Book Maniacs

青春新書

迷宮の美術史
名画贋作

岡部昌幸(監修)

2006年

青春出版社

06/4/28

青春新書は、わりとよく買っているのだが、ここに取り上げるのは意外にもこれがはじめてだ。
ラインナップになかなか私の好みのものが多く、いつも注目している新書であるので、これからも買い続けるだろう。

さて私は、絵画も好きだが所謂贋作というやつも大好きだ。

ぱちもんは絵画だけでなく、私の趣味のメインである人形世界でもぱちもんと聞くと目の色が変わるというぱちもん好き。
これはもう、私の本能と言ってもいいだろう。

そして、ぱちもん、贋作と来ればそれをとことん追求したいのが私の性で、だからこういう本が出ると、買わずにはおれなくなる。

実は、この青春新書に紹介されている贋作事件のいくつかは既に知っているし、過去に贋作についてを語った本も何冊も買っている。
この本は、歴史上で名高い贋作事件をダイジェストで紹介した、初心者向け(!)の手引き本なのだが、それでも、有名事件のあらましを改めて知ることが出来るので、なかなか便利だ。一家に一冊あれば言うことないだろう。

私のいっとう好きな贋作事件は、日本の「春峯庵事件」というもので、好きと言うのも変だが、これは、贋作を手がけた画家がわずか16歳の少年だった、という意外性が絶品だと思うが如何。

 

贋作をする人の理由はいくつもあるだろう。

贋作で最も問題な場合は、名の通った美術館が贋作をつかまされた時である。
美術館の名誉にかけて、それを贋作だと表明することが出来ない。隠してしまう。
美術館だけでなく、個人でもそのようなケースはあることだろう。
それをいいことに、ブローカーがにせものを掴ませようと虎視眈々としている。

いつも思うが、この本を読んでも印象に残るのは、贋作を、真作とのお墨付きを押した鑑定家なり、美術評論家が、実はそれがにせものであった時の開き直り方というか、じたばたぶりというか、往生際の悪さである。

自分が太鼓判を押した作品がにせものだと言われても、鑑定を絶対に撤回しない評論家。
こういう人を思いきり嘲笑いたいというのが私の欲望で、我ながら実に意地悪というか、こんじょわるである。
でもそれこそが私の無上の楽しみなのだ。

実際に絵を描く贋作者の心理は、彼ら、欲や名誉に目の眩んだ人間を陰でひそかにあざ笑うことにあるのだろうか。

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