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Leonaldo da Vinci

Mona Lisa

モナリザ 1503-1506?

 

題名がモナリザ、ラ・ジョコンダなどいろいろ言われているところからも謎めいているが、日本で知られている
「モナリザ」という名称を使わせていただきます。

 

私はモナリザをあまり好きではないのだ。

あまり美しい婦人とは思われないし、決して美人ではない。

同じレオナルドでいえば「白貂」(チェチリア・ガルレラーニ像)の方がはるかに分かりやすい美人だと思う。

婦人の像としては、決して理想の女性像とは思えない。

 

私は「モナリザ」はレオナルドの失敗作と考えている。

 

レオナルドが死ぬまで手元に置き、何年も描きつづけ、手を加えつづけたという。

そのため、当初は、普通の婦人の肖像画だったものが、何年もにわたって手を加えすぎたために、
もとの肖像画というコンセプトを超えてしまい、もはや特定の婦人の肖像ではなくなり、
レオナルドの脳内にある想像上の人物像が表現されてしまった。

そのように考える。

微笑と言われる口元のわずかに上がった口角も、手を加えているうちに曖昧になってしまい、
謎めいたものになってしまったのではないか。

後世の研究者たちが微笑んでいるのかいないのかの論争になったのも、レオナルドがあまりにも
描き加えつづけたためではないか。

 

これは肖像画ではないのだ。

架空の、ある婦人の像、もしかしてレオナルドの理想像であったかもしれない。

男性の像だという意見もあるし、レオナルドの自画像だという説すらある。

男性か女性かすら曖昧な肖像なのだ。

レオナルドが自分の中にもっていた、一つの世界観がモナリザという女性の中に凝縮されたのだというふうに思う。

 

17世紀、レンブラントの時代にはオランダでトローニーという概念の肖像が現れる。

架空の肖像、と説明されている。

人物を描いておきながら、それは実際のモデルがいたわけではなく、誰か特定の人物を描いたわけではない。

ただ、画家がそれらしい人物を創造して、それを肖像画のようにして、市民の居間を飾るために作られたものらしい。

 

レオナルドのモナリザも、あるいはそのように、モデルはもともといたかもしれないが、
自分の手の中でひねくり回しているうち、もとの婦人の肖像を超えてしまった。

架空の肖像を先取りしていたのではないかとも思う。

実物の婦人を超越してしまった、想像上の人物。

男でも女でもない、レオナルドの胸の中にだけあった人物。

レオナルドは肖像画というジャンルをも超え、実在の人物を描いておきながら、
そこにイエスや、マリアや、聖アンナを描く時と同じような、自分の中の理想像を追求した、そんな風に思うのだ。



以下は「モナリザ」のコピー作品、および影響が見える作品です。

 



フランス、シャンティイー コンデ美術館
「裸体のモナリザ」 16世紀



モナリザのためのレオナルドの習作と考えられていたらしいが、
現在では別の画家の作品とされている。

レオナルドはまず裸体でデッサンをしていたのではないかという
推測があったのだろう。

あり得ない話ではないと思うけれど、
貴族の婦人をモデルにしたならば、あまり考えられない。

レオナルド伝説を作った作品なのかもしれない。




サライ「ドンナ・ヌーダ(裸体のモナリザ)」
エルミタージュ美術館



レオナルドの弟子、サライによる作品と言われている。

コンテで描かれた裸体のモナリザに着色したものと見える。

弟子サライの作とされているが、確かではない…。

いずれにしても上の裸体のコンテに基づいた作品で
背景もそっくりに、バルコニーはより分かりやすく描かれている。





モナリザのコピー 16世紀
バルチモア、ワルター美術館所蔵


初期のモナリザのコピーには、背後はバルコニー、
両側に柱が描かれていた。

レオナルドのオリジナルにももとは柱が描かれていたのでは
ないかと想像されている。

オリジナルにもバルコニーは描かれ、
柱の脇だけがわずかに見えていて、
柱が描かれていた形跡がある。



この作品は初期のコピーとしては完成度が高いとされている。


16世紀に、すでにモナリザが有名で、こうして沢山の模倣作が
登場したことがうかがわれる。

画家たちにかなりの衝撃を与えたのではないだろうか。



モナリザのコピー フランス、エピナル美術館所蔵


モナリザが衝撃的だったのは、あまりにも完璧であったために、
それがまるで描かれたものとも思われず、
太古から自然の中に存在していたかのようにそこに存在していた、
からではなかっただろうか。

その謎を解きたくてコピー作品が大量に描かれつづけた…

そんな風に考えてしまう。

初期のコピー作品だけで60ほどあるらしい。

両手の組み方、手の描写だけでも規範としたくなっただろう。



私が衝撃的だったのは、人物の後ろがいきなり風景という所。

オリジナルをよく見れば、後ろにはバルコニーがあり、モナリザは
椅子に座っているが、多分本物を間近に見ても、暗くてそこまでは
見えないのではないだろうか。

まるで風景の中にいきなり人物がいるようで、
しかもその風景に聳え立つようにモナリザがいて、
それがあまりにもシュールな気がしたのだ。



   


アイルワースのモナリザ Isleworth Mona Lisa


一時期、これが本当のモナリザだと所有者が主張して
話題になった「アイルワースのモナリザ」。

ヴァザーリほかの記述により、モナリザが二つあるとの説に基づいて、
このような主張が出て来たのだろう。

今ではしっかりとコピー作品に分類されている…


レオナルドのモナリザよりも若く、健康的な婦人に描かれている。

やはり背景はバルコニー、両端に柱が見えている。


コピー作品では、このようにはっきりとバルコニーと柱が
分かるように描かれ、オリジナルを補っているようだ。






プラド美術館所蔵 モナリザのコピー 16世紀


昔、背景は黒一色だったが、最近(2012年ころ)修復され、
背景がよみがえったという。

世界で一番美しいモナリザのコピーと言われている。


衣服の表現などが微細で素晴らしく、色合いも美しい。


コピー作品は、レオナルドのオリジナルの衝撃を和らげるような形で
描かれていると思う。

みなオリジナルよりソフトに、分かりやすく、
より美しくという方向で描かれる。


少しでもモナリザを美人に描こうと努力したのではないかと
思っている。


以下、ラファエロの作品━



ラファエロ 婦人の肖像


ラファエロのスケッチ

直接モナリザを見て描いたとされる

レオナルドの大きな影響を受けたラファエロは、
レオナルドの他の作品などもコピーしていた。

レオナルドを熱心に研究し、絵画作の手本にしていたようだ。


これにも背景の柱が描き込まれている。







ラファエロ「ユニコーンと婦人」 1506年ころ
ローマ ボルゲーゼ美術館



これもモナリザに影響を受けて描かれている油彩作品。

バルコニーの両端に柱が見え、ここからもモナリザには
柱が描かれていたと言われる。

モナリザ本作は、何らかの形で左右が切り取られたのではないかと
推測されている。


レオナルドに多大な影響を受けたラファエロらしい作品で、
なおかつラファエロ独自の作品に仕上げているように思う。



 



ラファエロ「マッダレーナ・ドニの肖像」1505年
フィレンツェ ピッティ美術館



髪形や、手の組み方など、よりはっきりと影響がうかがえる。

しかしラファエロ作品としても有名。

ラファエロは肖像画家としても活躍した。


風景の中に人物がいても、それほど違和感がなく、
(モナリザほど衝撃的な風景ではないので)
もはや自然に受け止められる。

 

19世紀の作品━


カミーユ・コロー 「真珠の女」1868ころ ルーブル美術館


19世紀の風景画で知られるコローだが、肖像画家としても
すぐれていた。

この作品も手の組み方や、モデルのポーズにモナリザの影響が
はっきりとうかがえるが、コロー独自の見事な肖像になっている。

モデルの女性の美しさを存分に引き出した、筆のタッチも美しく、
印象的な女性像。


影響を受けながらも、すぐれた画家はすぐれた絵を描くことが出来た
という証明なのだろう。


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コピーや、後世の画家のインスパイア作品を見ていると、
レオナルドのモナリザがどれだけ衝撃的で、卓越していたかを
発見できるように思うのだ。

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参考 アサヒグラフ臨時増刊「モナリザの微笑」 1974年

 

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