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Fernand Khnopff 2
フェルナン・クノップフ 1858-1921

 

 


ヴェルハーレンと共に―天使 
Avec Verhaeren. Un ange
  紙に鉛筆 33.1×19.8 1889年 個人蔵

 

スフィンクスと思しき人獣が甲冑姿の兵士?に征服される。

ヴェルハーレンの詩に想を得て、詩人に捧げられたという。

夜空には満天の星、その中に主人公たちの無言のドラマがぼうっと夢のように浮かび上がる

兵士は女のように見まごう いやおそらく女性なのだろう

ほんの小さな作品だが…

 

世紀末の匂いが立ち込めてくるようだ。





眠れるメデューサSleeping Medusa
1896年紙にパステル 72×29個人蔵  

獣性と天使の出会い1
After Joséphin Péladan, The Supreme Vice
The Meeting of Animalism and an Angel

 

スフィンクスとともに、
メデューサのような人獣の怪物に関心があったようだ。

いや、メデューサをこのような人獣の形で夢想していたことが
スフィンクスにも通じるのだろう。


スフィンクス的なテーマで描いていたもうひとつ
非常に珍しい

スフィンクスは乳房を持つが、もはや人間性を留めていない

ペラダンの思想の影響があったころだろう

 


メデューサの血The Blood of Medusa 紙に鉛筆 1898
21.2×13.4 ベルギー王立図書館

 

マルグリットをモデルに正面から描いた
(いくつかのバージョンがある)

怪物というよりも、性別も定かでないあるひとりを描きたかったのではないか

*

 


クノップフは初期にはいっけんごく普通とも見える写実的な絵を描いていた。

   



The Garden 庭 1886年 ベルギーブリュッセル


風景画も描いているが、何気ないようでいて、
クノップフ独特の不思議な世界が表現されている。

静けさというよりも、
もっと沈黙に支配された無言の気配が漂う


Hydrangea 1884
油彩 46.5×57.8 個人蔵

同様に、彼の静物画も沈黙の中に沈んでいる

物言わぬ植木の存在を、遠くからやはり沈黙の中で
女性が見つめる。

 

 

肖像画

クノップフは上流階級の人たちの肖像も描いた。的確な描写力が喜ばれ、求められたのだろう。

そして家族の肖像も描いた━




シューマンを聞きながらListening to Schumann 1883
油彩 101.5×116.5 ベルギー王立美術館


部屋の濃密な描写の中に顔を伏せて椅子に座る老齢の婦人。

クノップフの母であろうか。

音楽を聴きながら何かに苦悩するようにも見える黒服の女性が
物語を感じさせて、単なる写実主義に終わっていないところに
力量を感じる。



ジャンヌ・ケフェルの肖像Portrait of Jeanne Kfer
油彩 1885年 80×80 個人蔵



少女を何気なく描きながらも不思議な孤独感や
凍り付いたような空気感が漂う

何となくクローネンバーグのカナダ時代を思い出す

ドアの前に立たせて遠近感を無にしているようにも思えるからだろうか



マルグリット・クノップフの肖像
Portrait of Marguerite Khnoph
1887年 油彩
96×74.5 個人蔵


はじめ、油彩の写実的な描写で妹を描いた。

ドアの前の、窒息しそうな空間に彼女を立たせた。

マルグリットは、どのような思いで兄の前に立ったのだろう

やはり狭い空間で、モデルを引き立てるために
遠近感を出さないようにしているのかも


Portrait of  Isabelle イザベルの肖像 
1893年 98×49 個人蔵


注文の肖像だろう。

片方の長手袋を脱いだ状態でポーズを取るモデルを、
驚くほどの写実力で描く



Portrait of Mrs Botte ボット夫人の肖像 1896年 油彩
100×91 個人蔵


こちらも裕福そうな夫人の肖像。

穏やかな作風になっているような気がする

柔らかな空気が漂っているようだ

Portrait of Margrite
(Posthumous Portrait of Marguerite Landuyt)
マルグリットの肖像
1896 75.274.5

常に白いドレスで描かれるマルグリット。

やはり壁際に立たせ、その前で
不安げな少女に見えるのは意図したものなのだろうか

このころは肖像画を全身像で描くことを旨としていたのかもしれない



フリンツ・フィリプソンの肖像
1899年 油彩 75×67 個人蔵


尊大にも見える、椅子に座った女性の肖像。

モデルを右に寄せた構図や、背景の壁紙の描写や、
椅子の描写などにふとクリムトを思わせるが…

クノップフ自身は英国のラファエル前派や、モローを
好んだようだ



Portrait of Edmon Khnopf エドモン・クノップフの肖像
c1900 油彩 85.5×48.5 個人蔵


クノップフの母だろう。

上品で、知的な老婦人として描かれ、
モデルに対する敬意が見てとれる。

この知性的で、強い意志を持ったような女性が
クノップフの感性を育てたのだろうか

象徴派として━

 
Magician魔術師 1906 個人蔵  Orpheeオルフェ 1913個人蔵

まるでギュスターヴ・モローを思わせるような絵がある。

魔術師と題された絵の、絵の具の塗りや、描法など、あたかもモローのようで驚かされる。

 

オルフェは、モローが好んで描いた題材だった。

モデルが妹なので女性として描かれているが、シンボリストの先輩としてのモローへのオマージュのようにも思える…

両方とも1900年代に描かれており、すでにクノップフの画風を確立したあとだと思うが…



Temptation of St Antony 聖アントニウスの誘惑 1883 83×83

昔の画家たちが描いていた宗教画の有名な題材を、クノップフも描いていた…
彼の初期の作品である。

モローのような描法で、モローの影響があったのだろう。

聖アントニウスも青年か、まるでキリスト像のように描かれている。

 

********

 

そして……




The Veil ヴェール1887 40×21 シカゴ美術館
チャコール

黒いベールで顔を覆った女性

単色が効果的だ。

悲しみに沈んでいるのだろうか。
静かな孤独感が漂う



Silence 沈黙 85×41.5
1890年 ベルギー王立美術館


比較的有名な作品

唇に指をあて、沈黙を促す女性(マルグリット)。

短髪で、部屋着を着用しているが、寝間着なのだろうか


もはや音のない、何ものにも煩わされない
静寂の世界をクノップフは愛したのだろうか






Who Shall Deliver Me? 1891 22×13
私を救ってくれる人は
パリ 個人蔵

いくつか、同じような構図の作品がある。

こちらを見据えて、赤毛の女性の訴えかけるような瞳が印象的


Study of a Woman女性習作 1890-96ころ ドローイング

上記の作品とほぼ同じポーズをチョークでラフに描いたもの

女性(マルグリット)の見据えた瞳のみを強調する作品



Study of Woman女性習作1890-92 22.5×13
ドローイング紙にパステル、チャコール 個人蔵 


女性、即ちマルグリットを描く時、そこに陶酔が生まれるが、
とくにこの作品には溢れるような陶酔に満ちている

パステルとチャコールの特質を自在に操っていて、うまい



Diffidence(Defiance) 内気 1893 個人蔵 ドローイング 29.0×19.8
ベルギー王立図書館

これもいろいろなバージョンがあり、モノクロームのものもあるので、
データが違うかもしれない


マルグリットを正面からとらえたアップで、
そこに百合の花をあしらう
彼女の表情を出来る限り定着させたかったのかもしれない


Arum Lily アラム百合 1895 彩色写真29.5×19.5
ベルギー王立美術館

クノップフは写真も駆使した。

マルグリットをまず写真に撮り、それに彩色したりして、
いくつものバージョンを作った。


写真という新しい表現方法を探っていたのかもしれない





Stephane Mallarme's Poetry Listening to Flowers 1895
マラルメの詩 あるいは花を聴きながら 
油彩


クノップフの中でも特にロマンチックでセンチメンタルで、
ストレートに美しい女性像で、うっとりせずにはおられない。

縦長の画面の中で、花に埋もれて花の声を聴いている。
うつろで、もの思わし気な女の表情が惹きつけられて止まない。



Incense 香 1898 彩色写真 43.7×27.8
ベルギー王立図書館
(オルセー美術館の油彩作品ももあり)

これも写真に彩色したものでいくつかのヴァリアントがあり、
モノクロームのものもある。

データが正しくないかもしれない 

またこれをアップにしたものもあり、いろいろな細工を試みていたようだ。



Study of Woman 女性習作 c1900 紙に鉛筆・チョーク
28.6×28.6 姫路市立美術館


正方形の中に女性の横顔を描く

例によって鉛筆とチョークで描かれていて、
それらはクノップフの心の赴くまに自由に気軽に描けるアイテムだったのかもしれない
 

袖の部分に獅子の顔(?)が浮き出ている。
何らかの意味があるのだろうか




A Memory of Venice ヴェネツィアの思い出 
紙に鉛筆・パステル
1901ころ 17.5×9.4 姫路市立美術館


とても小さい、何気ない小品だが、モデルはマルグリットだと思うが、ティツィアーノかジョルジョーネの作品を写したものだろうと
思う。

女性美の基本を作り上げたイタリアの巨匠を、
彼も彼の手法によって敬愛を表現したのだろう


 
Mysterieuse 神秘的な女性 色鉛筆 28×17.2
1909 

色鉛筆で、デザインされた画面にシンボリックに目を瞑る女性を描く。

それとも眠りだろうか…いや目を閉ざしているのだろうか。

それだけで場を支配する女王のような風格をもつ彼女の神秘性。

そしてきわめて鋭角的にレイアウトされた画面のデザイン感覚は、
彼もまた、世紀末のグラフィックデザイン感覚を持っていた画家だと
思わせる。



The Silver Tiara 銀のティアラ 1911 油彩 
54×54.5 ニューヨーク近代美術館


まるで王冠のようにティアラを被り、支配者のように、王者のように、
スフィンクスを思わせるような女王ような、そして彼女の閉ざされた目。

それは眠りのようでもある。

目を閉じているからこそ、
眠っているからこそ彼女はすべてを支配することが出来るかのようだ。





Clematisクレマチス 1914 ドローイング パステル
個人蔵


荒いドローイングで、ヴェールを被り、ふと振り向いた女性を描く。

ヴェールの青が印象的。

あまりクノップフでは使われない青も、新鮮。

下の余白もいい。
デザイン感覚が良かったのだろう。




Study of a Woman 女性習作 1910 13.9×8.2
紙に鉛筆 個人蔵


真横の顔を大きく描く。

正面も、横顔も。そしてあらゆる角度から。

象徴派を超えて、妹への愛から肖像を追求した。



The McMullen Museum of art and Boston College


正面からとらえたアップの肖像も、これに似たようなものが多く存在する。

その中でも最も美しいのがこれだろう。

幻想的と呼んでも良いような、おぼろで、現実を超えたかのような
美しさにみとれてしまう、肖像。

クノップフの神髄ではないだろうか。

 

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参考 ベルギー奇想の系譜 図録2017

    The Athenaeum Blog of an Art Admirer

 

 

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