Exhibition Preview

特別展覧会 開館110年記念

美のかけはし
名品が語る京博の歴史

同時期の平常展の特別展示

2006年7月15日〜8月27日
京都国立博物館

06/10/17

京都国立博物館が開館して、今年で110周年という中途半端な記念の年であることから、この特別展覧会が開かれた。

常設展示を本館へ移動させただけ、と悪口も言われたが、まあそのような感も無きにしもあらず、チラシを2種類も作ったわりには地味な展覧会で、しかも客もすいていた。

だがしかし、国宝や重文なども展示されており、国立博物館のファン(いるのか)なら非常に楽しい展覧会であった。

ただし、前期・後期で入れ替えがあり、目当てのものが一時に全部見られたわけでは無い。

私の行ったのは前期で、風神雷神、天橋立などは見られたが、源頼朝像、瓢鯰図、孔雀明王図(仁和寺)などは見ることが出来なかった。

有名な瓢鯰図が見られなかったのは残念というより、なめとんか。と腹が立った。

展示は、国立博物館の立地している東山の歴史、博物館の成り立ち、名品のコレクション、寄贈者からの収集品、寄託品の数々、文化財保護のようす、お宝発掘、などの部門に分かれていた。

章立てになっており、

第一章 諸行無常 東山の光りと影、
第二章 大仏出現 秀吉の夢の跡、
第三章 京博誕生 文化財保護の原点、
第四章 魅せる 名品との出会い
第五章 あつめる 収蔵品の成り立ち
第六章 護る みやこの宝蔵
第七章 甦る 文化財の総合病院
第八章 究める 見いだす喜び

この章ごとのタイトルを見ても分かるとおり、わりと自画自賛的な展示で、作品についている解説も自画自賛で溢れていた。


これでも国宝

博物館の立地する東山の歴史を追った展示では、後白河法王の肖像や法住寺(博物館の向かい)殿跡からの出土品、平家物語関連。
法住寺の跡から出たという甲冑や鞍金具などが珍しい。

秀吉関連では豊国神社祭礼図屏風を楽しみにしていたが、一隻ずつの入れ替えだったので、有名な方は後期の展示で見られなかった。
ここでもなめとんか、とちょっぴり腹が立った。まさか豊国祭礼図までが前期・後期で分かれているなんて思わなかった。

しかし、方広寺の大坂夏の陣のきっかけになった、有名な梵鐘の拓本とか、秀吉がわが子のために作らせた子供用よろいとか、直筆のねねに当てた手紙、当時の天皇(何天皇か忘れた)が、朝鮮出兵を思いとどまるようにと進言した手紙などが展示されていて興味深かった。大仏の模型もあった。開閉式になっていて、笑えた。


今回はおあずけ 伝頼朝像
まあ、前に見たのでいいか

面白かったのは、第三章の博物館の誕生のくだり。

宮廷建築家、片山東熊が設計した博物館の設計図がいくつか飾られ、最終的な今のデザインになるまで、いろいろな形を模索したことが分かったり、めちゃくちゃでかい図案(百分の一?)なども残されていることが分かったり、とても楽しかった。

中でも博物館ファサードの三角ペジメントに飾られている、技芸天と毘首羯磨(びしゅかつま)像の原寸大の摸刻というか原型が展示されていたのにびっくり。ものすごく巨大な像なのだ。

屋根の上にあるからそんなに大きいとは普段感じないが、近寄って見ると巨大なのだ。
木製無彩色で、茶色い木肌そのままの和洋折衷というか、国籍不明の神像はモダンというのか何というのか、実に京都博物館らしい和洋折衷ぶりが面白かった。


おなじみさん

名品コーナーでは、いつもは常設展示でおなじみのお隣さん、三十三間堂の千手が出張。晴れて脚光を浴びていた。

雪舟の天橋立図もあって久しぶりに再開したが、何と言っても風神・雷神図がやっぱりウリ。

こちらも久しぶりのご対面だったが、前にはこれを持っている建仁寺そのもので見たのだが、博物館の方が明るくて良く見えた。
こんなに大きかったかなとも思ったが、こんなものなのだろう。
屏風のようにではなくて、平たく伸ばして展示していた。

とにかく、宗達の筆はかなりいい加減というか、大ざっは。

雷神の右手が間違っているし、風神の持っている袋の描き方もかなりいい加減なのだ。明るいからいい加減さがよく分かってしまう。
でもそれがすごい。

あまり考えて描いていない。というより、何も考えていないのでは。とまで思わせてしまう軽みの極致。

いやあ、良かった良かった。


トータルリコールもびっくりだ!

そのほかでは、第六章の「護る みやこの宝蔵」というコーナーが注目に値した。

私が勝手に「面割れ地蔵」と呼んでいた「宝誌和尚立像」の前に人だかりが出来ていて、珍しいのでやはり人気者だった。

これは地蔵ではなく、中国の僧であるようで、実はその僧は観音の生まれ変りだったという故事に基いて作られた、珍しい仏像であるらしい。

私は初めてこの像の写真を見た時、写真のトリックだとばかり思っていた。
が、常設で実物を見たら、写真のとおりに和尚の顔が割れて、中から観音の顔が見えている、という作像だったのでぶっ飛んだ。

そのほか、有名な明恵上人像が展示、のはずだったがこれも後期。再びなめとんか、という罵りの言葉が口をついて出た。
(しかし、前に平常展示で展示されていたのを見たことがあるので、何の問題もない。)


ほんの少しの赤みがおしゃれ

「護る みやこの宝蔵」のコーナーでは「信長公記」の実物も展示されていた。
例の、太田牛一が書いた織田信長の記録で、建勲神社に置いてあったやつだ。

牛ちゃんは「信長の棺」で脚光を浴びているのでタイムリーである。
しかも、秀吉のコーナーでも牛一が書いた記録が展示されていたから、当時の年代記の書記係だったのだろう。

そして、信長ゆかりの刀「伝 左文字」も展示されていた。これは、信長が桶狭間の戦いで、今川義元から分捕ったといういわれがある刀ということだが、はて。
でも、私は既に常設でこの刀を見ている。

 

このように、常設で見ることの出来たものが多かったり、前期・後期で見ることが出来なかったりと、不満もないことはないが、それなりに楽しめたのも事実だった。


平常展の特別展示

1. 文殊菩薩騎獅像(金戒光明寺)

なお、この期間の常設展示に、金戒光明寺の文殊菩薩像が修復を終えたので公開されていた。

かなり長い期間公開されていた。文化財指定などは何もないがとてもビビッドで、今にも動き出しそうな文殊さまで、すっかりファンになった。

なお、修復のさい、レントゲンで胎内(頭の部分)になにがしかの納入品が見つかったが、頭部の構造により、取り出すことが出来なかったそうだ。レントゲン写真だけ展示されていた。

この文殊菩薩は騎像で、白い獅子に乗っている。獅子には彩色がよく残り、巨大で迫力がある。
文殊様は獅子からはずすことが出来、修復の際には獅子から降りておられた。

獅子の乗り口(?)には蓮の花が左右に足元に据えられ、そこに足を乗せて獅子に乗り降りするらしい。右手には剣を持ち、左手に長いくきの、ほおずきのような花(?)を持つ。これには彩色が施され、とてもビビッド。すごく可愛いデザインの騎像だった。

☆この像は今でも(06/10現在)展示されており、もしかして常設のレギュラー入りか?

2. 大威徳明王(醍醐寺)

その前の常設には、醍醐寺の大威徳明王が修復を終えて、2階で特別展示されていた。

これは、上醍醐に他の五大明王と共に設置されていたもので、五大明王は修復などを繰り返されたらしく、時代がまちまちだということだ。

その中で大威徳は製作当初のもので古かったらしく、博物館で修復されていた。

形は東寺の明王を忠実に写したもの。ほぼ頭身大の明王で迫力満点。時代は平安以降だろう。

修復のようすが写真で報告されていた。それによると、大威徳は乗っている牛と完全に分離出来て、はずしてメンテナンスされていた。
木像だけれど、ちゃんと乗ったり降りたりしているんだと、妙な所で感心した。

大威徳は足が6本あり、それを行儀よく揃えて牛に乗っているのがかわいい。
そして顔が三つ、手が6本あり、それなら三人の像にすればいいのに、と思うが、胴体だけがひとつなのだ。ずいぶん不自由そうな体だ。

この明王は、特別公開のお披露目を終えると、醍醐寺の人たちによって山を登り、上醍醐にまつられたそうだ。

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