Book Maniacs

祥伝社新書

模倣される日本

浜野保樹

祥伝社

2005年

05/8/20

この本は大雑把にいうと2つのパートに分れていて、ひとつは、映画やアニメの世界で、日本が模倣され続けている国であること、そしてもうひとつが、中国、ヨーロッパ、そしてアメリカと、日本が異国の文化を模倣し続けて来た国であることを指摘している部分。

日本の文化が、かつては浮世絵や、歌舞伎、現代ではアニメや映画が欧米から賛美され、評価されているにも関わらず、日本人は自分たちの文化を評価する軸をもたず、自国を否定し、昔は中国に、今は欧米に習おうとして来た。

このことに猛省を促し、自国の文化をもっとたっとび、日本の優れた文化を残してゆかなければ日本は、日本を日本たらしめている要素を失ってしまい、日本を滅ぼしてしまうだろうという、この書は一種の亡国論ではないかと、私は読んだ。

このことを、この書は流行と模倣というキーワードで説いてゆく。

この書は、だから日本はとってもクールな国だ、と褒めちぎっている本ではない。

固有の文化を持ち、それをついこの間まで持っていたのに、多様性を認めず、均一化を促す大国アメリカを良しとして模倣したために、文化をなくしかけている日本という国を、怒りまくっている本なのだ。

うわついた日本文化賛美ではない。もっと、苦く根本的だ。

示唆される記述はたくさんあり、私は久しぶりに本にアンダーラインを引きながら読んだ(アンダーではなくてサイドだが)。

 

流行とは、画一化である。模倣とは、欲望の均一化である。

みなが、同じものを買い、同じ恰好をし、それを貴ぶことが流行である。
それは、多様性と多元性を否定することである。
それが、アメリカ式の大量生産の資本主義の根幹である。

日本は、昔から欧米を模倣することで、文化的な国になると思い込んで来た。
だから、欧米で認められなければ日本のものは格下だという意識がある。
なぜなら日本は欧米に比べて後進国であり、駄目な国であり、何もかもが劣っている。
そう思いこんでいたからだ。
だから一刻も早く欧米(かつては中国)を模倣し、彼等に追いつき、彼等のようにならなければならない。

その結果、日本は欧米をまるごと移植し、「世界のどこにでもあるようなものを造るために、どこにもないものを壊した」という、悲惨な現実がある。

日本は、日本という国が嫌いなのだ。自分の国に自信がない。だから他の国の方がすぐれていると思い込み、他の国を真似し、他の国になろうとして来た。

だが、それらの国は果して本当に日本より優れていたのか。
画一化を良しとし、大量生産によるプラスチック製品しかない文化が果して日本より優れているのか。

文化の多様性を知るのは日本人である。日本人こそ、均一化、画一化を実は免れていた民族ではないのか。

アメリカや、ヨーロッパの画一的なものの考え方が最高だとしていた、これまでの思い込みから脱して、自分たちの培って来た文化が、もっとも人間にとって理想的だったのではないかと、自分たちに相応しかったのだと、これからは、欧米の文化から脱却して、独立するべきではないのか。

そのようなことをあれこれ真面目に論じている。私はこの本を、一人でも多くの人に読まれるべきだなどと思ってしまった。

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