Exhibition Preview : My Favoutite Arts

 

The Dutch Royal Collection
オ ラ ン ダ 王 室
―知られざるロイヤル・コレクション―

2000/6/12

京都国立博物館
2000年4月18日〜5月28日

少し旧聞に属するのだが、やはり、「オランダ王室」という展覧会について、書いておこうと思う。

 

日欄交流400周年記念特別展覧会、というのは、いろいろな地方で盛んに行われているようだ。
件の「フェルメール」も、その一環だった。
この「オランダ王室 ―知られざるロイヤル・コレクション―」も、同じく、日欄交流の400周年を記念して行われたもの。

おりしも天皇が欧州旅行に行かれ、その最初の訪問先がオランダであった。

先の戦争で、日本はオランダ領インドネシアを攻め、占領して、オランダ人の多数を捕虜とし、悲惨な目にあわせたという。
天皇のオランダ訪問の際、そのことが新聞でも多く取り沙汰された。

オランダは日本に解体新書を示して日本の近代化を促した、日本にとってはいわば恩人的な国として、人々に認識されていると思うが、長い交流の歴史の中で、このような悲しむべき事実もあった。

また、パリで日本人学生が、オランダ娘の肉を食う、という事件もあった。

オランダ人が、日本に対して敵愾心を持ったとしても、なんら不思議はないだろう。また、そうであっても、日本人は文句が言えない。

にも関わらず、悲しい過去を超えて、より良い、より深い結びつきを模索するかのような、今回の400周年の特別展覧会の催しは、だから何だかとても意義のあるもののような気がする。
展覧会は、当然オランダの各団体の協力があるからだ。

「フェルメール展」を見れば、オランダの市民生活の始まりや、絵画の質の高さなど、オランダの市民文化に触れることが出来る。
また、この「オランダ王室」を見れば、王国としてのオランダの国事情がよく分かる仕組みになっている。

見て楽しいこのような展示が、一国を深く理解する手立てにもなっているということは、大変ためになる、教育的な展示だとも言えるだろう。

 

さて、この展示を見て、一番深く感じたのは、オランダは王国であったという事実だ。
私は、大変不勉強で、というより、非常なばか者であるので、オランダが王国であったという認識が、この展示を見るまで、さっぱりなかったのであった。
そして、今は英国と同じ、女王の治世で(?)、ベアトリクス女王という方が在位している。というか、19世紀末から現在まで、オランダは女王の国なのらしい。

王国であるから、王(女王)の結婚相手は、当然どこの馬の骨であってはいけないので、やはりそれなりの血筋の相手でなくてはならない。
だから、他国の王女などを嫁に貰う。
そういう、他国から嫁いだ王女が、嫁入りの時に持って来た嫁入り道具などが、展示されているのだ。

 

ロシアから来た王女の嫁入り道具は、机の上の文房具だとか、宝石箱だとか、そのような類いのものなのだが、嫁入りのために贅を尽くして作られた、お揃いのブルーの大理石が目を奪わんばかりの豪華なもの。

また英国から嫁入りしたメアリー・スチュアート、というどこかで聞いたような名前も出て来る(同姓同名が多かったのだ)。
こうした他国から来た王妃たちの道具類は、すべて芸術品と言ってよいほど丹念に作られ、またきれいに磨き上げられて残されている。

王国であることを偲ばせる展示は、印蝋(?)がぶら下げられた条約の取り決めを書いた文書。

何世紀前のものか分からないが、手書きの文書に蝋ではんこを押し、それが文書にぶら下げられている。
何らかの戦争のあと、条約が取り決められた時のものなのだろう。
英国ではマグナカルタが博物館に残されているそうだが、そういう類いのものが、ここにも残っているのだ。

 

日本とオランダの交流を示す展示も沢山あった。
日本から伊万里焼が輸出され、それが、金の絢爛豪華な装飾を加えられて、独自の工芸品に変化している(燭台などになっている)。
まさに日欄の文化の豪華な融合かもしれない。

この展覧会の最大の目玉は、しかし、実は、いくつかの部屋に分かれている展示室の中ほどにあった、"晩餐会のテーブルセット"の部屋である。

大きなテーブルが(目算約10メートル)室内の中央にでんと据えられ、そこに燭台と花がいくつも置かれている中、それぞれの席に、皿、フォーク、スプーン、コーヒーカップ、グラスなど、それぞれの時代の晩餐会のテーブルを飾ったであろう食器たちが、ぴかぴかの保存状態で、今まさに晩餐が始まるのを待っているかのように、テーブルの上に据えられている。

自分もこの晩餐会に招かれ、ここに座って料理の出て来るのを待ちたい気分になったものである。

部屋の四隅には、やはり伊万里焼をアレンジした大きな燭台が置かれ、テーブルの上方には、豪華なシャンデリア…。

陶然とした気分になってしまうのは無理もなかろう。

 

ルキノ・ヴィスコンティの映画に出てきそうなこの晩餐会のテーブルには、思わず、ため息が出そうになった。

東京国立博物館でこの展覧会が開かれた時、天皇皇后両陛下がごらんになり、「楽しい部屋を作られましたね」と仰ったそうだ。
皇太子夫妻や秋篠宮夫妻も見学されたそうだ。

 

公定オランダ語約聖書(洪水聖書)

オランダが洪水で被害を受けた時、王宮が復興に協力してお金をつぎ込んだそうで、のちそれを感謝して、市民がこの豪華な聖書を作り、王宮に献上したそうだ。

いつの時代とか、どの市だとかいうことは忘れてしまったが、市民と王宮が密接に繋がっていたという証のような聖書だ。

サイズが大変大きく、縦50pくらいはあったと記憶する。

時間がなくて、あとは小走りに部屋をかけ抜けただけだったのが、惜しいことだった。
こんなに沢山の展示があるとは思わなかったのだ。
オランダであるから、レンブラントの版画もあったのだ。

しかし、まあいい。
日欄交流400年というのは、今年中、これからもどこかで開かれることだろう。
この機会にオランダの歴史に触れるのも意義のあることだと思う。
こういう機会でもなければ、勉強しようという気になど滅多にならないだろうから。


参考資料 毎日新聞「オランダ王室展」特集ちらし

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