ちくま文庫
超芸術トマソン 赤瀬川原平 筑摩書房 1987年 06/5/31 |
言わずと知れた名作であるが、あまりにも昔に読んだ本はここにアップして来なかった。しかし私のライブラリーに、この本は欠かせるはずもない。
私の町歩きの基礎となり、また思考方法や論理の基礎ともなった本のひとつである。
よって、ここにサイトに載せることを決意した。解説の言葉はあまりない(読み返していないから、内容を詳しく述べられないだけ)。「原爆タイプ」や「四谷階段」「安部定」「高田の馬場トライアングル」など、数々の名命名(意味の分かりにくい造語)を生んだ本でもある。
今でも町を歩いていて、あ、これは明らかに原爆タイプだ、などと思ったりする。「純粋壁」だの、「無用門」だの、私なりに独自にアレンジして町歩きをしている。
トマソンの影響力は大きく、20年(!)経った今も私の生活の隅々にまで浸透しているのである。トマソンは、赤瀬川原平が製作したものではないが、彼が発見したものだ。赤瀬川氏の、カメラのレンズで物を見るような目が発見したのであった。
その目は、氏のもっとも特徴的な独自性で、今も昔もさまざまな面でその実力を発揮している。トマソンは、消え行くものである。
それは、都市の発展の過程で生み出される人々の文化の痕跡であり、なごりであり、あだ花である。
それは、人々の生活が生んだ営みのかけらであり、都市の繁栄や、人の暮らしの豊かさにしたがってその都度更新されてゆく、束の間の生活跡である。それらの痕跡は、今後あとかたもなく消えてしかるべきものだが(この本に掲載されている物件は、すでに例外なく消滅しているだろう)、その方法論だけは、永遠だ。
と思う。