Book Maniacs

小学館文庫

西国三十三ヶ所
ガイジン巡礼珍道中

クレイグ・マクラクラン

小学館

2003年

06/5/13

クレイグ・マクラクランという人は、オーストラリアの親日家で、職業はよく分からないが(トレッキング・ガイドと書かれている)、この西国巡礼のほかに日本百名山をよじ登ったり、四国八十八ヶ所を巡礼したりして、既にそれらの本も出している。

私は、それらの著書の中から、京都が載っているという理由で、この西国巡礼のバージョンを買ってみた。

西国三十三ヶ所とは、和歌山県の何とか寺(汗)から岐阜県の何とか寺(汗)まで、合計三十三ヶ所のお寺を、奈良、京都、大阪、兵庫、滋賀、そして岐阜、と巡ってゆく。

 

クレイグは夏休みを利用して、友達のポール(芭蕉と言うあだ名がついている)と徒歩で(!)約一月で巡るという計画を立てた。

しかし始めてみるとポールが歩くうちに足を痛め、途中から自転車に変えた。クレイグも自転車に乗ることにして、自転車での西国巡礼となった。
それでも一月足らずで三十三ヶ所を巡るのだから体力的にハードだ。
しかも豪華ホテルやビジネスホテルに泊まる訳ではない。時には野宿だし、お風呂は銭湯。

けれども、姫路城を間近に見ながら公園で寝る時には、最高のビューポイントだと大喜びしているし、銭湯では背中に刺青のある気のいいヤクザさんと意気投合して写真を撮ったり、彼らの精神の豊かさ、大きさには感服する。

そして、国道を走るごとに車の排気ガスを浴びて車を呪い、さらに国道脇に粗大ゴミが平気で捨てられている現状を見て、どうしてこんなことが出来るのかと怒っているところでは、日本のモラルの低さに恥ずかしくなった。

「自分の家でさえなかったら、どこにでも捨てる。それでゴミがなくなったと思っているのか」と、クレイグは言うが、本当に恥ずかしい。

 

そして、彼らがお寺で朱印をもらっていると、日本人の巡礼にも出会う。

ところがこの日本人巡礼がまた…。観光バスでやって来て、添乗員に朱印を任せっきり、自分たちはお寺を見ると、さっさとバスに乗って何もしないで楽々次の目的地へ向う。

こんなの本当の巡礼じゃないよなとクレイグは言うが、確かに。

だが、こんな場面ばかりではない。会う人に親切にされ、巡礼と聞いて尊敬され、行く先々でさまざまな出会いを体験する。そのベースにはほのぼのした暖かみとユーモアと知性が感じられる。

日本の友人に書いてもらったという「同行二人」とひらがなで自分たちの名前の書かれたバッグパックがとてもおしゃれ。

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