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Pieter Bruegel the Elder

ピーテル・ブリューゲル(父)

バベルの塔 

The Tower of Babel 

2017/5


ウィーン美術史美術館 1563ころ 114×155cm

 

ブリューゲルのバベルの塔は二つあり、有名なものはウイーン美術史美術館のもの、

そしてもう一つはロッテルダムのボイマンス美術館のもの。

細かい割にはそんなに大きくないのだ。

それでも細密に描かれたバベルの塔は、その主題よりもブリューゲルの微細な描写をひとえに楽しむもののように思えて来る。

 

もちろん旧約聖書・創世記の記述による、有名なテーマに沿った教訓的な絵ではあろうけれども、
それよりも塔の造形の面白さ、迫力、

バベルの塔とはこのような建物であったかと思わせるリアリティにも満ちている。

螺旋を描いて空にそびえるというこのお椀を逆さにした塔の造形のアイデアが何と言っても見どころだと思う。

 

ただ、中央部分がすでに土砂が崩れ、崩壊している。

その描写によって、バベルの塔が砂上の楼閣であることを象徴しているのだろう。

恐るべき描写と言えるだろう…

 

以下、ディテール

 

同じ北方ルネサンスの画家ボスと同じく、小さな人物を細密に描く手法は、ほんの小さなディテールまでが楽しい

これは塔の前に、塔の進捗状況を王が見分に来たものだろう。

塔の建設に携わる農民?たちが王にひれ伏している。

 



馬を使って塔に荷物を運んでゆく

微細な人物や動物がくっきりと描かれている…



袋を担いで土を運ぶ人たち

滑車のようなもので石を上げる装置

建設のための石材があちこちに散乱

仮小屋

小さい画面の中にこれだけのディテールが…


すでに崩壊が始まっている塔の右上部分

梯子が並び、そこを登る米粒のような人たち

大砲のような印象的な建設機材が目立つ

作業にもかかわらず、崩壊は止められない

 

 

バベルの塔 ロッテルダム ボイマンス美術館 1566ころ 60×74.6


こちらは天に聳える塔の上方に雲がかかる。

そして、塔の左側、色が変わっていて、そこから崩壊が始まっている…

まだ建設中だというのに、もう崩壊の予感がするのである。

人類の生み出した、むなしい人工物。人類の愚かさを象徴しているようなこの建物を、
聖書の記述どおり、さも見事に絵画にした。

 

米粒ほどの人物が描かれているという。

探してもなかなか見つからなかったが、巨大な画像から発見した。

 

すでに崩壊が始まっている塔の部分のふもと

牛や馬なども労働に使い、建設に従事している

米粒のような人たちが灰にまみれている

後ろの堅固な石造りの塔の門が不気味に口を開けている



こちらも崩壊が始まっている左側

灰にまみれた人物たちが、それでも建設に従事している。

はしごや石を積んだ籠などが人物とともに事細かく描かれている

呆れるほどな細密描写


ロッテルダムの方が崩壊の予感がすごいようだ


塔の左上部分

米粒ほどの人物たちが、塔に張り付くように
建設に従事している…


塔の反対側、右側にも米粒のような人物たちが

大砲のような武器も見えている

この塔建築のリアリティ。

こんな建物がどこかに建っていると思えるような造形

ローマのコロッセオが念頭にあったのだろうか。

ブリューゲルはローマを見たこともなかったと思われるが…


右下の海に浮かぶ船

船にも米粒のような人物たちが乗っている

そして港にも人が…

 

他の画家が描いたバベルの塔たち




バベルの塔 1350-75?ころ



中世の時代に描かれたバベルの塔

大体、このような形を想像するのが普通な感じ

高く、天まで届かせようと、人々が労働をしている様子

素朴な建設作業です

塔は直線的で、まさしく塔というデザイン


Lucas van Valckenborch
バベルの塔 1594?

ブリューゲル以降、彼の後追いで無数にブリューゲル風の
バベルの塔が描かれた。
そのひとつ。

円錐形で、完全にブリューゲルに影響を受けている。

やはりそれだけのインパクトがブリューゲルの作品にあったのだろう。


 


モンス・デシデリオ バベルの塔 1630? 152×130

建物が崩壊してゆく瞬間をとらえた終末的な廃墟の描写で有名な
幻想の画家、モンス・デシデリオもバベルの塔を描いた。

さすがにデシデリオ独自の世界観でバベルの塔を幻想的に再現している。

 

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