京の雛めぐり
雛まつりとお人形
京都府所蔵の人形と衣裳
06/5/31
またまただいぶ前の展覧会のことになってしまってあいすみません…。雛祭りの時分に開催されていた、お雛様の展覧会についてです。
最近、自宅でお雛様を出さなくなった。その代わりに、博物館でやたらに雛人形の展示会が目立つようになった。そして、その展示会で見て、お雛様を自宅で飾った代わりにしてしまう。
現代人の不粋な習性になってしまった。でも、子供(少女)の頃には、雛壇で飾ってもらったものだ。やっぱり雛祭りとお雛様は少女や子供のもの。大人のお呼びじゃないものね。
雛まつりとお人形
京都国立博物館 2006年2月18日〜4月2日
といいわけしながら、まず国立博物館の雛飾りへ行って来た。これは、博物館の常設展示のうちの特集陳列というかたち。
ここですごかったのは、「御殿飾り」というもの。
関東では江戸時代から段飾りが流行り、定着したが、関西、特に京都では雛人形サイズの御殿をあしらった「御殿飾り」が主流だったという。
文字どおり、御殿を模した建物の中にお雛様を飾り、奥殿の横には使用人(?)の三人官女などが膳の支度をしている。御殿の庭には鶏を追う童子がいて、五人囃子がお囃子をかなでている。
そして建物に独立して、京都でいう「おくどさん」が別に付属する。
御殿の様子をそのままリアルにあらわした、豪華絢爛なお飾りの形式である。ひなかざり、というより御殿の情景をそのまま人形で表現した、という方が相応しい。ちょっとした人形つきドールハウスと言ってもよい。
関東での一般的な「段飾り」(の一番豪華なバージョン・明治時代)も飾られていて、東京と関西の違いをごらんください、と書かれていたが、御殿飾りの圧倒的なリアルさ、豪華さの前には「段飾り」はどうしても味気なく見える。
段飾りというのは、東京の合理主義が生んだ味気なさだと思った。御殿をしつらえるスペースがないので段にしてしまう。
段にしてしまうと、お雛様の本来の侍従たちの位置や意味がまったく分からないが、御殿飾りを見て始めて、ああこういうことだったのかと納得した。
段飾りはただ単に持っているものを順番に飾っただけ。でも御殿飾りはちゃんと意味があって、御殿の様子を写したものなのだ。
もちろん、現在では京都でも関西でもこの御殿飾りはまったく見られず、すたれてしまった。
(ものすごく大きなスペースが要るし、お金もかかるからすたれて当然だろう)
ほかに展示されていたのは各種、各時代の雛人形のほか、嵯峨人形、御所人形、賀茂人形などの小さな京人形。
雛人形では有職雛の立ち雛(画像の左下)が豪華で美しい。
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京都府所蔵の人形と衣裳
京都文化博物館 2006年2月8日〜4月2日
次に行って来たのは、文化博物館でのお雛様の展示。
ここもお雛様だけでなく、御所人形、賀茂人形、嵯峨人形などの、手のひらに入るような小さい人形、そして子供たちが、行事やお祭りなどの特別な日に身にまとう衣裳・装束を同時に展示。
また、「三折人形」や「抱き人形」、「衣裳人形」などの、遊びで用いた人形も合わせて展示、総合して江戸時代から明治に至る、子供の生態を描く、子供の目線に合わせた展示となっていた。それほど大規模な展示ではなく、同時に別の特別展示が行なわれている中、博物館の片隅でちょこっとだけ、という感じの展示だったが、大変興味深いものだった。
雛人形は立ち雛から元禄雛、享保雛、次郎座衛門雛、有職雛、古今雛、そして御殿飾り、と、ひととおりの雛人形の歴史を俯瞰できる展示。
中でもやはり御殿飾りの豪華さが目を引く。また、有職雛も興味津々。ちゃんと、お公家さんの座り方をしていて、装束も正確。女性の方も、百人一首などで見るとおりの衣裳で、まるで葵祭から抜け出たようだ。
雛人形のルーツがもろ分かりという感じだった。そして、雛飾りに使うお道具が別個に展示されているが、これもすごい。大変精巧なミニチュアで、豪華なおままごとという感じだ。
台所、京都のいわゆる「おくどさん」が面白い。京都の雛飾りに使われたというが、単独で展示してあった。
抱き人形や三つ折れ人形は着せ替えが出来る。文字どおり抱っこして、赤ちゃんごっこが出来るようになっている、昔のぼぼちゃん(?)みたいなもの。
昔も今も、女の子はお人形遊びが好きだったんだなあと感慨深かった。
お人形関係の過去の展覧会