Book Maniacs

小学館文庫

逆説の日本史

井沢元彦

1998年(文庫版初版)
2004年第18刷
(単行本1993年初版)

04/5/22

日本の古代史に突如興味を持ったのは、「三国志と日本人」という本を読んでからで、というよりも、あの本を読んで、私は自分がいかに壮絶なまでに無知であったかを思い知ったからであった。

いやもともと日本史には疎いのだ。

武田信玄と上杉謙信の区別がつかない。
関が原の戦いが誰と誰との戦いで、誰が勝ったのか知らない。
鎌倉幕府と室町幕府の違いが分からない(どちらが先かが分からない)。当然、その幕府が誰が興したかを知らない。
源氏と平家の戦いで、どちらが勝ったのかを知らない。
知っていることといえば、徳川幕府が家康によって作られたくらいか。

これ以上自己の恥をひけらかすことはあまりにも忍びないのでこのくらいにしよう。

 

私は、この自国の歴史に対する自分の無知は、戦後の歴史教育のせいだと、自分の勉学に対する不熱心を棚に上げて、言い切ってしまいたい。

戦後の歴史教育は、間違っている。

しかしこのことに対するイカリはまあ、別の機会に書こう。

 

井沢元彦の、この「逆説の日本史」である。

本屋で麗々しく平積みされていたのは、良く知っていた。ひとりで日本の歴史を書くなんて、すごいなあと思っていたのみだったが。
しかしもし、この本が歴史の教科書として採用されていたらどうだっただろう。

私は一もニもなく日本史の大ファンになっていただろう。

それくらい、面白い。

面白すぎて止まらない。次から次へと読みたくなり、読み出したら止まらない。あまりにも読みすぎて寝不足になった。

そういう本である。

日本史に疎い私が、こうなのだ。もし歴史に詳しい人が読んだらどうなるのだろう。
あまりにも異説と飛躍が多すぎて本を投げ出すのだろうか。

そうだとしても、あまりにもエキサイティングな歴史解釈であることには変わりがないだろう。

著者は推理小説家である。

であるから、この「逆説の日本史」も推理小説である。

卑弥呼殺人事件が起こる。犯人は誰だ!

少ない手がかりの中から、少しずつ論理立てて真相を探ってゆく。伏線も張られている。
それをヒントに読者は推理する。
そしてどんでん返しがあって、意外な犯人が!

卑弥呼だけではない。聖徳太子も殺される。天智天皇も殺された。

次から次に連続殺人事件が起こり、謎が提示され、手がかりをもとに、真犯人を突き止めてゆくのである。
どきどきわくわくしてしまうのも、無理はない。

 

推理小説家というのは、古代史が好きである。また、歴史推理も好きだ。

高木彬光は「成吉思汗の秘密」を書いた。松本清張は邪馬台国と卑弥呼の謎を追った。伝統的に推理作家は歴史を推理するのが好きなのだ。
高木彬光のはトホホなものだが、松本清張のは本格的だ。

古代史がミステリーとして成立するのは、日本のそれがあまりにも謎が多いからだろう。
いくら歴史の専門家が研究しても謎が解けない。だから謎解きの専門家である推理作家が参入したくなるのではないだろうか。

なぜそれほどに、日本の古代は謎が多いのか。それは、政府のせいである。天皇陵とされる古墳の、ほんの一つにでも学術調査が入れば多くの解明されることがあるものを、頑迷に許さない。
これが改善されない限り、推理作家は古代をメシの種にし続けるのだ。

まだまだ書き足りないので、これは総論として、「逆説の日本史」各巻に、勝手に各論することにしよう。そうしよう。

つづく

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