Figureskating Superstars

トリノ・オリンピック まとめ  女子シングル 06/4/3

さてもたもたしていたら世界選手権まで終わってしまって、トリノオリンピックなんて、今では遠い昔の出来事のように思えてしまう昨今。
まとめをまったりしながら書こうと思っていたのに、月日の経つことの何という早さ。
それでも、男子とペアはまとめてしまって、そこで中途半端に終わっているので、残りの女子(とアイスダンスを)何とかまとめておこう。

女子シングルは、トリノのフィギュアスケートの中で最も予想しない結果になった。
やはりオリンピックには魔物がいる。4年に1度というむつかしい時期の設定のため、いざこの時に実力を発揮出来ないこともある。
オリンピックで勝つということは、運もあるということを改めて思い知らされた。

実は私はライブで女子フリーを見ていなかった。朝起きた時はスルツカヤがすでにキスクラにいて、得点を待っている最中で、刈屋アナの「トリノの女神は荒川静香に…」という叫びで何が起こったのかを知ったのだった。


皆さんもうすでにお忘れだと思うが、日本からは荒川静香、村主章枝、安藤美姫が出場。

アメリカからはサーシャ・コーエン、キミー・マイスナーが、全米の結果を経て出場したが、特例でミシェル・クワンが出場。開会式まで出たが、その後の練習で痛めていた股関節が再び悪化、棄権して、全米3位のエミリー・ヒューズが代わりに出場するという出来事があった。

*-*-*

ショートプログラム

まず安藤選手が3-3をステップアウトして8位。苦しいスタートに。似合わない衣裳が良くないと言われたりもした。確かに、動きを制限するような、鈍く見せるような衣裳だった。
村主選手はエレメントをミスなく滑ったが、レベル4に達する技があまりなく、4位に。

スルツカヤは馬力のあるところを見せたが、ジャンプのランディングがいつもよりきれいではなかったような気が。
すぐ次の順番だった荒川選手は、それまでフリーで使っていたショパンの幻想曲を使い、良い出来でスルツカヤの次につけた。
サーシャ・コーエンが完璧な演技を見せガッツポーズ、わずかだがスルツカヤの上を行き、トップに立った。
実質、この3人のトップ争いという感じになった。

この上位3人はスパイラルに良いものを持っていて、サーシャが180度の垂直開脚、イリーナはビールマンポジションのスパイラル、荒川はY字バランスから手放し、と、それぞれ特徴のある個性的な技を持つ。それが、他を引き離しているという印象になった。

地元イタリアのカロリーナ・コストナーが女子シングルのキー・パーソンだったが、ショートであえなく転倒、後退した。
彼女はスピードがありすぎてそれをコントロール出来ないらしい。素質はあるが、じゅうぶんに発揮出来ないタイプということだろう。

ユーロ(ヨーロッパ選手権)でスルツカヤに次いで2位に入ったエレーナ・ソコロワもジャンプで失敗、10位以下という不本意な順位からのスタートとなった。本来ならメダル候補として、メダル争いに加わると思われていたので、ちょっと運がない感じだ。

このショートでは、荒川選手の美しさが印象的だった。彼女のコスチューム、ヘアスタイル、メイク、そして氷の上に立った時の存在感と、輝くばかりの美しさ。自信に裏付けられた落ち着きがあった。そのせいで美しく見えたのか。

 

フリー

安藤選手が4回転にトライして失敗、そのあと持ち直すことが出来ず、転倒や壁にぶつかるなどし、最後は足に来てスピードが止まった。スタミナが維持出来ず、緊張と重なって思い通りの演技が出来なかったようだ。15位。

グルジアのゲデバニシビリ、カナダのミラ・リュン(アジア系でマナ・カナにそっくり)、フィンランドのキーラ・コルピ(シャロン・ストーンそっくりの色っぽい美女)、中国の新進ヤン・リューなど、各国のフレッシュな選手たちは初々しい演技。
珍しいところではカラデミルという、トルコの選手も出ていた。

コストナーは地元の大声援を受けたがやはりスピードの出しすぎでミス、彼女の使用している曲はショート、フリーともいい曲で、コスチュームもいいデザインだった。

ベテランソコロワは、フリーでもいつもの演技は見られなかった。彼女の「ロミオとジュリエット」はロミオの役で演技し、スタビスキーが滑っているみたいで本来なら凛々しいのだが。
カナダのムキムキジョアニー・ロシェットは「枯れ葉」「愛の賛歌」で滑って、刈屋アナを喜ばせた。
アメリカのクワンの代役で出て来たエミリー・ヒューズは元気いっぱい、転倒にはめげず、満面の笑顔で、どう、私を見て?とアピール。
村主選手は良い出来だったが、スパイラルとスピンが弱く、もうひと息だった。

ショートの3強はまず、サーシャ・コーエンが演技。
彼女は3分過ぎからのスタミナ切れが課題だったが、今回はのっけからジャンプで転倒。2度目のジャンプもお手つき。
フリーの練習中に怪我をした、という情報もあったから、そのせいかもしれなかった。
ただそのあと持ち直し、いい演技で滑り切り銀メダル。
ニーノ・ロータの「ロミオとジュリエット」グランプリではベージュの衣裳だったが、オリンピックではえんじ色だった。

そのあと荒川静香選手が今期の曲を変更しオペラ「トゥーランドット」の「誰も寝てはならぬ」で滑った。これは、オリンピックの開会式でルチアーノ・パヴァロッティが歌った曲で、彼女自身、04年の世界選手権で優勝した時の縁起のいい曲。
ループがダブルになった以外はジャンプ、スパイラル、ステップ、どれもが良い出来で、スピンだけ回転が遅かったが、それでもポジションをチェンジして高得点を得た。
その上に彼女はフリーでも美しく、ヘアスタイル、メイク、アクセサリー、衣裳、トータルで美しい「氷上の作品」を演出した。
転倒のミスがあったコーエンを上回った。最終的に金メダル。

最終滑走のイリーナ・スルツカヤは、最初のコンビネーションジャンプの予定が、コンビにならず、シングルになった。
この時点で、スルツカヤの異変は明らかだった。3-2-2のコンボは決めたが、各ジャンプのランディングがやはりあまり良くない。そして、後半のジャンプでついに転倒、悲願の金が逃げた瞬間だった。
それでもフィニッシュは笑顔で、キスクラでも笑顔を絶やさなかった。もしかしたら、戦う前から自分自身の不調を分かっていたのかもしれない。

彼女は病気持ちで、薬を服用していたというが、オリンピックではドーピング対策で持病の薬を使用出来なかったのかもしれない。いずれにしても不運な選手だった。

 

表彰台で、荒川選手が一番高いところに昇った。表彰台でも彼女は美しかった。美しい人が金メダルを取るのはいいものだ。
彼女の喜び方は、アメリカの下品な選手(…)とは違い、とても上品だった。
外国のフィギュアの選手の太ももは逞しいので、キスクラで膝が開いている人が多いが、荒川選手はキスクラでもちゃんと膝を閉じていた。日本女性の良さだ。
その太ももをモロゾフコーチが触りまくり、遠慮なく抱き締め、何ごとか囁いたりしていたので、日本人男性がブーイングを浴びせた。

女子はコスチュームも楽しめる。華やかで結構でした。

トリノ・アイスダンス

  inserted by FC2 system