[My Favorite Artists : ART TOP : HOME]

 

Diego Velazquez3

ヴィーナスと女性像


鏡を見るヴィーナス

ベラスケス唯一の女性の裸体像だそうだ。

無防備な裸体を弓なりにくねらせて鏡を一心に見ている、でもそれは遠慮がちな後ろ姿。

古今の有名なルネサンスのヌード絵画を学び、吸収したことがよく分かるが、
それを後ろ姿で表現し、見ている者にそのほかの部分を想像をさせるという、卓越した発想。

それでも寝室のベッドでしどけなく寝そべっているヴィーナスの白い肌のエロティシズムは
後ろ姿だからこそ際立っていて、なまめかしく、
ルネサンス絵画にも劣らない女性美を表現しているのではないだろうか。

 

ベラスケスとは、こんな絵も描けたのか…。朴念仁のような気がしていたけれど。

ただ、鏡を掲げてヴィーナスに見せているキューピッドが、ただのスペインの子供にしか見えないし、
そしてヴィーナスも、女神というよりは市井の女性の肢体を描いたという感じ。

鏡にうっすら写るヴィーナスの顔は、もろ、スペイン人の平凡な女性の顔…。

こんな所にベラスケスのスペイン気質が現れているような気がする。






裁縫する婦人(お針子)

未完の作であるらしく、またベラスケスの真作か、
評価が分かれているらしい。

けれども、この素朴なお針子の、裁縫に集中する様子は、
王侯の肖像を理想化して描いていたベラスケスとは
また違う、どの人物に対しても等価な目で対していた画家の
誠実な人柄をしのばせる。

またこの絵は、どことなくのちのフェルメールの
「レースを編む女」を連想させる。

女性が一心に、一点を見つめて作業をする。
そのほかに何も気を取られず、作業に没頭している。

身につけている衣服も質素。
わずかに見える髪飾りだけがスペイン風で、
それと偲ばせる。

当時の女性の家庭仕事の姿が鮮やかに切り取られている
と思う。

     



巫女(ファーナ・パチェーコ)

ベラスケスの唯一の女性を真横から描いた肖像だそうだ。

ルネサンス時代には、さんざん女性を真横から描いた
肖像画が流行し、多くの傑作も誕生した。

イタリアへ学び、ルネサンスを研究しただろうベラスケスも
女性の横顔に挑みたいと思ったのかもしれない。

巫女は、キリスト教世界で、男性で言えば預言者という
役割だったという。

伝統的な図像では予言をするためか、
本を手に持ったり、机に置いたりしていることが多い。


この女性は物憂げな表情が印象的で、
意味ありげな板を持ち、
それが預言の本を表しているのかもしれないが、
そのような図像をあまり考慮しなくても、
しっかりした横顔のフォルム、少ない色使いが印象的で、
見た時、女性の表情に静かな余韻を残す。


人物を見つめる目が卓越し、誠実であったベラスケス
らしい、心に残る女性像だ。
 



シビル


上の巫女と同じタイトルで、又板を持ったポーズや、
テーマが似ているようなので、このスケッチも同じ
巫女のテーマを扱った習作なのかもしれない。

ベラスケスの妻がモデルだという説もある。

荒いスケッチでも、描写力はやはり抜きんでている。

モデルの決して自然ではないポーズも自然に見えるし、
彼女の身につけている衣服の描写も、ラフな筆遣いなのに
的確だ。

そしてさらりと描かれた女性の横顔の、さりげない美しさ。

少ない絵の具で、あまり時間もかけずに描かれたのだろう。

それでもじゅうぶんに存在感のある女性像に仕上がっている。
 
 

扇を持つ婦人像

スペインらしい扇を持ち、ベールをかぶり、
スペイン風の小物を持ち、いかにもスパニッシュな風味が
満載な女性像。

裕福な貴族の夫人でもあるのだろうか、
自信に満ちていて、肖像の名手・ベラスケスに
自分の肖像を依頼したものだろうか。

手に持った扇のリアリティ、手袋、手に掲げたロザリオ、
みな小物が生き生きしている。

ベラスケスの筆は婦人の性格まで読み取っている
かのような正確な筆致で、モデルの人格まで
表現し尽くしているようだ。

そして、なおかつ、モデルに対する敬意と、誠実さは
失われていない。

ベラスケスの肖像画のクオリティは驚くばかりだ。


少女の頭部


多分、スケッチか素描に近い習作なのだろう。

それにしてもこの的確な筆運び、
荒い筆遣いなのに、女性の個性や性格までが
ひとめで伝わって来るような、舌を巻くような描写力。

絵の具の塗り方がすご゛くラフなのに、
それでもこれだけの的確な陰影をつけて、
目や眉や、口元などもいともさりげないのに、うまい。

うまいのに嫌味がない。


画家は、スケッチや習作に一番その人の技術が出る、
と思っているが、
ベラスケスの技量の確かさがよく納得できる小品だ。
 

目の見えない女性


これも荒いスケッチのようだ。

宮廷を楽しませる芸人の小人や道化を、
透徹した目で人の優劣に関係なく、
人間の尊厳とともに描いたベラスケスが、
同じように目の見えぬ女性を等しい人間として、
的確で冷静な描写力で、さりげなく描いている。

深く静かな感動を与える、
そして人間への限りない愛おしさを
見ている者に感じさせる、そんな名品ではないだろうか。
 

ネーナ


あまりにも可愛いので、取り上げてみた。

さっと描かれたスケッチのようだが、とても現代的で、
バロックの時代に描かれたとはとうてい思えないような
少女のみずみずしさに溢れている。

こちらを向いたきりっとした目、結ばれた遠慮がちな唇、
意志の強そうな表情。

スペイン人特有の黒い髪、このヘアスタイルは
当時の結い方なのだろうか、

肖像画家ベラスケスの技量がここでも余すところなく
発揮されていると思う。
 


ハンガリーのマリア王女


最後にベラスケスの描いた、王侯の女性の肖像。

マリア王女は、ベラスケスの仕えたフェリペ4世の妹で、
ハンガリーの王に嫁いだ。

その輿入れの時の作品ではないかと言われている。

王侯貴族の肖像は美化して、という鉄則があるが、
ベラスケスは、それでもその筆で、
美化しながらも、王族の人々の本質を鋭く描くことも出来た。

これは小品であるらしいけれど、気品に満ち、気高さを
失わないながら、人間的な女性の魅力を引き出している
ように思う。

衣服の描き方なども、既にのちの王侯の肖像画に
見られるような、念入りな表現で(未完とも言われているが)
、巻き毛の美しい王女を引き立てている。
 


ベラスケス1 ラス・メニナスへ 2へ

 

[My Favorite Artists : ART TOP : HOME]

inserted by FC2 system