Book Maniacs

そういえば集英社文庫

どこかで誰かが見ていてくれる

(文庫版)2003年 福本清三 小田豊二(聞き書き)

04/3/6

君はボブを見たか。そうだ。あのボブだ。

東映で切られ役ひとすじ。代表作なし。セリフなし。
それでいて、今年、日本アカデミー賞で特別賞を受賞したという。

それもこれも、この本があったからだったのではないか。
私も実は、これの単行本が発売された時にかのボブの存在を知ったのだった。
(テレビでも特集があったので、そのせいもあるかもしれない。)

単行本「どこかで誰かが見ていてくれる」は何となく気になっていた。欲しいなあ、買おう買おうと思いながらずるずるしているうちに、文庫本になった。これ幸いと、買ったのがこの文庫版である。

この文庫版の価値は、単行本の印税を福本氏本人が拒否したという事実が書いてあることと、次回作(ラストサムライの撮影を取材)がまもなく本になるという、インフォメーションにあるだろう。良かった!私はまたボブに会えるのだ。

東映の時代劇もろくに見ていないくせに、テレビで「水戸黄門」も、「遠山の金さん」も見ていないくせに、よく言う。我ながらそう思うが、それほどにこの本は価値がある。私のような時代劇音痴にとってもだ。

日本映画の全盛時代から、時代劇衰退の時代から、映画斜陽の時代からテレビに移行した時代から、テレビのお手軽時代劇に悩まされる今の時代にまで、今の今までずっと大部屋俳優として過ごし続けて来た、一人の俳優の貴重なドキュメントなのである。当然といえば当然だ。

本編(映画)による時代劇は、衰退して行った。
しかし大部屋俳優・福本清三は、にも関わらず大部屋俳優として契約しており、それを職業としているため、大部屋俳優としてさまざまな映画に出演した。

東映は、ある時期時代劇からヤクザ映画へとスイッチし、ある時期にっかつに倣ってポルノを導入し、千葉真一の台頭によって忍者・カンフー映画を取り入れた。
大部屋俳優・福本清三は、当然大部屋俳優として、それらの映画にそれぞれ、エキストラとして出演したという。

ポルノ映画にも、出たという。女性とのカラミで、おっぱいをいじったりした。
あの「仁義なき戦い」にも出演していたという(その時の、深作監督のエピソードは感動的だ)。
千葉真一の映画に、カンフーを練習して出演した。美空ひばりの公演にも出演した。
そして、テレビの時代劇に出るようになった。

 

テレビ時代劇に出るようになって、思うことがあるという。

彼が東映での仕事をやり始めたばかりの頃のこと、工藤栄一という監督に使われた時のエピソードだ。

福本清三が、工藤監督のもとで駕籠かきというエキストラ役をもらった。
工藤監督は、その駕籠かき役に(演技をつけるため)もっと速く走れと必死に怒鳴り、最後には絶叫して怒ったという。
その仕事はとてもつらいものだった。
だいぶのちになって、工藤監督に会い、そのことを話したら悪かったと言って謝られたという。

福本清三は、たかが駕籠かきに無茶苦茶を言うような監督さんともう一度仕事がしたいという。
そういう監督がいたら、命がけで駕籠かきをやるという。
でも今はもういない。駕籠かきなんか、適当にやっていればいい。そんな風潮になっている。

 

福本清三は、謙虚の人である。顔立ちとは裏腹に、遠慮のかたまりであり、奢ることを知らない。自分の分を知る人である。しかしそんな己れをむろんのこと、誇りに思っているだろう。サムライだ。

ラストサムライへ

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もしかしたら福本先生のフィギュアが発売されるかもしれない♪

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