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Paolo Veronese

パオロ・ヴェロネーゼ

 

カナの婚礼
The Wedding at Cana

 

1562-3年

 

 

ルーブル美術館

 

666×990cm

 

 

この作品はルーブル美術館の中で、「ナポレオンの戴冠」を凌いで一番大きな絵であるらしい。

 

それでなるべく大きい画像を探してみた。

 

大画面に無数の人物を巧みに配し、均整の取れた遠近法で破綻なく仕上げている。
見るものを圧倒するような、豪華絢爛な当世風俗絵巻という感じだ。

 

 

 

 

タイトルになっている「カナの婚礼」はヨハネ伝(ヨハネによる福音書)の第二章によるもの。

 

マタイ、マルコ、ルカの共観福音書には出て来ないヨハネ伝だけのエピソードだが、とても有名だ。

 

イエスと母とその弟子たちがガリラヤのカナの家の結婚式に呼ばれた。

その最中にぶどう酒がなくなってしまい、困っていると、イエスがぶどう酒の甕に水を入れろと命じた。

すると、水はぶどう酒に変わっていた、という奇跡譚。

 

奇蹟によってイエスの神性を表現するという福音書の常套手段である。

 

 

 

が。

 

この絵ではそんなイエスの奇跡や神性などはもはやお構いなしである。

 

イエスがどこにいるのかも分からない。

 

主人公だから多分真ん中であろう。

 

確かに絵の中央にひとり、まぶしげな後光がさしていて、かしこまった、神妙な顔つきの人物がいる。

 

ただ、神妙なのは彼一人だ。

 

彼はそこに埋もれるように座していて、どうしてよいものかすっかり困惑しているようでもある。

 

このあまりにも大勢の着飾った人々の中で、所在無げに居心地が悪そうである。

 

 

 

そのほかに登場する無数の人物たちは、思い思いに喋り合ったり、奏楽をしてみたりと、
それぞれが手前勝手に振る舞っていて、豪華な宴席の様子ばかりが目立っている。

 

 

大体、聖書では婚礼の場には、こんなにたくさんの人物がまずいないはずだ。

 

イエスの時代、結婚式といってもいたって質素なものだっただろう。

 

ぶどう酒さえ満足に用意できないくらいだったのだから。

 

 

 

この絵は、もはやイエスの奇跡を描いたものではなく、当世の風俗画なのだ。

 

ここに描かれている人物たちは、実在の著名な王や王妃、当時の美術家などもいるそうだから、

イエスの時代の時代考証などはお構いなし、イエスの奇跡もまるで絵のテーマではないらしく、


ただ盛期ルネサンスの時代(16世紀)の貴族のゴージャスな風俗を活写した、当時の宴席を

あるいは事実以上に豪華に再現してみせた、壮大な饗宴の風俗図になっているのだ。

 

登場人物たちの身につけている高価そうな衣装、宴席に奏楽師たちを呼ぶ贅沢、
ローマ風の壮大な背景、見ているだけで贅沢な気分になって来る、この気分を楽しみ味わう絵だろう。

 

現代から見ると、16世紀にタイムスリップしたような、当時の貴族の贅沢な暮らしを垣間見るような、
そんな贅沢気分を満喫出来る絵だと思う。

 

 

 

 

実在の人物が描き込まれているそうで、イエスの前にいる楽師たちのうち、
右の赤い服を着たチェロを弾く人物はティツィアーノ、
それからバッサーノ、ティントレット、そして左の白い服の人物はヴェロネーゼ本人だという。

 

 

こうした豪華な風俗図は、宴席の図なので修道院の食堂に描かれたらしいが、修道士たちが
自分たちは質素な食事の場ながら、こうした豪華な王族や有名人物たちが登場する絵を楽しんでいた

そうだ。

 

この絵はのちにナポレオンによってフランスへ強奪され、ルーブルに収められたのだという。

 

いかにも壮大なものを好みそうな、自己顕示の強そうな権力者好みの絵だという気がする。

 

 

だが16世紀はすでに宗教改革が断行されていた時代、このような絵はカトリックの権威の象徴としても
描かれたのかもしれない。

 

 

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参考文献 朝日新聞社 週刊朝日百科 世界の美術47 昭和54年

 

 

 

 

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