ。
もちろんオリンピックも記録として残り、また語り継がれて行くのは同じなのだが、フィギュアスケートをオリンピックでしか見ない、というような人にとっては、オリンピックの記録など、すぐに忘れてしまう種類のものなのだ。

たとえば、オリンピックでだけ金を取って、その付近の世界選手権にはあまり顔を出していなかったか、芳しい成績を残していなかった選手がいたとしたら、私は、
「オリンピック狙いの、いやしい精神の持ち主」という記憶しかその選手に対して持たないだろう。
他の人はどういう印象を持つかは分からないが。

逆に、世界選手権では勝ち続けているが、オリンピックでは一度も勝てなかった、という選手がいたとしたら、何と奥ゆかしい、と一ぺんに好印象を持つだろう。*

*実際にそういう選手がいるかというと、カート・ブラウニングが代表的であろう。

 

長い目で見れば、世界選手権で何度優勝したか、そのようなこともちゃんと記録には残る。
オリンピックでは金なのに、ワールドでは名前がないなんて恥かしくはないのだろうか。

オリンピックのメダリストがいない選手権で金を取っても、例年と同じようにただ金メダルとして記録される。質の悪い金でも金は金である。
それなのだから世界選手権を欠場するなんて本当にみずからチャンスを逃しているようなものではないか。
オリンピック後の選手権は、実はとても大きなチャンスのある大会なのだ。

それだのに、オリンピックで金を取ったからワールドに出る必要がないなどと思っているのであれば、それは思い上がりというべきではないか。

 

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常々思うことだが、オリンピックで金を取った選手よりも、長く世界選手権で活躍し続けた選手の方が記憶に残っている。
ずっと滑り続ける、競技生活を長く続ける。そうすると何度も名前を聞くから必然的にその選手が記憶に残るのだ。

世界選手権の記録を見て、名前が何年にもわたって記載されている選手には敬意を払いたくなる。
そういう選手こそ、オリンピックでだけ名を残す選手よりも貴重だ。
逆に1、2回しか名前がないと、しょせん一発屋か、と私の評価はぐんと下がるのである。

 

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ずっと世界選手権に出続け、その結果としてオリンピックにも出る、長く選手生活を続け、そのあとにオリンピックがあり、そして金を取った、ということなら何の文句もない。

せっかく人よりも優れた身体能力を持って生まれたのだから、なるべく長く選手生活を続けて欲しいと思う。
私は、何と言っても選手の活躍を長く見たいのだ。
だから能力が落ちて来ない限り、競技を続けて欲しいというのが、見る側の勝手な望みである。

 

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ところで今回アニシナ・ペイザラーが欠場したのには、ブルータスよお前もか、という感じで、非常に失望した。
はっきり言って、とたんに熱が冷めたくらいだ。

あのトーヴィル・ディーンはサラエボのあと、ちゃんとオタワの選手権に出て優勝してから引退した。
オタワでは、第1マークも第2マークも6.0、つまり完璧な満点だった。そののち引退したのだから、真に偉大なチャンピオンだった。

選手としてはやはりそれが筋というものであろう。引き際のなんと美しいことであったことよ(詠嘆)。

それだからよけいにアニシナ組のダラシナサは強い印象を与えた。
いくらファンだと言っても、何でも許せるというものではない。
私は選手の演技の質の高さとか、そんなことでファンになるのではない。
やはり選手の心がけ、態度、品格、そういうものが心象を左右してしまう。

はっきり言って、世界選手権に出ないでアイスショーに出ている場合か?。
と言いたい。

彼らは一度は世界選手権で優勝しているが、昨年はイタリア組に負けた。
結局世界選手権では一度優勝しただけである。
それが記録として残ってしまうのだ。残念ではないか。

まあ、彼らも疲れているから、と気遣うのが真のファンなのかもしれない。
私は真のファンではないのであろう。
しかしこれは愛するがゆえの苦言でもあると思っていただきたい。

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アレクセイ・ヤグディン選手が来たのには驚いた。
本来ならプルシェンコが来て彼は欠場というのが当たり前の線なのだが。

ヤグディンは、私にとっては以前から虫が好かない、いやな選手だった。
態度も良くなかったし、心象はすこぶる悪かった。
しかし彼も成長し、人間性に幅が出て来たのかもしれない。
彼がこれまでの態度を反省し、気持ちを改めたというのなら、それに越したことはない。
私も何も石頭ではない。
人が気持ちを改めるのならそれを認めるにヤブサカではないのだ。

ヤグディンがどれだけ素晴らしい演技をしても、彼が奢り高ぶった態度を改めないままであったなら、世間がどれだけ評価しようと私にとっては最低の選手のままなのである。

チャンピオンになったということは、気持ちにゆとりが出来たということでもあるだろう。
彼にはそれが良い方向に働いたのだと思う。

彼は今回、自分が来なければ金メダリストは誰も来ない、それはまずいと思ったと言っている。
なかなか気を使うようになったではないか。よきかなである。

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