Book Maniacs

平凡社新書

秘密結社の世界史

2007年

海野弘

平凡社

07/6/15

海野弘の著書を久しぶりに買った。80年代ころ(?)に、いろいろ著書を買って、割りと好きだった。
ヨーロッパの世紀末など、ヨーロッパ社会を克明に描くのが得意という印象がある。

秘密結社ものは、最近また人気が出ているようだ。例の「ダ・ヴィンチ・コード」ブームで再び火が付いたのだろう。海野弘にとっても得意の分野だろう。

 

秘密結社本の決定版というべきものには、ずいぶん昔になるが、澁澤龍彦の「秘密結社の手帖」があり、日本ではこれを凌駕するものはないと言われて来た(ほんとか)。

澁澤の著書は非常にペダンティックで実用的なものではない。にも関わらず、70年代の学生運動が盛んな時にはバイブル的な存在だったという。

まあその澁澤の格調高いヨーロッパ文化の考察のようなものは、この海野弘のものには一切ない。
ただ、古今東西存在した秘密結社を時代別に紹介しただけの本だ。

逆にどの時代にどういう秘密結社が存在したかを手っ取り早く知るには、恰好の本といえる。
ほぼ、もれなく網羅されていると思う。記述もきわめて分かりやすい。

 

私が最も興味深かったのは、バリバリ現代の、何とブッシュ大統領父子が入団しているというスカル・アンド・ボーンズだ。

ブッシュが秘密結社に入っているという事実が衝撃的だったが、よく知られていることらしい。

薔薇十字団と呼ばれるものは沢山あり、時代もさまざまということも、初めて知った。

イルミナティと呼ばれる結社が、実際にはあっという間になくなったきわめてマイナーな集団だったにも関わらず、伝説だけが肥大化していった経過も初めて知ったことで、このような興味深いことが沢山書かれている。

けれども物足りないのは、結社を紹介しているだけで、それの是非や、その内容をまったく書いていないことだ。

もちろんそれは意図的なことで、結社の儀式の内容だとか、胡散くさくなりそうなことには触れていないのだ。

そして、著者は現代のネット社会において、秘密結社はますます隆盛を極めていると言っているが、ネット的秘密結社については、彼は、きちんと把握し対象化出来ていないように見受けられる。

現代の情報社会では、秘密はすべて開示され、秘密はなくなってしまっている、という前提そのものが間違っている、と思うのだが。

TOP | HOME

  inserted by FC2 system