光文社新書
京都 格別な寺 宮元健次 2005年 光文社 06/1/29 |
宮元健次氏の本を読むのは2冊目だが、この「京都 格別な寺」はかなり示唆される部分の多い、驚きに満ちた本だったと言えるだろう。
本の帯だけを見たら、京都に数あるお寺をまったり案内した、年寄り向きののんびりした本だと思うかもしれないが(私がそうだった)、著者はかなり研究しており、寺が、平安時代の陰陽道や、まじないによって建てられていることや、秀吉の意図による寺院の建立、徳川の策略などが分かりやすく解説されていて、なるほどそうかと目が洗われるような新鮮な発見がある。
特におすすめなのが後半に出て来る、徳川幕府の策略という章。
というのも、私がまさに住んでいるところが、その徳川幕府の策略に沿った、ど真ん中であるからでもある。
東本願寺と西本願寺が形成された理由。
それをものの見事に解明しているのだ。
私はそのど真ん中に住んでいるから、かえって何も分からず、目が曇っていたのに違いない。
普通、西本願寺と東本願寺とはセットで考える。
今の私たちにはそういう考えがあまりにも浸透しているというか、私はまるで疑っていなかった。
だって、普通、本願寺といえば東西本願寺と考える。無理もないだろう。しかしそれこそが、徳川が意図したことだったのだ。
西本願寺から、方広寺(豊国神社)に至る、一直線上に、どのような細工が施されたのか。
それは、この本を読んでびっくりしてみてください。
そのほか夢窓疎石や小堀遠州の庭についての解釈なども示唆にとんでいる。この本の兄弟分のような「京都名庭を歩く」とセットで読むのが望ましいと思うが、いまだそちらの方は買っていない。早急に買うべきだろう。