Figure Skating Superstars

上手なプログラムの見方 04/1/16


以前、「ジャンプの簡単な見分け方」というふざけた文を書いたら、超一部マニアに受けた。

しかしその時、実は私は嘘をついた。

 

記述を面白おかしくするために、トリプル・フリップを見分ける方法はないかのように書いたのだ。

しかし、トリプル・フリップの序走にも特徴はあり、見分けることは出来る。

ルッツの場合は、後ろ向けにまっすぐ(ジャンプ位置まで)滑るが、フリップはその逆で、前を向いて滑ってゆく。ジャンプ位置が来ると、くるっと回れ右をして、右のトウをついてジャンプするのだ。

ただ、トウ系のジャンプなのでトーループと紛らわしい。

トーループは右で、フリップは左踏みきりなので全然違うのだが、素人には同じに見えるのだ。

私が見分けのつくジャンプは、アクセル、ルッツ、ループで、この3つは的中率100パーセントと言っていいだろう。

サルコ、フリップ、トーループがどうも怪しい。

サルコはトウをつかないので、何とか分かる。

だから白状すれば、トーループとフリップが何だか良く分からないのだ。
競技では、選手はフリップを飛ぶ前には緊張しているし、プログラムの重要なところで飛ぶから見分けがつくのだが、エキシビションなどで、解説者の説明などがない時に、もう見分けることが出来ない。

フィギュア競技を見ることは、日々精進なのである。

 

***

 

そして今回は、プログラムの見方というのを提唱してみる。

男女シングルとペアの3種目はショートプログラム(SP)、フリー(FS)の2つで争うが、2分半と4分半、それぞれどこが違うのだろうか。

その疑問を分かり易く、噛み砕いて、逐一、これ以上ないほど丁寧に、いやというほどくどく、その見方を伝授しようという、初心者向けの画期的な試みである。喜ぶように。

 


ショートプログラム

さて、それではまずショートプログラムから見ていこう。

 

ずっと以前には男女シングルには規定(コンパルソリー)があった。

これは氷の上に書かれた円を、エッジで正確になぞる。というだけのものだった。
あまりにも見栄えがしないので、テレビでは滅多に放送されなかった。
そしてそのうち、あまりにも見栄えがしないというので廃止された。

このコンパルソリーがあったために、それが苦手な伊藤みどりがなかなか上位に行くことが出来なかった、という伝説がある。コンパルソリーがなければ彼女はもっと常勝していただろう、と。

 

★SPでは、ジャンプの回数や、スピンの回数、ステップの回数が決まっている。

以下は男女共通。

☆ジャンプはコンビネーションジャンプを1回、ステップからのジャンプが1回、もうひとつ、単体で飛ぶジャンプ、の合計3つを飛ぶ。

一度失敗しかたらといってもう一度飛んで失敗帳消し、ということは駄目だ。
コンビネーションを失敗したからといって、今のはシングルとして数えてくれ、あとでコンビネーションを飛ぶからと言っても駄目だ。
コンビネーションを飛ぶはずがシングルになったら、それはコンビネーションジャンプの失敗と見なされるのだ。
審判はシビアなのだ。

 

☆スピンは、男子の場合はフライングシットスピン(飛んでからスピンの体勢になる)、足かえのコンビネーションスピン、など合計3つを廻る(あとは知らない)。
それぞれ7回以上とか、まわる回数まで決められているという(五十嵐さん談)。

女子の場合のスピンは、フライングの代わりにおそらくレイバックスピンが来るのであろう。

☆ステップは、リンクの中央をまっすぐに進むストレートライン・ステップ、円を描くように進むサーキュラー・ステップ、Sの字に進むサーペンタイン(蛇行)・ステップなどがある。
私の長年の観察の結果の推測によれば、SPではこのうちの2つを敢行するようだ(違うかもしれない)。

 

SPは2分半と、時間が短い。

このようにジャンプを3つ、スピンを3つ、ステップなどをやっていれば、それだけで2分半のタイムリミットが来る。だから見ていて退屈しない。

だが、あくまでSPなので、テレビで放送される確率は低い。
女子SPなどは丁寧に放送される傾向にある。

 

★SPのプログラム構成

法則というのは本来はないと思うが、長年の観察の結果では、一般的なプログラム構成は誰がすべっても大体同じような技の順番になる。

 

最初にコンビネーションジャンプ。次に(人によっては)スピンを挟むなどして、ステップからのジャンプ。そしてスピンとサーキュラーステップでお茶を濁し、さらに単体のジャンプ。スピンで一息つき、最後に華麗にストレートラインステップを決める。
女子の場合は、最後は華麗なスピンで締めくくる。
上手な人は、コンビネーションジャンプのあと続けて単体のジャンプを飛んで畳み掛けてくる。
プログラムの振り付けも、審判への印象に影響するだろう。

 

女子はここ数年技の進化がないので、女子のショートプログラムで使われる技のほうが分かりやすい。

女子のコンビネーションジャンプは、トリプルルッツから上手な人はトリプルトーのコンビネーションとなる。普通な人はダブルトーを飛ぶ。
ステップからのジャンプはフリップ、単体のジャンプはたいていダブルアクセルを飛んでいる。

あとはステップ、スピンの他スパイラル(足を開いたまま片足で長く滑る)を入れる人もいる。

★日本の選手のように、4回転を飛ぶ女子も出て来たので、これからは変わるかもしれない。

 

男子の場合コンビネーションジャンプは、男子は最近ではクオドルプル×トリプルトーを飛ぶ。トリプルアクセル×トリプルトーでもいいだろうが点数が違ってくる。
ステップからのジャンプは大ていフリップで、単体で飛ぶジャンプは、このごろトリプルアクセルになって来た(以前はルッツだった)。
恐ろしいことになって来た。息が抜けない。

男子のスピンは、キャメルスピンというのがあったのを忘れていた(足を開いてまわる)。

★昔、トリプルアクセルが最もむつかしい技だったころのジャンプは、トリプルアクセル×トリプルトー、ステップからフリップ、単体でルッツという構成だった。
ルッツはステップから入りにくいジャンプなので(フリップよりむつかしい)、単体で飛ぶのだ。

 

プログラムは、むつかしいジャンプから順番に飛んでいく傾向が強い。
体力があまっているうちに飛んでしまうのだ。

SPにせよ、フリーにせよ、プログラムの最後にむつかしいジャンプを持って来る人は、まずいない。
滑り終わりのよれよれになっている時に、4回転など到底飛べないからだ。

 

トリプルアクセルが一番むつかしいジャンプだった時、フィリップ・キャンデローロはフリーで、一番最後に単体のトリプルアクセルを持って来ていた。
プログラムの構成上、どうしてもそこがアクセルの位置だったのだ。

一度も満足に飛べなかったが、プログラム構成という美学を、体力よりも優先したのだ。
無謀ではあったが、美しい行為だった。


あっ、フリーの構成はまた次回だ。

ジャンプの種類についてちんぷんかんぷんな方は、こちらを。

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