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Albrecht Altdorfer
アルブレヒト・アルトドルファー
The Battle of Alexsander
アレクサンドロス大王の戦い
1528-29
2017/3
ミュンヘン アルテ・ピナコテーク
この圧倒的で雄大な群像図を描いた
アルブレヒト・アルトドルファー(1480頃~1538)は、
ドイツ、ドナウ派の画家と言われている。
16世紀、後期ルネサンスの画家で、ドイツで言えばデューラーやクラナハ、イタリアではミケランジェロや
ラファエロなどとほぼ同時代、と言えるかと思う。
彼は西洋絵画史上、初めて純粋な風景画を描いた先駆者とも言われている。
そう思ってこの絵を見てみると、このものすごい兵士たちの大群が戦いに明け暮れている図も、
上空の青い空に渦巻く雲、その下に聳えるドイツ風の山々、そしてそこに点在する城など、
背景はほとんど風景画と言ってもいいようなドイツの情景を描出していることが分かる。
絵の下半分に描かれている無数の兵士たちの合戦の様子は、凄まじいまでの物量で、
その兵士たちの数は数知れず、一説には一万人以上が詳細に描かれているそうだ。
この作品は紀元前のマケドニアのアレクサンドロス大王が勝利したイッソスの戦いを描いたもの、
ということだが、その兵士たちの軍装は明らかに16世紀の当世のもの。
馬の装備や旗印や、兵士たちの甲冑も、明らかに時代を無視して、現代(当時の)ものを
描いている。
それが、当世の流行というか、常の描写だったのだろう。
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この絵はしばしば幻想絵画としても扱われる。
絵の下半分の、隊列を作って山から続々と降りて来る無数の兵士たちの、克明で、執拗なまでに
詳細を極めた描写、そしてまさに緊迫した闘いの場面が繰り広げられているにも関わらず、
それとはまったく無関係のように、絵の上部には青々とした空が雲に覆われて広がり、
その下には湖か海がこれもまた青を基調として静かに広がり、
その手前にはドイツの山城、山に作られた城々が、独立した風景画として見てもいいくらいに、
丁寧に描写されている。
確かに、下部の凄まじい戦いの場面と、上部の静かな風景の描写という相反するものが、
ひとつの絵画の場面にひとまとめに描かれていて、それが不思議なムードをかもし出している。
闘いの場面であるのに静謐で、ひとまとめに闘いすらが風景の一部になっている。
それが、ダイナミックでいながら緻密、劇的でありながらどこか現実離れしたロマンを感じさせる、
まるで幻想の風景を見ているような気持ちにさせるのではないかとも思う。
無数の兵士たちの群れる戦いの場が、どこか幻想の光景にも見えて来るのだ。
絵の画面上部に配された説明のパネルが、よりいっそうこの光景をクールで、
幻想性を強調しているようにも思える。
パネルの両翼に翻る幕と、パネル下に垂れ下がった引き手のような紐、それさえも
この光景を幻想的にしている一因のような気がしてならない。
絵の右下側。
さて下部の戦いの場面を中心に見てみれば、
無数の兵士たちがそれぞれ
詳細に描かれていることが分かる。
それぞれが目印の旗を持っていたりと、日本の合戦絵巻や、合戦図屏風などを彷彿とさせる。
兵士の甲冑や装束もじつに丁寧にひとつひとつこまごまと描かれている。
(但し、紀元前の風俗ではなく、当世16世紀の装束だ)
ディテールを見ると、モブシーンの楽しさがいっぱいだ。
絵の左下側。
やはり戦の正装をした兵士たちが、重厚に装備した馬に乗り、槍を持ってそれぞれが戦い合っている。
実に精緻・精密に細部まで細かく描かれていて、この下部分の戦いの場面だけを見ていると、
当世16世紀の戦装束や、戦いの方法はこんなものだったかと臨場感を持って迫って来る。
これは大きな画面で見た方がより臨場感があるだろう。
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参考 講談社 週刊世界の美術館 アルテ・ピナコテーク 2000年
西洋絵画の281人
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