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2017京都国立博物館 新春特集陳列

特集陳列 皇室の御寺 泉涌寺
特集陳列 生誕300年 伊藤若冲

2017/2/3

まだ1月の初めくらいに行った、京都国立博物館の展示。

意外と見どころが多く、驚いた。

 

泉涌寺の楊貴妃観音は、多分お寺そのものでは逗子かなんかに入って、
あまり近くに寄って見られないような気がするが、
(実際に行って見たことはないのでいい加減な推測)
博物館ではガラスもなく直接展示されていて、照明も明るく、
がぶって見放題だった。

 

 

正確には観音菩薩坐像という名称だが、楊貴妃観音という名がついたのは、
美しかったかららしい。

中国かどこかから来たもので、日本製ではないようだ。

一番大きいのが光背で(というのかな?かぶっている冠かもしれない)、
それをつけている頭も大きい。

胴体が小さく、はじめ遠くから見た時は、半身像なのかと思ったくらいだ。
でも、座っている像で、ちゃんと座っていて足もあった。

 


これは仏像写真集に載っていたもの


確かに顔が美しい。

異国風の美しさだけれど、とにかく美しい。

写真で見ていた時には、口の上に髭が描いてあったような気がしたが、
実際には見えない。

とても美しい女の人の彫刻、という感じで、やはり観音は女性として表現されるのだと思った。

写真で見ていたよりずっときれいだ。

多分、写真では常にうつむき加減で写さざるを得ないからではないかと思う。

実際に展示されていたものは、下から上へ見上げるという感じで、
照明はものすごく明るいし、バックも白い壁なので、写真とはまったく違う印象を受けたのだ。


奈良の秋篠寺の伎芸天も美しいと評判で、さる人々を惑わして来たようだが、
確かに美しかったけれど、ちょっと太めでいらっしゃる。

こちらの楊貴妃さんは人としたらスケール的に狂いがあるが、
分かりやすいきれいさだ。

 

ただ、伎芸天の方はどこか天上的な、女性とか人間を超えた美しさのように思える。

泉涌寺のは割と世俗的だ。
伎芸天の方がこの世離れしていると感じた。


眷属としてなんとか神像とかが何体かあり、神像というのが
珍しいというか、なかなかあやしかった。

神仏習合なのかもしれない。

そのほかにも仏像がかなり展示されていたのだが、忘れちゃった。
あんまり一気に見ると覚えきれないよ。



書跡のコーナーでは、国宝のなんちゃらという、多分書状だろう、
軸装されたものが展示されていたが、
それよりも法華経を書いたお経の巻物?というのかな?それがすごかった。

そのころには印刷なんて技術はないだろうし、
あれは全部手書きだろう(当然だよなあ)。

それを一字一句間違えないで楷書で延々と書いてあって、あれは圧倒される。

情熱がないと、それと共に書を丁寧に書く冷静さもないと
書けないよなあと感嘆しきりなのであった。




…で、気を取り直して若冲特集へ行く。
 

 

若冲は、モノクロの墨絵と、彩色のきれいな軸ものがいくつかと、
「玄圃瑤華」「乗興舟」、

そして市美術館で出ていた「百犬図」「石燈籠」「過疎涅槃図」まで勢ぞろい、
何となくこちらの方がお得感があった気がする…

それで他のも見られて520円だし。


しかもキャプションがむちゃくちゃ気合が入っていて、びっくりだ。
学芸員がさぞ気張ったんだろう、読むだけで面白かった。


例えば過疎涅槃図のキャプションは「青物問屋の真骨頂」
隠元豆双鶏図には「ユルくていいんです」など


この若冲ミニ特集だけの図録も売っていた。

普段図録は買わない主義にしていたけれど、620円くらいで安かったから、買ってみた。

 


これは図録の裏



以下、写真はその図録をカメラで写したものだ。



「玄圃瑤華」はノートみたいなものだから、展示する時は おのずと1ページしか開けないのだった。

市美術館の時にゴネて恥かいた…。


図録には全部写されている

今回展示されていたのは鶏頭と蛙のもの

 



乗興舟は、タイトルを除けば「伏水口」から始まって、
ずらりとほぼ全部広げられていて、むしろ市美術館よりも丁寧な展示だ。

やるな京博…
キャプションは「モノクロームの色彩」 


ざっくりと全部

乗興舟は拓版画で白黒反転していて、空が黒く描かれ、そこに大典の漢詩が書かれている。
若冲の友人、相国寺の僧侶・大典との淀川下りを描いた、合作かもしれない。


最後の部分



京博のサイトで出品一覧を見ていたら、河豚図とか、
蝦蟇蛙と河豚の相撲図とか、蟷螂とか、
やたらに動物系ばかりみたいだったのであまり期待していなかったが、
意外と面白かった。

 

   

河豚の図なのだが、左の方は体に目のような模様がついている…
右側は河豚と蝦蟇蛙が相撲を取っているちょっとユーモラスなものだ


これは京博で何度も見たもの
鶏頭の茎がくるりと一回転し、その上に蟷螂が鎌をふるっている
若冲らしい絵柄だ



全く見たことのなかった彩色絵もあった。「垣豆群蟲図」↓
キャプションは「人間社会の縮図かも」


例によって気持ち悪い虫などが…毛虫やら蜘蛛やら…沢山いて、
そのど真ん中に蟷螂が得意げに鎌をふるっている。

虫の苦手な私にはつらい絵だけれど、でも背景の色がシックで、
そのためにどぎつさを感じず、この若冲独特の背景の色が絹の色なのだろうか…

落ち着いた雰囲気を出しているのだった。


もうひとつ見たことのなかった絵「大根に鶏図」



これは大根の葉を鶏がついばんでいるという図だ。
いっけん大根とは分からない。

大根は書いてなくて、大根の葉っぱだけが書いてあるのだ。

この鶏の鮮やかな色や、尻尾を振り上げたポーズがとてもきれいで
若冲らしさという点では若冲ファンが気に入るだろうと思った。

京博さんのキャプションは「青物、好きらしいですよ」

両方とも絹地の背景がうっすらと上品できれいだ。
この絹地の色が若冲の好みだったのかもしれない。

あと、墨絵では、六歌仙図なんかも描いているのだが、六人とも完全に三角形の構図。

きっちりと人物が三角形に収まっている。

 

石燈籠図屏風も展示されていた。幻想的な風景で、石燈籠は点描されている…
不思議な静けさ、あり得ない光景。

見るたびに不思議さが増していく。

そのほか百犬図、過疎涅槃図などおなじみの作品も展示されていた。

京都らしい、若冲特集だった。

 

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