新潮OH!文庫
全日本顔ハメ紀行 いぢちひろゆき 新潮社 2001年 04/10/20 |
新潮文庫のジュブナイル風バージョンがこのOH!文庫のようだ。
読む人はジュブナイルではないだろうが、それくらいの知能の人向きに作ってある。まさに私が喜びそうな、飛びついて買いそうな本である。事実この本を発見するや、私はそのようにした。発見するのが遅すぎたくらいだ。
顔ハメ。
全国各地の観光地にある、あの顔をくりぬいた、記念撮影用のカンバンを、顔ハメというとは初めて知った。それもそのはず、そう命名したのは、この本の著者だからだ。
けれども何ともぴったりの命名ではないか。その語感に、どことなくアラーキー的淫靡さが感じられるものの、また実際、顔をハメて撮影することをハメ撮りと呼ぶらしいことから、いっそう淫靡さがかもし出されているものの、うまいネーミングだと言えよう。
さて内容は、最初こそ、のっけから高いテンションに引いてしまい、最後までついていけるかどうかと心配したが、そのうち掲載されている作品の質の高さから、それも気にならなくなった。
京都にはどんなトホホな顔ハメがあり、どんなに揶揄されているかと心配だったが、舞妓さんの顔ハメを意外にも褒められていたのでほっと安堵した。
顔が描かれていて、それをはずしてハメるタイプの顔ハメがあるのも発見であった。
義経、芭蕉などが多いのも発見である。旅情をかき立てるようなものに人気があるのであろう。
まんがタイプ、写実タイプ、無意味に大きいタイプなどいろいろあり、またなぜこんなところに穴が開いているのかと意味不明なタイプもあり、興味は尽きない。
5段階の星取表もついていて、秀逸な作品と、トホホなものとの違いを吟味するのもまた一興であろうか。私が気に入ったのは伊達正宗。
顔の穴部分に正宗公の眼帯があしらわれているあたりの芸の細かさが泣けた。発売は、2001年。つい最近買ったのに初版のものが売られていたので、もしかしたら、全然売れなかったのだろうかと心配だ。