Book Maniacs

フランス・エロティック文学の名作

O嬢の物語

角川書店/角川文庫

ポーリーヌ・レアージュ
澁澤龍彦訳

03/6/27

へんな日記に書いた「O嬢」をちょっと紹介。

作者ポーリーヌ・レアージュは女性名だが、訳者澁澤龍彦によると、文芸評論家ジャン・ポーランの変名ではないかということだ。
(ジャン・ポーランは序文も書いている。)
名前がアナグラムの綴り替えであるらしいことからも、それは伺える。ということは、作者は男性なのだ。

殆どO嬢の視点から展開している物語だが、これは女性のためのファンタジーではなく、きっと男性のための物語なのだろうと思う。

 

男性は、女が次々と男に身を任せていく(或いは一人の女が、無数の男に犯される(汗))、というシチュエーションに最も興奮するのだろうか。
女性はどうなのだろうか。

私は、こういうのを読むと、男性と女性のセクシュアリティの違いを思わずにはいられない。

女は調教されることは、そもそも好きなのだろうか。
それはやはり個人の差だろう。好きな人もいるだろうし、いやな人もいるだろう。

ただ男性ならば、女を意のままにしたい、自分の思うままになる女が欲しい、と、誰でもが望むのではないだろうか。
O嬢は、男性のための夢の女ではないだろうか。

何でもハイハイと男の言うことを聞く。自分の意志というものを放棄し、支配されることを望む。
しかも男がどんなにO嬢に好き勝手をしようとも、彼女はその男を愛しているのだ(んなアホな)。こんなに都合の良い女はいないだろう。究極の都合の良い女だ。
もう飽きた、お前は死ねと言えば、はいと言って死ぬのだ。とても普通の女には出来ない。

しかし一面で、支配されるということはとても楽なことなのだ。究極の受身であって、何も考えなくてもいい。従っていればそれでいい。

一方で女性は、支配されることを望んでいる、かもしれない。
真に強く、自分を支配するにふさわしい男であれば、いつでも支配される用意はある、のかもしれない。

私がステファン卿にいらつくのは、彼が単に女を支配するのには相応しくない男だ、と思うからなのだろう。

ほら、これがブラックジャックなら支配されてもいいと思うだろう。あなた。

ブラックジャックが、他の男に抱かれている所を見たい、とは言わないだろう。でも言うとしよう。
ほら、言うとおりにしたくなって来る…のではないか?…

関係ないけどブラックジャックの愛は調教プレイだ、と言う人がいた。だから、あんなにもてるのだ。と思う。

結局、ポルノには、女性の理想の男というのは多分出て来ないのだろう。
いやな男にヤラれるからこそ、ポルノと言えるのかもしれない。とっても不毛だ。
出て来るのは、男性にとっての最高の女である。そして、最高の女は、現実には決していない。
男の言うことを大人しく聞く女など、この世にいるはずもない。身もフタもない世の中だ。

 

因みに、ステファン卿は、O嬢に「承諾を得て」、O嬢のお尻に焼き鏝(ごて)を押し、性器に穴をあけ(!)そこにネームプレートかなんかをぶら下げさせる。

私は、どう読んでもどこに穴が開けられて、どんな輪っかが嵌められたのか、読解力がないためどうしても理解出来なかった。

それにしてもお尻にいきなり焼き鏝(ふたりのイニシャル入り)なんていうのは、あまりエロティックではないのではないか。というよりちょっと笑える。唐突にそんなもの出されても…。少なくともエロな気分には到底なれないのだが。
日本には刺青という方法があるが、この方がはるかにすぐれた手段だ。日本の方がエロティシズムにおいては上を行っているのだ。


一番上の画像の文庫本は角川文庫から出たもの。
表紙に澁澤の愛した、カルロ・クリヴェリの「マグダラのマリア」の絵があしらわれている。
今はこの表紙のものは絶版で、澁澤訳は河出文庫から出ている(と思う)。

下品ですみません(^_^;)。

[Book Top | HOME]

  inserted by FC2 system