Figure Skating Superstars

Saltlake Olympic

ソルトレイクオリンピック・フィギュアスケート
まとめ 
その1 雑感
02/2/27

まだ興奮と思い出が覚めやらぬオリンピックのフィギュア
しつこく思うことなどつれづれに…。

 

ペア

中国ペア(シェン・ツァオ)

2月11日の項で、「もう結果は分かっているようなものだが…」と書いた。
現時点で、中国ペアの位置はロシア、カナダに次ぐ3番目である。
だからオリンピックでも彼等のポジションは3位だろう、と予想したのだ。
しかし、彼らシェン・ツァオは、あらかじめ「分かっている」自分たちのポジションに満足しなかった。

フリーで、いきなり4回転のスローイングジャンプに挑戦して来た。
金を狙ってのことだ。

彼らは技術ではロシア、カナダに負けていない。どのチームよりも高く、とおくへ飛ぶ。表現力もぐんと増して来た。
それなのに、常にポジションはロシア、カナダに次ぐ3番目。なぜなのか。
どうしたらそれを超えられるのか。
そこで彼らは4回転に挑戦して来た。
とても果敢だった。そしてすがすがしかった。
結果として3位だったが、彼らの挑戦はいろいろなことを物語っていた。

フィギュアスケートには、明らかに順列というものがある。
それを越えて、誰かが上へ行こうとすることは拒絶されるのだ。
彼ら中国ペアがたとえ技術でも、表現力でもロシア、カナダに勝っていたとしても、彼らよりも上へ行くことは許されていなかったのだ。

彼らは、それをなぜ、と疑問に思った。
そして、彼らは自分たちの演技で、その関門を超えようとした。
正々堂々としている。
中国ペアに考えさせられることは多かった。

 

アメリカペア(イナ・ジマーマン)

ジマーマンがかっこいい。キョウコはいいのを見つけた。

彼らがフリーの最後でドミトリエフ・スピンを披露していたのが嬉しかった。

エキジビジョンでは、ドミトリエフ・スピンのほか、ドミトリエフが得意としていたリフトもやっていた。
ひょっとしたらドミがコーチか、振りつけでもしているのではないだろうかと思わず思った。
そうでないとしても、ドミのスピンやスピリット(笑)が受け継がれているのがとても嬉しい。

ペアの判定

私なら、ルックスでロシアの勝ちとする。←ひどい…

 

男子

本田くん。

日本の選手が4回転・3回転のコンビネーションを成功させるなどと、4年前に想像が出来ただろうか。
私は本田くんが4回転を成功させているのを見るにつけ、つくづく日本人もすごくなったものだなあと感慨でいっぱいだ。

かつてエルヴィス・ストイコ選手が登場して来た時、胴長・短足・でっちりという三重苦にも関わらず、健気に滑っているさまを見て、日本人だって恰好を気にせず滑ってもいいのだと、随分日本の選手の励みになるなと思っていたものだ。

でも本田くんを見ていたら、足も(ストイコより)長いし、スマートだし、表現力もあるし、ちっとも外国の選手と見劣りがしない。
競技で一人だけ浮いているということがない。
エキジビジョンの演技などとても洗練されていて上手だ。
下手な外国選手などよりずっと退屈せず見る事が出来た。
本当に立派な選手になったなあと、お茶をすすり、みかんを剥きながら感慨にふけるのだった。
この上は、ぜひドラマチックなプログラム作りに挑戦して欲しい。

 

*その他の選手はまだちゃんとビデオを見ていない。
私がひそかに好きなマイケル・ワイスもまだ見ていない。
オリンピック中はビデオに撮るので精一杯でゆっくり見られなかったからだ。これからゆっくりと順番に見ていこうと思う。そうしたらまた新しい発見があるかもしれない。

 

アイスダンス

下位のカップルで女性が男性を持ち上げる、アニシナたちのお得意の逆リフトをしている組がいくつかあった。
だんだんとアニシナ組のあのリフトが流行ってきているのかもしれない。

しかし、あの逆リフトは実はアニシナたちの発明ではない。
アルベールビル・オリンピックのアイスダンスの録画を見ていたら、アニシナたちの先輩に当たるフランスのカップル、デュシネイ・デュシネイ組が既にやっていた。

彼らは兄と妹のカップル。モダンな振り付けでロシアに挑んだ。
その振り付けにペアでやるような男女交互のバタフライがあり、また妹が兄を持ち上げている場面もあったのだ。
アニシナ・ペイザラーは、先輩のフランス組に触発されてあのリフトを考え出したのかもしれない。

 

女子

ロシアの敗因は、出場していた選手がスルツカヤ、ブティルスカヤといったベテラン選手ばかりで、新しい選手がいなかったことにもあるような気がする。
新しい人材が育たなかったのだろうか。それとも新人よりもベテランの方がまだまだ技術が上だったからだろうか。
もちろんベテラン選手の演技も楽しみだが、新しい人たちの活躍も見てみたいものだ。

私は、女子シングルは、かつてのカタリナ・ヴィットとかデニス・ビールマン。
彼女たちが好きだったが、最近では好きといえる選手は出て来ない。
どちらかというと、きらい(笑)という選手の方が多いのだ。

なぜなら、私はジャッジではないから、選手をトータルして見ている。
だからして、演技が終わったあとの様子とか、キッス・アンド・クライでの選手のマナーとか、お行儀も含めてその選手の人間性でファンになるのだ。
ただジャンプが上手で金を取った、というだけでは満足出来ない。
クリスティ・ヤマグチなどは、少しお下品なところがあるので、好きではなかった。

 

サラ・ヒューズのコーチ

彼女はすっかり有名になってしまったが、あんな明るいコーチに教えられていたらさぞかし楽しいだろうなと思う。
きっと明るく練習をしているのだろう。コーチに恵まれたことで、サラはのびのびと滑れるようになったのかも。
しかしサラの方が落ち着いているように見えた。

 

エキジビジョン

ベレズナヤ組

エキジビジョンで最も素晴らしかった演技は、ペアのベレズナヤ・シハルリドゼのチャップリンだった。
エレナが体操の素養を持っていること、すごい運動能力があることがいやほど分かっただけでなく、目を見張るほどの出来の良さだった。
あれを見たら、彼らこそがチャンピオンに相応しいと思うはずだ。

 

男子のゲーベル選手。

彼は4回転を飛んでなんぼの選手。
4回転を飛ばないゲーベルなんてただ退屈なだけ。
いかんね。心がけが。ここはどうでも4回転でしょう。
それでもプロと言えるの?
あっアマチュアか。ごめんごめん。

ヤグディン

私は本当はヤグディンがきらいなのだ。もう少し柔かな表現で言えば好きではない(笑)。
でも、ヤグのあのステップはすごい。掛け値無しにすごいと思った。
もちろんフリーも素晴らしかったが。
もしヤグディンがイリヤ・クーリックの顔と性格を持っていたら、私はためらいなくファンになっていただろう(笑)。

ただ問題の多かったヤグディンだが、フリーを滑り終わったあと、エキジビジョンの演技のあとの彼の顔を見ていたら、穏やかな顔をしていた。
人間としても成長して、チャンピオンに相応しい人格が身について来たのかもしれない。もしそうだとしたら、それはそれで素晴らしいことだ。
ぜひ大きな人間になってもらいたい。

村主選手

彼女のエキジビジョンは大きな収穫だった。
とてもお茶目で可愛い演技。
いつもは大人しく美しい滑りという印象があったのに、実はとても活発な性格なのかもしれないと想像させるような、でも丁寧で美しい滑りはそのままで、世界に伍しても何ら遜色のないエンターテイナーぶり。
エキジビジョンがいい選手は、フリー競技もいいと決まっている。これからきっと活躍するだろうから楽しみだ。

私はとくにあの最後のポーズに悩殺されてしまった。キュート!

 

ミシェル・クワン

クワンは泣いていた…。
あの得意のスパイラルを、泣きながら滑っていたのだろう。
泣かないで…

クワンは、ひところ名前だけで点数をもらっていると言われた。
名前は知られていたが、既に力は尽きていた。
ソルトレイクでの、3位という位置は彼女の今の正しい場所だったと思う。
いや、長野でリピンスキーに抜かれたときから、彼女はもう、決してナンバーワンには戻れない選手だったのだ。
それでも夢を捨てきれず、金を目指したのが悪かったのか?
誰が彼女のその夢を愚かだと貶められるだろうか…。

エキジビジョンで彼女は3回転を飛んだ。
しかしトーループなど飛ばずとも彼女の演技は美しかった。心を込めた演技、慈しむように氷の上を滑っていく…

金を取っても忘れ去られる選手もいる。
今オクサナ・バイウルの名前を覚えている人がいるだろうか。
タラ・リピンスキーでさえ、忘れてしまった人もいるだろう。
でもクワンの名前は忘れられないだろう。
その名前は、人々の記憶にいつまでも残る。彼女はそういうスケーターだ。

ラスト

サラ・ヒューズが花を添えて、テロ犠牲者のために滑るプログラムは、グランプリシリーズでの彼女のエキジビジョンだった。
それをあえて最後に持って来た演出にあざとさを感じる。
せっかくいい気持ちで見ていたエキジビジョンが、ここでもアメリカのプロパガンダに利用されているのを感じ、少しげんなりする。
もうかんべんして。

 

大ラス

オリンピックに限らず大きな大会での競技結果で、自分の望み通りになることは滅多にない。
なんでこんな性格悪いやつが金なんだ?
とか
なんでこんな、ルックスに難ありの選手が何度も繰り返し映っているのだ?
とか

結果に対して不満はいつも横溢する。
ソルトレイクはかなりひどいオリンピックだったけど、ただひとつ、アニシナ組が金を取ったのだけは嬉しい結果だった。
とてもまれなことに、私の望みの通りになったのだ。
でもあとは惨敗。だけど、ひとつでも望みが叶ったのは珍しいことだ。それを喜ぼう。

NHK杯は、グランプリシリーズのひとつになっているが、極東で開かれる大会のため、出場する選手はわりと2番手クラスが多い。
だから、NHK杯で優勝してもオリンピックや世界選手権では3位程度ということが多いのだ。

しかし、アニシナ組は、そのNHK杯で優勝してオリンピックでも優勝した。
彼らは、日本人が応援してくれていることを知っており、そのために遠い日本での大会にわざわざ来るのだ。
何て義理堅い人たちだろう。それだけ、日本に熱心なファンが多いということだろうけど。

その辺境の地で開かれるNHK杯で優勝した組が世界でも1位になるとは、とても素晴らしいことではないか。
NHK杯で優勝のペアのシェン・ツァオは3位、本田くんは4位。それぞれ妥当な順位をもらっている。

日本人は、世界一公平な応援をすると言われている。
自国の選手だけでなく、良いと思える選手は熱心に応援し贔屓にするのだ。国に関係なく。
それは日本人が誇っていいことだ。
私も、これからも良いと思える選手たちを国に関係なく、美しいと思うものを応援し、ずっとずっと憧れて行こう。


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