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Gustav Moreau 2

オイディプス・スフィンクス・テーマの絵

 

   
アングル「オイディプスとスフィンクス」1808年                モロー同題 1864年 Oedipe Et Le Sphinx

 

モローの「オイディプスとスフィンクス」は、アングルの同題の絵をもとにしているとよく言われている。

確かにアングルの恐ろしい形相のスフィンクスとその形態にかなりの影響があることは一目瞭然で、
岩の下にスフィンクスの犠牲者の足がわずかに見えている所まで、よく似ている。

だが、アングルの絵ではオイディプスが相手に強さを誇示しているのに対し、
モローは、この怪物がオイディプスとすでに同等の存在となり、それどころかオイディプスの胸に足を引っかけ、
すがりつき、まるでオイディプスを威嚇しているようでさえある。

その異形の胴体にはアクセサリーが巻きつけられ、乳房をオイディプスに押しつけ、
女の力を見せつけている。

女は男と対決し、視線を交わしてやがて男を破滅に追いやる。

男はその激しい視線に、負けまいとこらえているかのようだ。

(本当は、スフィンクスは敗れるのに)

モローのスフィンクスは、すでにそのようなファム・ファタル、宿命の女として描かれている。

 

 

      

二枚とも水彩「オイディプスとスフィンクス」

左は習作1861年

右は1882年 サロン出品作に基づいて水彩で描いたもの    

20年もの間、変わらず憑かれたテーマだったのだろうか

右側のオイディプスが色っぽくなっている いつものモローの男に近づいている

 


勝利するスフィンクス

まだオイディプスが到着する前なのだろう。

崖の上にスフィンクスが美しい羽根を大きく広げて、自分が殺した犠牲者たちの上に君臨している。

男は敗れ、女が勝利する。

女が男を支配し、男に君臨する。

スフィンクスは世紀末の倒錯の女性崇拝のシンボルかのようだ。

 


旅人オイディプス(或いは死の前の平等) 1888年ころ

 

疲れ切った旅人のオイディプスが、スフィンクスのもとにやって来る。

スフィンクスは白い大きな羽根を誇らしげに大きく広げ、乳房をむき出しにして、
自分の犠牲者たちを足蹴にし、次の犠牲者らしき者を睨みつけて、挑もうとしている。

まさに、男に君臨する女のイメージ。

自分が殺した男たちを顧みることなく新しい男に目を付けた…まるでオイディプスが敗者であるかのようだ。

凍りつくようなこわい女…、異形の身体がよりいっそうこの倒錯の性の支配者を強調しているようだ。

 


スフィンクスの落下 1878年

 

そして、スフィンクスは堕ちてゆく。

男を滅ぼした罪を受けて、醜く顔を歪めて、落下してゆく。

どれだけの罪を犯して、こんなにも残酷に堕ちてゆくのだろうか。

あの男を誘惑して堕落させ、破滅させて行った女の最後の姿が、これだった。
まるで小野小町の無残な最期のようだ

 

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以下は「オイディプスとスフィンクス」の下絵とデッサンです。

 



オイディプスの頭部


オイディプスのヘアスタイルもいろいろ変遷があり、
このような古代風のものに落ち着いたようだ。






水彩の習作


始めはこのように、オイディプスとスフィンクスの位置が反対だった。

オイディプスがくねくねして完全にいやがっている。

スフィンクスがちょっといやらしい感じで誘惑しているみたいな。

オイディプス、なよってるよモロー先生、いつもの男になっているよ


上の図のデッサン


同じポーズで、スフィンクスが誘惑しているのが分かる。

オイディプスは旅人として帽子(?)と杖を身にをつけている。

スフィンクスがちょっかいを出してる感じ

同じ構図でのデッサン


よりはっきりとしたデッサン

オイディプスの身が引けていて、怖気づいている。
なよなよ…

これは駄目よモロー先生


スフィンクスは邪悪な感じで笑いかけている。

このスフィンクスはこわい…

ちょっとまとまりの良くない構図かなあ


ラフなデッサン


少しポーズを変えて、

スフィンクスの犠牲になった者たちが加えられている。

左端の突っ立っている男性がオイディプスだろうが、
棒状になってスフィンクスに怯え、固まっている感じ。


始めはスフィンクスの邪悪さと、怖気づくオイディプスという
形で構想していたようだ。


上のデッサンを水彩にしたもの


サインが入っているので、いちおうこの構図で考えていたようだ。

スフィンクスの犠牲者を挟んでオイディプスとスフィンクス、
一応構図としては無理がなくなった。


オイディプスのデッサン


オイディプスが座っている構図も考えていた。

右側にスフィンクスを配置する構図。

男性のポーズのデッサン、モローのテクニックを味わおう。


逆向きにすわるオイディプスのデッサン


いろいろ構図を考えていたようだ。



オイディプスとスフィンクスのデッサン


スフィンクスを配置するとこのような形で構図を考えていたようだ。

やはり邪悪なスフィンクス。顔がこわい

スフィンクスがかなり悪い感じで考えていたようだ。

アングルの邪悪なスフィンクスと同じ構想で考えていたのだろう。


オイディプスは謎の答えを考えているような感じ。

これはこれで安定した構図になっている。


水彩のデッサン


ラフだが、大体油彩作品と同じ構図になった

スフィンクスとの位置を近づけて、求心性を考えたのだろうか

「オイディプスとスフィンクス」というタイトルのついたデッサン


油彩作品と完全に同じもの

かなり具体的に描き込まれていて完成作品と言ってもいい感じ。

男性のポーズをコントラポストにすることがやはり一番
美しいと考えたのでは。


いろいろなバリエーションを考えていたことが分かり、
かなり面白い。


オイディプスはその後原罪を犯し、放浪の身となった。

ただモローはそこまでのオイディプスの運命を想定して
描いてはいないと思う。

ただスフィンクスとの対決、視線の交わりによって
男女の宿命の一瞬を切り取ろうとした。



おまけ

おなじみの構図をまるに囲みデザインにした感じ。
なんか可愛い?

 

 

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*参考 アサヒグラフ別冊 美術特集 西洋編17 モロー 1991年

 

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