ART TOP | HOME 

Exhibition Preview

 

ギュスターヴ・モロー展

2019/12/27(8/23up)


あべのハルカス美術館
https://www.aham.jp/exhibition/future/moreau/

ギュスターヴ・モロー展
サロメと宿命の女たち

2019年7月13日(土)~ 9月23日(月・祝)


https://twitter.com/moreau_2019


NHKプロモーション
https://www.nhk-p.co.jp/event/detail.php?id=1461

ギュスターヴ・モロー展
サロメと宿命の女たち


我がワン・アンド・オンリー、

最愛の画家・ギュスターヴ・モローの展覧会をやっているので、
どんなに2級品であれど、行っておかなければと、念願の大阪のあべのハルカス美術館まで行って来た。







*モローといえばファム・ファタル、重度のマザコン…。

相変わらずこの切り口からでしか、 誰も語らないらしいのは、残念なことだ。



「日曜美術館」のモロー特集を録画したが、 相変わらず有名ゲストを3人も呼んでおきながら、
モローに関して言うことは、一片の新しい見識も何もない。


残念というか…、がっかり。

マザコンの上に、男性失格者扱いね…。
(まあ、このことはいつかあとで考えたい)



確かに生涯独身で、マザコンだったことも事実であり、 女性恐怖症のような部分もあるが、
恋人・アレクサンドリーヌ・デュルーの存在が明らかになってからは、
多少なりとも見解が変わって来たかと思っていたが…、

モローといえば、「宿命の女」の画家として、 その堅固な楼閣の中に閉じ込めておきたいようだ。


デュルーとは結婚をしなかったことも、 憶測を与えているのだろうが…。






それはともかく、
東京・パナソニック汐留美術館からの巡回で、

https://panasonic.co.jp/ls/museum/exhibition/19/190406/



大阪・あべのハルカス美術館に来た ギュスターヴ・モロー展。

 



チケット


恐らく、 ギュスターヴ・モロー美術館に保管されているものばかりで 構成されているのだと思う。



モロー美術館
https://musee-moreau.fr/






主だった有名作品は


・出現(サロメ)
・一角獣
・エウロペの誘拐
・バルクと死の天使


そして
・24歳の自画像






この自画像が展示されていたのが、収穫だった。
見られると思わなかったので。

ロマン派的手法で描かれているが、 こんなに若い時の自画像だったとは思っておらず、
堂々としていて、未来への期待感と、 自信とに満ち溢れているように思われた。



いちおう、 「出現」と「一角獣」「パルクと死の天使」
この代表作、3作品が揃っているので、 まあまあかなという感じ。

(モローに関しては、手厳しくなるのだ)





美術館の特性もあり、展示数は非常に少ない。
(16階で狭い)


その中で、売りの作品以外に、 掘り出し物の小品があるかもしれないとも思っていた。




サロメ

多分、このサロメあたりがそうだった。

大画面のサロメ(「出現」ほかいろいろ)は、 殆ど顔は分からないくらい、ぼかして描かれているが、
この小品では、くっきりした横顔、 しかも愁いを帯びた美しさで、
これだけ美しい女性像は、モローではあまり見たことがない。


それでも頭飾りやイヤリングで豪華に装飾され、 右端には、まさに斬首される瞬間のヨハネが描かれている。


この憂いは、悲しみなのか、満足なのか…、

まさにファム・ファタル(宿命の女)とは言える。

 



サロメ


サロメの習作がいくつか展示されていたが、 油彩によるこのサロメは、
「踊るサロメ」の一部を抜き出したような感じ。

こちらは本作同様、気品がある。



「出現」は、似たような作品が多いモローなので、 いつか見た気もするが

(ヴァリアントも沢山描いたので、その一つだったかもしれない)


もっと縦に長いカンヴァスだと思っていたが、 意外とサロメが大きく、
そしてヨハネの首が真正面に来るように展示されているので、
目の前で、浮遊するヨハネの首を見る感じだった。

迫力があった。


サロメが常にクローズアップされるが、 実物を目にして思ったのは、

ヨハネの恨みがましい目が、サロメを威嚇していて、 サロメが一瞬ひるみ、
それに負けまいとして、必死に抵抗しているように思えた。


サロメの肌は茶色く、むしろ土色をしていて、 美しいとは言えない。

死人の肌のようで、そこに豪奢な装飾を身に着け、 それが異様な雰囲気を出している。


あとは、背景の細かい装飾。

モローは、すべて金で装飾を施したかったらしいが、
恐らく彼は、装飾画家を目指したのではなかっただろうか、 というのが、私の推測である。



「セイレーンと詩人」という作品は、 タペストリーの下絵として描かれたらしいが、
四方に装飾が施され、まさに装飾豊かなタペストリーそのもの。

 



(不鮮明ですが)


むしろモローは、 画家であるより、工芸家の方が向いていたのではないか。
そしてそれを目指していたのではないかと思った。

時にモローに装飾過多で、型にはまったような絵が多いのは、 工芸家としての才が勝っていたような気がする…。






一角獣


クリュニー美術館にある一角獣のタペストリーから発想を得て、
描かれたこの作品が、そのこと(装飾工芸士向き)を証明しているように思うのだ。

主題はともかく、
女性が身に着けている衣服や装飾が、ここでも細かく縁取りされており、
細密描写によって、ジュエリーのような輝きを作品に与えている。

 



もうひとつ同じ主題の「一角獣」


わざとであろう、 女性と一角獣を並列して描くことにより、 奥行きをなくし、装飾性を強調しているように思われた。





パルクと死の天使



この有名な作品は、説明によると、 アレクサンドリーヌ・デュルーを亡くした時に、 失意の中で描かれたというが、
描写としては、まるで表現主義のようで、 弟子のルオーの影響があるのではないかとさえ思えた。

モローは晩年、荒々しいタッチにも手を染めてゆくのだ。




そしていかにもファム・ファタルらしい作品としては─

エウロペの誘拐


有名なギリシャ神話を題材にしているが…
通常、単なる牡牛として描かれるゼウスに人の頭を与え、 略奪される(手籠めにされる)筈のエウロペは、
まるでゼウス(ユピテル)を誘惑しているかのような、 挑むような眼をしている。

気持ちの悪いグロテスクな絵だ。

半身半牛のゼウスの異形の姿といい、 エウロペの眼差しといい、 見てはいけないものを見たような気になる。

どちらかといえばホラー映画のようだ…。




ヘラクレスとオンファレ

似たような題材で、女性性の勝利のような絵柄になっているが、 描写は古典的である。




*モローにとって、ファム・ファタル(宿命の女)は、 一種のアイコンであり、文字通り象徴だと思う。


「詩人」が、オルフェウスであれ、サッフォー(女)であれ、
聖なる存在として描かれているように、 ファム・ファタルは、悪なるものの象徴として描かれる。

それはゼウス(ユピテル)も同様であって、 女という性を悪として捉えているというより、 それはシンボルなのだ。






エヴァ(アダムとエヴァの)の模写が展示されていたが、
イタリア・ルネサンス絵画の模写だと思うが、 そのせいもあり、堂々とした肉体描写が目的のようで、
エヴァといえば、モローなら 典型的なファム・ファタルとして描きそうなのに、
そうしないということは、必ずしも、 女だから、ということではないのだ…。

もしかしたら、エヴァを母性として捉えているのかもしれないが。


そして、先のエウロペでは、普通に、 牡牛に略奪される犠牲者として、描いている絵もある。


(参考)

エウロペの略奪


メタモルフォーズが入ると、そこに邪悪な属性が出て来る…そんな風に考えるのだが…。


「ユピテルとセメレ」では、 怒れるユピテルはまるで邪悪な魔王のようだし、
セメレは、そこでは憐れな犠牲者である。



*モローは画家の誰もがそうであるように、 多様であり、一括りにレッテルづけは出来ないと思う。




*ほかには、特に目を惹かれたのは、やはり水彩画だった。

水彩を描く時、モローの色使いは鮮やかで、豊かで、 ごく自然な筆運びをしている。

塗られた色彩は、古びているにもかかわらず、 宝石のように輝いている。



水彩に力量を発揮した画家でもあった。

ほんの少しだが、水彩画を見られたことは、うれしいことだった。





撮影コーナー
一角獣の前にソファが…


*図録を買おうか迷ったが、作品が少ないので、やめることにした。



お土産のクリアファイルは



普通タイプ(一角獣)

これは見開きで

 





ごちゃごちゃと作品が並んでいるのがモローらしい。




モローの、
今さらなファム・ファタルを描くに至った内面を掘り下げるより、
純粋な画家としての技量を、もっと認めて欲しいと思う。



ギュスターヴ・モロー美術館
https://musee-moreau.fr/




このサイトは優秀で、モロー美術館にある作品を網羅してあり、
(ペイントゥールというところから入れる)全作品ではないにせよ、自由にお持ち帰りが出来る。


(もちろん著作権フリーの作品は、誰でも使える筈だが、日本の博物館や美術館は、持ち出し出来ない所もあるのだ。)





Exhibition Preview | ART TOP | HOME

inserted by FC2 system