Book Maniacs

単行本

バカ日本地図

一刀

技術評論社

2004年

04/11/14

インターネットのBlogから生まれた本、ということである。

基本の主旨は、「人が県を適当に覚えている実態」である。

秋田と岩手はどっちが東か西か分からない、とか、四国はとりあえず4つ県があるのは知っているが、全部言えないとか、九州にいたってはいくつの県があるのか見当がつかない、とかいう、平均的日本人が47都道府県をいかに適当にしか分かっていないか、を鋭くえぐる企画である。

私の場合、住んでいるのが近畿だから、近畿地方はパーフェクトに分かる。
あと北陸もなぜかよく知っている。京都の次が福井で、次が石川、そして富山、新潟と続く。

しかしその先が分からない。

滋賀県からその先も分からない。
確か岐阜県のような気がするが、滋賀県からいきなり岐阜県、というのはちょっと驚く。何かもうワンクッションあったのではないか。いきなり岐阜県では唐突過ぎる。関ヶ原があるのであろうか。

兵庫県から西があいまいだ。山陽は何となく分かる、ような気がする。岡山とか、広島があるはずだ。山口もどこかにあったであろう。山陰も、島根とか鳥取などがあるのは知っている。だが、それらのどちらが西かが分からない(誰に聞いてもそういう)。

関東がよく分からない。千葉とか、神奈川という名前は聞くことがあるが、どこにあるか、地図上では実ははっきり分かっていない。はっきり言って、東京さえどこにあるのであろうかと思っている。「なんかあそこらへん」という認識しかないのである。

関東が分からないのだから、その先は全然分からない。関東の北には何があるのだろう。もう東北なのだろうか。

このような衝撃的な、或いはごく当然の我々のうすい日本認識を、新たに実感させる試みである。
または、このことを逆手にとって県民性をあざ笑うという、手の込んだ冗談であろうか。

 

しかしこの地図を作成した当の人々は、いったいどこに住んでいるのだろう、という当然の疑問が沸く。

当然のことながら、おそらくは都会。となると日本の二大都会、東京と大阪、80パーセントくらいはこの二つに住んでいる人によるのではないか。
東京や大阪以外は田舎、と切って捨てるようなところに住む人間の思考が主になっていると思う(私が言えたことではないが)。
このあたりに、都会が善であり、田舎は未開発として悪だとする旧態依然の民主主義開発行政の悪影響がのぞく。

さて、京都は日本人民に認識されているだろうか。多少の誤解はあるものの、おおむねどの県民にも認識されているようなのは幸いであった。

意外なのは、奈良県が圧倒的に全国民に認識されていることだった。
我々近畿圏の人間の間では、奈良といえば、そんな県があっただろうか、なかったのではないかと噂されるほどに存在の薄い県である。
それが全国的にはこれほど県の存在が浸透しているというのは、修学旅行のおかげでなのあろう。
つまり、奈良へ修学旅行に行く土地柄の人たちが、多くバカ地図作成に関わっていると見ていい。
おかしなことを言うと思われるであろうが、我々近畿の人間は奈良へは修学旅行に行かないのだ。
このことからも、バカ地図作成に関わったバカ人民の分布を推定できる点が、興味深いことである。

 

inserted by FC2 system