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Exhibition Preview

祇園祭・錺職人の技展「月鉾の美術工芸品」

2001年9月1日〜9月11日 京都芸術センター 大広間

05/10/14

少し遅くなってしまったが、注目に価する展示会なので、紹介しておく。

京都芸術センターというのは、元明倫小学校で、京都の町のど真ん中、まさに鉾町の真ん中に位置していた小学校だった。

少子化による統廃合で廃校になったが、その素晴らしい建物は残され、京都芸術センターとしてさまざまな催しが行われるようになった。


入り口。おしゃれ 

この元明倫小学校で、祇園祭の鉾のひとつである、月鉾の工芸品を展示する催しがあった。無料である。

祇園祭そのものでは、鉾に上るのにお金がいったり、喧騒で隅々まで見られないのが通常なので、こうして、鉾のお飾り品をゆっくり見ることの出来る展示は大変ありがたい。しかも無料。
ということで、チャンスとばかり、もぐり込んで来た。

残念ながら、工芸品をひとつひとつ、近くに寄って写真に撮ることは禁止されていた。かろうじて部屋の外から、全体を写すことだけ了解を得たのである。


フラッシュなしだとぶれてしまった
でも実際はこれくらい、明るい会場でした。

会場は、靴を脱いで下駄箱に仕舞い、畳の上に上がって展示を見る。

ここは、小学校のもと作法室だったのだろうか。ウチの小学校にも畳敷きの作法室があったから。

とりあえず、部屋のしつらえにうっとりする。天井が素晴らしいのだ。

階段や廊下にも見るべきものがあり、懐かしく感じられ、それだけでも楽しかったのだが、まあそんなことよりも月鉾の工芸品である。

 


祇園祭の時の月鉾である。
こまがた提灯が月の模様である。

祇園祭の山鉾は、本番の祇園祭で使うとき以外は解体して倉庫に保存されているのだが、山鉾はすべて組立て式で、小さくばらばらに出来るようだ。

この展示でも、バラされた鉾は柱状で、どれを見ても単に長細い柱でしかない。
その柱に装飾が施され、飾り金具がくっついている。

どこをどう組立ててあの鉾にしていくのか、柱を見ただけでは見当がつかないというアリサマだ。

 


祇園祭の時に写した屋根の裏の装飾

月鉾で最も有名なのが、円山応挙が描いたという、屋根の裏がわの装飾図である。

正確に言うと、破風軒裏絵(けらば)、「金地著彩草花図」である。

山鉾というと、左甚五郎が作ったという鯉の彫刻だとか、いい加減ないわれが多いのだが、月鉾のそれは伝・応挙でもなく、ちゃんと円山応挙筆、ということだから本物なのだろう。
天明4年(1784年)作と、年号まで特定してあるから、きっと本物だろう。

金地に緑の草、菖蒲の紫など、鮮やかな色が鮮明で、美しいものだった。

 


鉾頭 よく見えない

もうひとつ月鉾で有名なのは、鉾頭の月である。

鉾の、何十メートル先のてっぺんに、鉾のシンボルがついている。月鉾ではそれが三日月である。

この三日月は、現在のもので3代目のようだ。古くなれば新しく作り、取り換えていたらしい。

すごいのは、その古い鉾頭をそのまま残してあることで、それが、展示してあった。

一番古いものは元亀4年(1573年)のもので、それは三日月の両端が折れて、取れてしまっている。
でも、それをきっちりと今まで残している、ということがすごい。私は大変感動した。

鉾頭と言うものは、きっと、神様のような扱いなのだろう。みだりに捨ててはいけないのではないか。
いや、やはりそういうことでなくても、京都の人は、こういうものは捨てないのだ。きっとそうだ。残しておくのだ。

鉾頭は3つとも展示されていたが、銅製金鍍金(どうせいきんときん)ということである。鍍金というのは、どういうものなのか分からないが、金を鍍金してあるのだろう(曖昧)。

*なぜ作った年号が分かるかというと、例えば鉾頭なら鉾頭の裏に、年号と、職人の名前が彫ってあるからだ。

 


右奥に月の鉾頭が展示されている。
手前の月鉾はっぴのおっちゃんは説明員

展示されていたもので、最も古いものが先ほどの鉾頭の1573年。新しいものは、天保6年(1835年)というクレジットがされていた。

天保6年に作られたものが圧倒的に多いことから、現在、山鉾巡行で、月鉾はこの時に出来たものを中心に使っていることが分かった。

それでも、すでに百年以上が経っている。さすがに歴史のある祭なだけあって、使っているものも古いのだ。
しかも、その保存状態がよい。

鍍金のものはきらきらに輝いているし、漆塗りのものはぴかぴかと黒光りしている。
丁寧に、大切に、大事に扱われて来たのだろう。
そして、祭に使う時は大胆に。
そのことも、感激だった。

月につきものなのがうさぎ。
というわけで、月鉾にはうさぎがそこここに顔を出している。

軒下や、柱のかげに兎の彫刻がくっついていたりする。白く彩色されているものもある。

遠目に見れば可愛いのだが、近くでよく見るとコワい。リアル過ぎて、小動物というより、獰猛な獣の顔をしている。
江戸時代の人の感覚は分からない。

そして、柱と柱を繋ぐ金具も大事なアクセントであろう。
ほんの小さな釘隠しの金具が、いちいち丁寧な細工の工芸品なのだ。

このようなこまごました、しかし、立派な工芸品が、あの鉾にひとつずつ丁寧に飾り立てられ、そうして、そんなことは知らぬげに、無造作に町中を巡行して歩く。

京の町衆の文化の豊かさ、見事さが、あらためてまざまざと感じられる。そんな展示だった。

前懸け、後懸けと呼ばれる、タペストリーだけは消耗するので、平成になってからの新しいものになっていた。


京都芸術センター 京都市中京区室町通蛸薬師下ル山伏山町

京都芸術センターそのものは、室町通に面していて、山伏山を出す、山伏山町にあるようだ。
昔の小学校の面影をそのまま伝える、なつかしい佇まいだ。

土色をした外壁が、何とも言えない暖かい雰囲気があり、いい感じ。

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