Book Maniacs

単行本

あらすじで読む
日本の古典

小林保治 編著

中経出版

2004年

04/10/20

いっとき突然、あらすじで読むシリーズがブームになった。

ブームになったのか、売れたのか、本屋が勝手にディスプレイしたのか、出版社がプッシュしたのか、それは分からない。ともかく、出版社はここぞと発売しまくり、本屋は平積みしまくり、類似本も出まくった。

私は当初、例によってケッという態度であった。

私はどんなものにでも京都人らしく、流行っているものには一応、ケッという態度を貫くのである。

「あらすじで読む日本の名著」を、最初書店でめくった時には、ケッ、古すぎ〜、と思い、こんなの今時誰も読んだ奴はいないだろうなー、という感想を持った。
しかも、あらすじでさえ、ちらっと読むと難解であり、読む気が失せた。

日本の名著というものは、読んでいそうで読んでいないものだ。私も読んでいない。

子供の時や、思春期には文学というものをかなり読んだが、それでも「日本の名著」は、漱石を除いてほとんど読んでいないのではないか(芥川、太宰、三島あたりは教養として読んでいるものの)。

さらに年を重ねれば今さらこんなの読めるか、という態度になるのは当然だ。

けれども、少しばかり、引け目を感じもする。
日本人なのにこんなスタンダードな名著も読んでいないのか。これでは無教養が丸出しだ。
せめてあらすじでも知っておかないと、何かの拍子に無教養がばれてしまう。

そういう、日本人の刹那なインスタント教養欲求に合わせる形で、この本のシリーズが話題になったのだろうと思う。

最近では、CDつきでクラシックのあらすじ(?)が発売されている。

昔、CBSソニーから、3分間で名曲ダイジェストというのが出ていたが、それを思い出した。
私は、「フックト・オン・クラシック」が大好きであった。
今、「フックト・オン」シリーズが再発売されたらきっとヒットするだろう。

 

それはともかく、あらすじの「日本の名著」はいらないが、あらすじで日本の古典があるなら欲しいな、と思っていたら、ちゃんと発売されていた。それがこの本だ。

「古事記」からはじまって「雨月物語」までカバーする。有名どころはひととおり収録されており、取りこぼしが少ない。「曽根崎心中」から「とりかへばや」まで入っているのはあり難い。
「新古今和歌集」など、ちゃんと仮名序まで要約してある。

古典には無教養なので思うのかもしれないが、古典入門として、すぐれた古典案内になっているのではないか。

あらすじなので、有名なフレーズを逐語訳していないのが難点なのだが、けれども最初の見出しの部分に、出来る限りその著作の名フレーズが書き出してある。

それを読むだに、日本語というのはリズムなのだなあと思われることであることよ。

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