Figure Skating Superstars

Icedancing

ソルトレイクオリンピック・フィギュアスケート
アイスダンス
02/2/19


アイスダンスは規定、オリジナルダンス、フリーと、3種類の競技で採点が決まる。
3回も選手を見られるので嬉しい。

規定はどの選手も決められた同じ曲(ワルツやブルースなど)を、同じ動きをしてリンクを3周する。
どの選手もまったく同じ動きをするのだから、良い悪いが一目瞭然だろうと思っていると、どの選手もみな上手なので、どこが違うのか、どこで良い悪いが決まるのかさっぱり分からない。

オリジナルダンスは決められた曲調のうち2つか3つを使ってオリジナルな振り付けで2分半ほどをすべる。
オリンピックではパソドブレ、タンゴ、スパニッシュワルツなどが課題だった。

こちらは、さらに良い悪いが分かりにくい。
よほど明らかなミス(転んだり)をしない限り、僅差で得点が違うのはどういう訳でなのか、理解するのに苦しまなくてはならない。
解説の五十嵐さんの説明を聞くだけしか今のところ打開策がないようだ。

フリーは4分半ほどで曲も振りつけも自由だ。以前はボーカル入りの曲は駄目と言うことだったが、最近は認められているようだ。

フリーになると、どれがいいかというのは殆ど自己の好みではないかという気がする。
こんな曖昧な競技だから、ペア以上に判定が騒がれるのではないか。

フランスチームに点が入るとカナダが不正だと言う。
ロシアに点が入るとアメリカが不正だと言う。
イタリアに点が入ると不正だと日本が騒ぐ。
カナダに点が入ると不正だと韓国が騒ぐ。
かくして大騒ぎになり、みな同点1位になる。

それでもテレビにかじりついて、点数の出るのを震えながら待っている。
私のオリンピックは、アイスダンスの点数が出た時に終わる。


 

私はオリンピックを見るためにわざわざテレビを買い換えた。
オリンピックのアイスダンスを見るためだけに。

98年、長野で3位に入ったアニシナ・ペイザラー組にいつ頃から惹かれるようになったのだったか、もう覚えがない。ただ長野の時はもう既にファンだった。

でも私はファンとも名乗れないほどの気まぐれなファンで、日本にはもっと熱心なアニシナ組のファンが沢山いる。
それは不思議なくらい、彼らは日本で人気があるのだ。
かつてこんなに人気が出たアイスダンスのカップルはないと思う。
いやアイスダンス以外でも、このような人気は、フィリップ・キャンデローロ以外にはなかった。
彼らは、日本ではまるでアイドルか、ロックのスーパースターのような扱いなのだ。

 

長野オリンピックではグリシューク・プラトフ組が金、クリロワ・オブシアニコフが銀、アニシナ組が銅メダルだった。

長野のあとグリシューク・ペアが引退、そのあとの世界選手権はクリロワ組が優勝し、しばらくクリロワ組の天下が続くと思っていた。
だが、クリロワ組は引退、世界選手権のチャンピオンの座が第3位だったアニシナたちに巡って来た。

アイスダンスでは、第一位のペアが引退すると順次繰上げ当選という形で2番目だったカップルがチャンピオンになるという習わしだ。
私はついにアニシナたちの時代が来たと有頂天だった。

でも、そこから先が苦難の道だった。

 

長野でアニシナ組の次の、4位だったのがカナダのボーン・クラッツ組。
彼らは女性のボーンの故障で長野のあと、長く選手権などに出られなかった。
長野の熾烈な3位争いで破れた時、アニシナたちより上だったのではないかという話があった。

ボーン・クラッツはカナダのカップルで、どちらかというと、スポーツ的な要素の多い組だ。
優雅というより快活で早いステップや動きが特徴だと思う。

対するアニシナ・ペイザラーは、どこまでもドラマチックでロマンチック、激しく情熱的な世界を描くカップル。
どちらがいいかというのは、好みの問題になって来る。

日本人のフィギュアファンは、断然アニシナたちをとった。
日本人の美意識、日本人の美しいものに対する憧れ、日本人が頭に描く夢の世界を実現するカップルとして、日本人はアニシナ組を支持したのだ。
それは、私の彼らに対する思いと同じだ。
こんなに激しい思い入れを多くの日本のフィギュアファンに与えたカップルはない。

これほど熱い、情熱的な支持を得ているダンスのカップルなど、過去1組も存在しなかった。

 

だが世界の評価は違ったらしい。
昨年のシーズンのグランプリシリーズではフサルポリ・マルガリオのイタリア組が活躍、アニシナ組より上を行き、グランプリファイナルはとうとうアニシナ組は欠場に負い込まれ、その年の世界選手権でもイタリア組が1位、アニシナ組は2位に甘んじた。
私はその結果が信じられなくて、なぜ、なぜ、とどんなに悔しく思ったことだろう。
また今年のシーズンはボーン・クラッツが復活して来て優勝争いに加わって来た。
アニシナたちが世界選手権で常勝するだろうという私の予測は大きく外れた。

でもこのようなことも、過去幾度もあったことだった。

後から出て来た組が瞬く間に成長して、ベテランを追い抜いてしまう。
後輩が先輩よりあっという間にメダルをさらって行ってしまう。
思えば、アニシナ組よりもボーン・クラッツの方が世界へのランキングは早かったのだった。

あのウソワ・ズーリンを思い出すまでもない、かつてのトーヴィル・ディーンのような圧倒的なカリスマが存在しない今では、アイスダンスの各カップルにはそれほどの実力の差がないということなのだろうか。

活躍する時期によって、運のいいカップルは常勝し、運のないカップルは勝期に見放される。
それも時の運と言うことなのだろうか…。
ベステミアノワ・ブキン、クリモワ・ポノマレンコ、グリシューク・プラトフなどは運が良かったと今更思うのだ。
もしあの時代だったらアニシナたちは…。
でもそんなことは言ってはいけないのだろう。

僅差での熾烈な戦いを繰り返して選手はより強靭になっていくだろう。
男子シングルでもあのペアでさえも…

アニシナ・ペイザラーは、オリンピックのあとの長野で行なわれる世界選手権を最後に引退する。
日本の私たちにとっては、この世ならぬ夢を与え続けてくれたこのカップルこそが世界最高の、唯一のカップルであることに間違いはない。


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