Book Maniacs

文春新書

フィギュアスケートの魔力

梅田香子 今川知子

文芸春秋

2004年

05/2/3

知らない人もいるかもしれないが、私はフィギュアスケート・ファンと名乗っている。そういう人間には打ってつけの本が出た。おりしもスケートシーズンだ。
もし、結論付けるのがまごまごと遅れて、時期を逸することがなければ、今にぴったりの(というか今しかない)タイミングなので取り上げてみる。

共著となっており、片方の人はもとフィギュアスケート選手で、世界の大会でもそこそこのランクになっていたらしい(私は聞いたことのない名前なのだが)。現在は引退し、フィギュアスケート関係の取材をしているようだ。
ただ共著となっているが、どちらがどの見出しを書いているのかは分からない。
片方が片方にインタビューをして記事におこしているのか、それぞれ一章ずつ書き分けているのか、何なのか、何も書いていないのでよく分からない。この構成は少し、よくないように思える。

書いてあることはいろいろあるが、とにかく中心になっているのは、日本女子フィギュアスケート、それもここ2、3年の日本の女子フィギュアの動向だと言ってよい。
その意味では、本のタイトルが適切でないようだ。

私は、フィギュアスケート全体のことが書いてあるのかと思って買ったからだ。
フィギュアには女子だけでなく、男子もあればペア、アイスダンス、いろいろある。だが、それらを期待するとはぐらかされる。記述に非常に偏りがある。

スケートの歴史にも触れられているが、通り一遍のことだけ。日本の男子選手については、本田武史選手のことが何行か書いてあるだけで、しかも、彼の最近の不調(けがなど)についてはまったく触れられていない。ほかの選手のことはさらに書いていない。
日本選手ですらこの程度なので、ほかの国の選手のことは、女子選手を除き、まったく書かれていない。ましてや、ペア、アイスダンスなどについてはまったく出てこない。

要するに、出て来るのは、伊藤みどりから始まり、現在活躍している荒川選手、村主選手、浅田真央選手など。外国選手ではミシェル・クワンなど女子選手ばかり。何人かについては直接インタビューして、その生活や、練習ぶりを取材している。
一日のうちに何時間練習しているか、一年のうちにどれだけ練習しているか、練習方法は、使っているスケートリンクは。
決してよくはない環境で、いかに工夫して練習時間を捻出しているか。ということだと思う。

日本のアイスリンクは年々減っているという。
1年中アイスリンクとして使えるリンクも限られている。夏はプールとか普通の体育館になり、冬だけしかアイスリンクとして使えない。その冬になっても一般の客を入れるから、選手がリンクを借り切って練習することがなかなか出来ない。夜か早朝、学校へ行く前、学校から帰って来てから、そして、一般の客の中でレッスンしなければならないことさえあるという。

そうした劣悪な環境の中でも、華やかなフィギュアスケートの世界に憧れ、夢を追い続ける選手たちがいる、それがフィギュアスケートの魔力だと。

タイトルに偽りありで、構成もどうかと思うが、フィギュアスケートの好きな人には興味深い内容だろう。

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