Figure Skating Superstars

20012002シーズン


ソルトレイクオリンピック、日本での世界選手権と、フィギュアスケートに触れることの多かった今シーズン。
また今シーズンほど物議をかもし出したシーズンもなかったのではないかという気もする。

別項で掲げたフィギュアスケート関連の本を買って読んでみたら、やはりオリンピックや世界選手権での騒ぎについて様々に言及されていて、私にもそれなりに知識が増えた。
そこでもう一度、今シーズンの問題点をおさらいして、記憶に留めておこうと思う。

 

ソルトレイクオリンピック
サレー・ペルティエ事件 

まず、2001年(去年)の世界選手権の結果から見ておこう。

1 サレー・ペルティエ
2 ベレズナヤ・シハルリドゼ
3 申雪/趙宏博

私はこの世界選手権は見ていない。
しかし、サレーがソロジャンプをミスしてシングルになったにも関わらず、そのようなミスがなかったベレズナヤ組が2位、サレー組が優勝した。

大会がカナダのバンクーバーで開かれたからである。

ひょっとしたら、オリンピックでそのリベンジが(ロシア圏のジャッジによって)なされたのか?

しかし、99年の世界選手権(ヘルシンキ)では、ロシア組が1位になり、中国組が2位となったのについて、談合が発覚。
ロシアのジャッジは審判からはずされるという事件があった。

(以上スポーツアイ)

中国組の躍進に、ロシアが脅威を感じたことがその原因らしい。
今回のオリンピックのジャッジにもこのようなロシアの思惑が働いたことは否めないだろう。
何せ、ペアはロシアの最後の牙城である。
ここ10数年来、オリンピックではペアはロシアが金を守り続けているのである。

しかし、このペア事件の、北米でのヒステリックな報道はどうだったのだろう。

 

ソルトレイクでペアのジャッジを担当した日本人ジャッジは杉田秀男という人で、カナダを1位につけた。(スポーツアイ)

しかし、ジャッジ資格を持つ日本スケート連盟の城田憲子氏は、自分ならロシアにつけた、と発言している。(ワールドフィギュアスケート)

あの解説の五十嵐文男氏は、
オリンピックの審判で、技術点で(ミスをした)ロシア組を上にしたジャッジは一人もいない。芸術点でロシアが上だと判断された。(同上)

と発言している。

エレメントの合間に細かい振り付けを入れていたロシアに対し、カナダはスケーティングでつないでいただけ、という発言もしている。
またリフトなど、ジャッジの目線から見れば、ロシアの方が大きい、とも。

 

北米でのマスコミの騒ぎは、テレビの解説者の意見が大きく影響したという。

アメリカのテレビで解説をしていた元男子シングルチャンピオン、スコット・ハミルトンが判定を非難し、世論を煽ったという。
その結果、カナダに与えられた金メダルを、ハミルトンの2個目の金メダル、と皮肉った者もいたという。(前掲ワールド…)

私はスコット・ハミルトンのファンだっただけに残念でならない。
解説者は冷静であるべきでジャッジではないし、まして判定をどうこう言うべきではない。
でも日本でも解説者があれこれ自分の意見を言うのは別におかしいことではない。
それをことさら取り上げて捏造(と言っていいと思うが…)した北米のマスコミは、やはり異常だったと言ってもいいのではないだろうか。

 

アイスダンス

ペアの問題は、アイスダンスにも波及する。

というより、カナダにも金を、とIOCのロゲ会長に進言したのがカナダのIOC委員ディック・パウンドという人だったという。(ワールド…)

裏話があり、この人は98年長野オリンピックで、ボーン・クラッツの4位が不正だとしてアイスダンスをオリンピックからはずすべきだと言ったという。(意訳)

結局審判どころか、役員まで自国有利の原則で動いているに過ぎないのだ。

2001年のグランプリ・ファイナル(12月、つまり今シーズン)はボーン・クラッツが優勝、アニシナ・ペイザラーは2位だった。(ロシアのロバチェワ組は出ていなかったようだ。)

なぜボーン組が優勝したか。
ファイナルが開かれたのがカナダだったからだ。

彼らは、10年近く活躍しているベテランカップルだ。今回急に出て来てアイスダンスに革命をもたらそうとしている選手などでは断じてない。
彼らのあとにアニシナ組が出て来て追い抜かれ、さらにそのあとに出て来たロバチェワ組にも抜かれた。
それは女性のボーン選手が足を故障して長く競技に出ていなかったためでもある。

自国の選手を応援するのは民族主義的に自然のことかもしれないが、カナダのは少し異常だ。

 

ヤグディン対プルシェンコ

ヤグディンが、4×3×2(ループ)のコンビネーションジャンプを飛んだ時、役者だなと思った。
それはライバル、プルシェンコ選手の得意技だった。
ライバルの技を盗んでまでヤグディンは勝利にこだわったのだ。
その差だったのだろう。

結果、プルシェンコは、まだ完成されていない4×3×3(ループ)という、より難度の高い技に挑戦せざるを得ず、そしてヤグディンの目論見通り、それは失敗した。

プルシェンコがあの技をオリンピックまで温存し、隠していたら技を取られることもなかっただろう。
昨シーズンまでのプルシェンコは飛ぶ鳥を落とす勢いで、怖いものなしだった。
その流れであの技、4、3、2が出て来た。
プルの勢いからして、とどまるところのない才能だと我々は思った。

その時にオリンピックが開かれていたら文句なくプルシェンコに凱歌が上がっただろう。しかし、時はヤグディンに準備の期間を与えたのだ。
打倒プルシェンコのプログラムを作る―それがヤグディンのする唯一のことだった。

思いが強い方が強くなる。
どのような思いであれ…悔しさ、恨み、憎しみ、復讐心…であれ、それが強い者がより行動を起すことが出来るのだ。
プルシェンコはその思いがヤグディンほど強くなかったのだろう。悔しさも。今はその方がいいと思った。
プルシェンコにはそのようなどろどろした感情は持っていて欲しくない。
天才には思い悩む姿は相応しくない。

この項続く

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