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アヴィニヨンのピエタ 

Pietà of Villeneuve-lès-Avignon

 

アンゲラン・カルトン
Enguerrand Quarton
1415ころ-66

 

2017/10/8

 


ルーブル美術館 1455-56ころ 163×218.5

 

 

昔は作者不明とされて来たこの作品だが、最近ではフランス、アヴィニヨンで活躍したアンゲラン・カルトンに
帰せられているようだ。

 

カルトンという画家も詳細は不明らしく、ゴシック期の画家らしいが、作品数も少ないらしい。

 

 

 

さて、ピエタ…、

 

イエス・キリストの死を悼む母マリアと弟子たちが、イエスの遺体を取り巻き、嘆くという図は、
福音書記述にはないらしいが、キリスト教絵画の重要な画題のひとつになって来た。

 

「アヴィニヨンのピエタ」として名高いこの作品は、ピエタの最高峰として、

ルーブルにおいてつねに人々の感動を呼んで来た。

 

 

 

母マリアの膝に、弓なりになって変色した肢体を投げ出したイエス、
その足や手には十字架に貼り付けられた傷のあとも生々しく、痛ましい姿をさらけ出しながら、
受難のむごさを物語っている。

 

その肢体を膝に乗せ、深い悲しみをこらえながら我が子を神の子として拝む母マリア。

 

右側のマグダラのマリアは誇張された表現で嘆くのではなく、そっと涙をぬぐうことで、
よりいっそうの深い悲しみを我々に感じさせる。

 

左側で手を合わせる弟子ヨハネも、この深い悲しみの事実を厳粛に受け止めているかのように静かである。

 

 

左端の白い衣服の人物は寄進者だろうと言われている。
登場人物たちの嘆きを受け入れ、見守っているようにも見える。

 



弓なりにのけぞった無残な死体をさらすイエスという強烈なインパクトと、
そのまわりを取り囲む、この現実を深く静かに受け止めようとしている人物たちの宗教的な敬虔さが、
古くから、人々の熱い感動を呼んで来た。

 

それはたんにキリスト信仰や宗教を超えて、人々に訴えかけるものがあるからではないだろうか。

 

 

 

3人の登場人物の悲しみが、大事な人を失ったという、素朴な嘆きをじゅうぶんに表現出来ているからだろう。

 

決して大げさでなく、遠慮がちに、しかし尊い命を失った悲しみが深い感動とともにこちらに伝わって来る。

 

 

大事な人を失うという悲しみは、誰にも共通するものだからだ。

 

 

真摯で熱い素朴な信仰心が、この作品を、無名の画家の作品であるにもかかわらず、
普遍的な感動を与えるものにしていったのだろう。

 

 

 参考 西洋絵画の281人 美術手帖 美術出版社 1995年

 

 

 

 

 

 

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