こちらの方が面白いかも
奇想の図譜 2004年(文庫版) 辻惟雄 筑摩書房 08/10/25 |
名著「奇想の系譜」の続編として出版された本書は、しかし、柳の下を狙ったのに全然話題にもならず、売れなかったとあと書きで著者が正直に書いている。
けれども、むしろこの本のほうが面白い部分が多いかもしれない。
取り上げられているのは北斎、舟木本「洛中洛外図」、若冲、白隠、写楽、という個人の作家から、波の図のモチーフの変遷とか、日本の歴史の中でさまざまに用いられて来た「かざり」についての記述まで。
特に後半に集中的に書かれている「かざり」についての考察は、この本のハイライトだと思うが、非常に示唆に飛んでおり、日本美術について考える時、これまで顧みられなかった部分にスポットライトを当てていて、あらたな考え方を提示している。
これから日本美術を見る時に新しい見方が出来るのではないかと思う。
本は3部構成で、1が「自在なる趣向」という題で北斎が海外の本から着想を得ているという話、舟木本「洛中洛外図」の世界など。
2が「アマチュアリズムの創造力」という題で、若冲、白隠、写楽という個人の画家の考察。
3が「かざりの奇想」という題で、かざり(装飾)という観点から縄文土器、光琳、陣羽織や小袖・胴着といった着物、さらには風流、歌舞伎、祭にいたる日本の美を語ったもの。
とくに3での、武将の陣羽織や、とんでもない兜のデザインなどが面白く、日本美術の面白さに、新たな目を見開かされる。