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Antonio Del Pollaiolo

ポライウォーロ c1432-1498

(Brother of Piero Del Pollaiolo  c1441-1496

若い婦人の肖像


Portrait of a Woman 若い婦人の肖像 c1470 ポルディ・ベッツォーリ美術館 ミラノ        

 

ポライウォーロという画家は兄弟で、アントニオとピエロという二人の画家がいるそうだが、
どちらがどちらの絵を描いたのか、良く分からない。

ただ、ポライウォーロと聞いて、誰もが思い浮かべるもっとも有名な作品がこの横顔の婦人の肖像だろう。

最近ではこの作品はピエロに属すると考えられているらしい。

二人とも レオナルドよりもほんの少し早い時期にイタリア、フィレンツェで活躍したようだ。

 

当時はこのような婦人の真横から描いた横顔を描くのが流行したようだが、

それらのあまたの作品の中でも、 もっとも品が感じられ、凛とした美しさに満ちていて、

当時流行したヘアスタイルや、 装飾品などもリアルに描かれていて、

まさに女性の横顔を描いた肖像画の中でも最上級の名作と言えるのではないだろうか。

この婦人の気品あふれる横顔は、時代を超えて今も私たちを魅了してやまない。

モデルになった女性の内面や人間性までも想像させてくれるような、ルネサンスの生んだ名作の一つだと思う。



Portrait of a Young Lady 若い婦人の肖像 c1465-70
52.5×36.5 ベルリン絵画館

 

もうひとつ、おなじ「若い婦人の肖像」という、華やかな女性像も有名だ。こちらはアントニオに帰属しているようだ。

 

こちらも気品のある凛とした輪郭線、少し若い女性の華やかさ、流行のヘアスタイルをして、
そして着用している衣服の描写が美しい。

女性の首から背中にかけての、衣服を含めた女性の後ろのカーヴ線が何とも言えず優雅で、
横顔から降りる前の側のカーヴも見事だ。

衣装の派手やかさが、女性の単色の、白い、端正な横顔にとても映えて、まことに見とれるほど美しい。 

 

ルネサンス時代には、もう宗教画や神話の絵のみにとどまらず、注文に応じて、
このような一般の裕福な貴婦人や、主人を描くことが一般化していたようだ。

ルネサンス絵画が、これほど今に至るまで長く愛されて来たのは、このような「美の一般化」
にもよるのではないだろうか。

 





Tobias and The Angelトビアスと天使 c1465-70?
Sabauda Galleryイタリア
撮影者Manuelarosi


アントニオとピエロ、両者のどちらの作品か明確ではないようだ。
または共作なのかもしれない。

両者は共同で描いたりもしているようだ。



図像は旧約外典の「トビト書」のエピソードからとられたもの。

ルネサンス期以降に、この外典による図像が大流行した。

トビアスを導いてゆく天使は大天使ラファエルとされている。

トビアスは父の眼病を治すためと、父の借金の取り立てのために
旅に出たところを、大天使ラファエルが救って導いてゆく、
そのようなエピソードにちなんでいる。

魚を持っているのが特徴で、このトビアスは当時のフィレンツェの
裕福な子息の衣服を身につけているようだ。
当時の風俗も分かって興味深い。

そして天使の腕につかまって、ラファエルを頼りにしているような
さまが何ともかわいらしい。




The Saints Vincent, James and Eustace
聖ウィンケンティウス、聖ヤコブと聖エウスタキウス

172×179cm 1466-67 ウフィツィ美術館


アントニオの作品とされているようだ。

キリスト教の聖人たち3人を並列して描いたもの。

聖人とは、大ていが殉教した者が選ばれ、そのエピソードや死に方も
かなり悲惨だが、それらの聖人は、中世の代からそれぞれ何らかの
守護役を意味づけられるようになった。

ウィンケンティウスは航海者、または瓦職人の守護聖人、
エウスタキウスは狩人の守護聖人、ヤコブだけはキリストの弟子として
聖人に連なっている。

大画面の図で、フィレンツェという市民社会の中で、
守護する聖人の絵も必要とされたのだろう。






David with Goliath's Headダビデ c1472 ベルリン絵画館


アントニオの作品。


有名な旧約聖書・サムエル記のユダヤの英雄、
ダビデが巨人ゴリアテの首を切り落としたエピソード。

ダビデはフィレンツェの守護神のような存在だったので、
フィレンツェ派の画家が描くのは自然なことだっただろう。


ここでは、少年というより立派な青年が、退治した巨人ゴリアテの首を
足の下に跨いで、誇らし気に己の手柄を誇示している。

青年の理想像としてのダビデの図像だと思う。


ポライウォーロは解剖学的な筋肉の知識もあり、
よく絵画の中に生かしたようで、
このダビデの堂々とした青年の身体にもそれが現れているようだ。



ポライウォーロ子弟は画家でもあり、
兄アントニオは彫刻家でもあったという。



The Martyrdom of Saint Sebastian聖セバスティアヌスの殉教
 
1475頃 292×203cm ナショナル・ギャラリー ロンドン


アントニオの作品とされているが、共作かもしれない。


大きな木のパネルに描かれたもので、やはり聖セバスティアヌスが
守護聖人として人気を集めていたからだろう。

ペストの保護者ともされていたようだ。

セバスティアヌスは、木に縛られて矢を射られているが、
単独での立ち姿の図が多いが、
このような複数の処刑人による矢での処刑の図は珍しいのかもしれない。

矢を準備している手前の処刑人たちや、
裸体にされたセバスティアヌスの肉体表現からも、
解剖学的に正確な人物表現がされている。


数人がセバスティアヌス一人に矢を射かけているので、
少し残酷さも感じる。




Apollo and Daphneアポロンとダフネ 1480?
29.5×20cm ナショナル・ギャラリー ロンドン

「アポロンとダフネ」もまたポライウォーロの代表作として上げられている。

ピエロのものとも考えられている。

もちろん、ギリシャ神話に題材を取った、
有名な逸話を絵画化したものだが、
ルネサンス期らしい人間賛歌のような感じになっていて、
ダフネの悲壮感はあまり漂っていない。

今まさに木と化してしまおうとするダフネの両腕が広げられていて、
すでに枝になっているところ。

ダフネは自分のこれからおこる悲劇を嘆いているよりも、
まるで捕まらないわ!と言っているみたい。 

 





Hercules and the Hydra ヘラクレスとヒュドラ c1475
ウフィツィ美術館


アントニオ・デル・ ポライウォーロの名前の絵。

あまり大きくない絵のようだ。


有名なギリシャ神話の逸話の一つで、
ヘラクレスがヒュドラを退治した、その場面を描いた、
ヘラクレスの逞しい人体の表現が印象的な勇壮な作品。

巨大なはずのヒュドラが小さく描かれてしまっていて、
これはヘラクレスの身体を強調した、
この時代特有の男性の裸体の人体表現だろう。


逞しい肉体を強調しているところなどに、ルネサンス期の
人物賛歌がよく現れているようだ。





Hercules and Antaeus ヘラクレスとアンタイオス
 
1478 ウフィツィ美術館

 

これもアントニオの小品。 

英雄ヘラクレスの戦いを描いているが、
ふたりの裸体の男性が格闘している 図で、
これもまた男性の裸体を強調した表現で、 荒々しい作品になっている。



これもまた、
ルネサンス絵画が人体の表現を開放した証しのような作品だ。

女性像の端正で美しい表現とはまったく異なるものなので、
少し不思議な気がするが、
クワトロチェント時代の画家は、さまざまな技法を習得していたのだろう。


様々な画題を描き、 また様々なものを描く技術も 持っていたのだろう。





Portrait of a Young Woman若い婦人の肖像
 c1475 ウフィツィ美術館


有名な上記作品と同じような真横から描いた婦人の肖像画。

肖像画家としての腕も評判となり、
このような注文にも応じたものと思われる。


フィレンツェの流行の凝った髪形、入念な刺繍の衣装、
髪飾りやアクセサリーの豪華さに、裕福な家柄の婦人だった
ことが偲ばれる。




Portrait of a Young Woman若い婦人の肖像
 c1480?メトロポリタン美術館


これらの真横からの肖像画は、背景が一切描かれていないのも
特徴的だ。

メダリヨンのように横顔を浮かび上がらせる効果があるのだろう。


この婦人も凝った髪形に美しい髪飾り、高価そうなネックレス、
そして真っ赤の天鵞絨らしい衣服の繊細な模様などを
克明に描いていて見応えがある。


同時に当時のフィレンツェの市民社会の繁栄ぶりも彷彿させるようだ。

 

参照 西洋絵画の主題物語 聖書篇 1996年

  西洋絵画の281人 美術出版社 1995年

 

 

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